Coinbaseが上院暗号法案のステーブルコイン利回り案に反対、合意の行方は

米暗号資産取引所大手のCoinbaseが、米上院で審議中の暗号資産市場構造法案に含まれるステーブルコイン利回りに関する最新の妥協案に反対している。

複数の情報筋によれば、Coinbaseの代表者は上院議員との会合で、この案に懸念を表明した。ステーブルコイン利回りを巡る銀行業界との対立は、法案の前進を阻む主要な障壁となっている。

この対立が解決されなければ、2026年中の法案成立は困難になる可能性がある。中間選挙を控え、政治的な駆け引きも激しさを増している。

Coinbaseが反対する「利回り禁止」妥協案

Coinbaseが反対する「利回り禁止」妥協案

政治ニュースサイトのPunchbowl Newsが3月26日に報じたところによると、Coinbaseの代表者は3月24日(月曜日)に上院議員らと会合を持ち、法案の新たな妥協案に含まれるステーブルコイン利回りに関する文言に懸念を表明した。

この妥協案は、取引所などの第三者によるステーブルコイン保有者への利回り支払いを禁止する内容だったとされる。その目的は、銀行システムからの預金流出リスクに対する銀行業界の懸念に応えることにあった。

ステーブルコインとは、米ドルなどの法定通貨に価値を連動させることを目指した暗号資産だ。USDTやUSDCが代表例で、価格の変動が少ないため、取引の決済や資産の避難先として利用される。

銀行業界の「預金流出」懸念が背景

銀行業界団体は、取引所がステーブルコイン保有者に利回りを支払う行為は、GENIUS法の抜け穴だと主張している。GENIUS法は、ステーブルコインの発行者自体が保有者に利回りを支払うことを禁止する法律だ。

銀行側の論点はこうだ。預金者が銀行口座から資金を引き出し、取引所でステーブルコインを購入して利回りを得るようになれば、銀行システムから資金が流出する。これは金融システムの安定性を損なうリスクがある、というものだ。

Coinbaseのビジネスモデルへの影響

一方、ステーブルコイン利回りは暗号取引所にとって主要な収益源の一つだ。ユーザーが取引所にステーブルコインを預け入れると、取引所はその資金を国債などの安全資産で運用し、得られた収益の一部を利回りとしてユーザーに還元する。

このサービスは、伝統的な銀行の預金金利に匹敵する、あるいは上回る利回りを提供できるため、暗号資産業界にとって重要な顧客獲得・維持の手段となっている。Coinbaseがこの妥協案に強く反対する背景には、自社のビジネスモデルへの直接的な打撃を懸念する現実的な理由がある。

「CLARITY法」成立を巡る政治状況

「CLARITY法」成立を巡る政治状況

この暗号市場構造法案は、下院では「CLARITY法」として2025年7月に可決されている。上院では主に共和党のトム・ティリス議員と民主党のアンジェラ・オルソブルックス議員が主導して、銀行業界と暗号業界の双方が納得できる妥協点を模索してきた。

Coinbaseの支持撤回が与えた影響

Coinbaseは米国で最大規模の暗号ロビー活動を行っている企業の一つだ。同社が2026年1月にこの法案への支持を撤回した直後、上院銀行委員会は法案を前進させるための審議「マークアップ」を無期限延期した。

この動きは、Coinbaseの政治的影響力の大きさを示すものだ。暗号業界を代表する巨大企業の支持が失われることは、法案成立に必要な両党派の合意形成を著しく困難にする。

中間選挙を控えたタイムリミット

共和党は中間選挙前にこの法案を成立させようと圧力をかけている。選挙後に議会の勢力図が変われば、ここまでの議論の勢いが失われる可能性が高いためだ。

共和党のシンシア・ラミス議員は3月26日、X(旧Twitter)に「2030年まで次の機会を待つことはできない」と投稿し、両党派による妥協の必要性を訴えた。

ラミス議員は「ステーブルコインリワード(利回り)を保護し、地域社会銀行からの預金流出を防ぐために、昼夜を問わず作業している」と付け加えた。

ホワイトハウスも関与する業界間対立

ホワイトハウスも関与する業界間対立

ステーブルコイン利回りを巡る暗号業界と銀行業界の対立は深く、ホワイトハウスも仲介に乗り出している。バイデン政権は少なくとも3回、両業界の代表者を招いた会合を主催し、妥協点を見出すよう働きかけてきた。

暗号業界の反論:競争阻害だ

暗号ロビー団体は、銀行業界が主張する預金流出のリスクは誇張されていると反論する。さらに、銀行側が競争を制限しようとする「反競争的行為」だと非難している。

暗号業界の関係者からは、伝統的な金融機関が新しい金融技術によってその地位が脅かされるのを恐れ、規制を盾に参入障壁を高めようとしている、という見方がある。

政権側の楽観論と現場の難しさ

大統領デジタル資産顧問委員会の事務局長を務めるパトリック・ウィット氏は3月26日、Xで「今週はソーシャルメディアで多くの無知に基づくFUD(恐怖・不確実性・疑念)が流れている」と述べた。

ウィット氏は「すべてうまくいく。強気だ」と楽観的な見解を示した。しかし、法案を主導するオルソブルックス議員自身が、妥協案は「暗号業界も銀行業界も双方が不満に思うかもしれない」内容になると発言しており、合意形成の難しさをうかがわせる。

市場と投資家への影響は限定的か

市場と投資家への影響は限定的か

この政治的駆け引きが暗号資産市場の価格に直接的な影響を与えている様子は、現時点では見られない。ビットコインは70,000ドル台、イーサリアムは2,100ドル付近で比較的安定した推移を続けている。

市場がこのニュースを大きく消化していない理由の一つは、法案成立そのものが不確実な状況であるためだ。また、仮にこの妥協案が通ったとしても、それが直ちに既存のステーブルコイン利回りサービスを禁止するものではない可能性がある。

法律の施行には時間がかかり、業界側にも対応する猶予が与えられるケースが一般的だ。ただし、長期的には暗号取引所の収益構造に変化を迫る可能性は否定できない。

この記事のポイント

  • Coinbaseが上院の暗号法案におけるステーブルコイン利回り禁止の妥協案に反対している。
  • 銀行業界は預金流出を懸念し、暗号業界は反競争的だと反論する構図だ。
  • Coinbaseの支持撤回は法案審議を停滞させるほどの政治的影響力を持つ。
  • 中間選挙を控え、2026年中の法案成立は不透明な情勢が続いている。
  • 現時点では市場価格への直接的な影響は限定的だ。

出典

  • Cointelegraph “Coinbase opposes stablecoin compromise in Senate crypto bill: Report” (2026年3月26日)
  • Punchbowl News “Coinbase pushes back on stablecoin compromise” (2026年3月26日)
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