Strategy社がビットコイン4,871枚を追加購入、含み損144億ドル超でも強気の蓄積を継続

世界で最も多くのビットコインを保有する上場企業として知られるStrategy社が、再び大規模な買い増しに動いた。同社は直近の1週間で、約3億2,900万ドルを投じてビットコインをポートフォリオに加えている。

今回の購入は、ビットコイン価格が一時的に同社の平均取得単価を下回る中で行われた。市場のボラティリティ(価格変動)が激しさを増す中、マイケル・セイラー会長率いる同社は、揺るぎない「ビットコイン標準」の戦略を貫いている。

本記事では、最新の購入詳細から、第1四半期決算で明らかになった144億ドルを超える巨額の含み損、そして今後予定されている420億ドル規模の資金調達計画まで、Strategy社の最新動向を詳しく読み解いていく。

Strategy社がビットコイン約4,900枚を追加購入

Strategy社がビットコイン約4,900枚を追加購入

米証券取引委員会(SEC)に提出された書類によると、Strategy社は2026年3月末から4月頭にかけて、4,871 BTCを新たに取得した。購入総額は約3億2,900万ドルにのぼる。同社は3月最終週には購入を見送っていたが、4月に入り再び攻勢に転じた格好だ。

今回の買い増しにおける平均購入価格は、1 BTCあたり約67,700ドルだった。これは同社がこれまで保有してきたビットコイン全体の平均取得単価である75,600ドル付近を大きく下回っている。つまり、現在の市場価格が自社の平均コストより低いタイミングを狙って、「ナンピン買い(平均取得単価を下げるための買い増し)」を実行したことになる。

この最新の取得により、Strategy社のビットコイン総保有数は766,970 BTCに達した。これまでの累積投資額は約580億ドルという、上場企業としては類を見ない規模にまで膨れ上がっている。同社にとってビットコインは単なる投資対象ではなく、企業のバランスシート(貸借対照表)を支える中核資産そのものとなっているのだ。

平均取得単価を下回る戦略的な買い増し

Strategy社が今回、平均取得単価よりも低い67,700ドル台で購入したことは、財務戦略として非常に合理的だ。ビットコインのような価格変動の激しい資産を長期保有する場合、価格が下がった局面で買い増しを続けることで、全体の平均コストを抑えることができる。

2026年2月初旬、ビットコイン価格が同社の平均取得単価を割り込んだ。これは2023年末以来、初めての出来事だったという。しかし、同社は価格下落を「リスク」ではなく「好機」と捉え、2月2日以降だけで約54,000 BTCを積み増している。市場が弱気になればなるほど、同社の集積スピードが加速している点は見逃せない。

第1四半期の財務状況、巨額の含み損と税務上の処理

第1四半期の財務状況、巨額の含み損と税務上の処理

購入報告と同時に発表された2026年第1四半期の財務結果は、ビットコインを大量保有する企業が直面する会計上の課題を浮き彫りにした。同社はデジタル資産に関して、約144億ドルの未実現損失(含み損)を計上している。これは、ビットコインの市場価格が取得時のコストを下回っているために発生する、帳簿上の評価損だ。

巨額の含み損は一見すると経営の危機のように思えるが、これはあくまで「未実現」の数字だ。実際にビットコインを売却して損失を確定させたわけではない。むしろ、この会計上の損失を利用して将来の税負担を軽減する「繰延税金資産」の処理を行っている。

144億ドルに達した未実現損失の実態

Strategy社が計上した144億ドルという含み損は、日本の大手企業の純利益をも上回る衝撃的な数字だ。しかし、同社の経営陣はこの数字に動じている様子はない。ビットコインの価格が長期的には上昇するという強い信念に基づき、短期的な帳簿上の赤字を受け入れているからだ。

現在の会計基準では、暗号資産の価格が下がった場合には減損処理を行い、損失を計上しなければならない。一方で、価格が回復しても売却するまでは利益として計上しにくいという、保有企業にとって不利な側面がある。この144億ドルという数字は、現在のビットコイン市場がいかに厳しい局面にあるかを象徴しているといえる。

繰延税金資産と評価性引当金の仕組み

少し専門的な話になるが、同社は今回の決算で17.3億ドルの「繰延税金資産」を計上した。これは、将来利益が出たときに、現在の含み損をぶつけることで税金を安くできる権利のようなものだ。身近な例で言えば、過去の赤字を将来の黒字と相殺して節税できる「貯金」のような仕組みである。

ただし、同社はこの17.3億ドルに対して、同額の「評価性引当金」を設定して相殺している。これは「将来、この節税メリットを十分に使い切れるほどの利益が出ないかもしれない」という保守的な判断に基づき、資産としての価値を帳簿上ゼロにしていることを意味する。さらに、今後の価格変動に備えて0.5億ドルの追加引当金も予定しており、財務の健全性を維持するための慎重な姿勢が見て取れる。

止まらない蓄積、2026年Q1の購入実績を振り返る

止まらない蓄積、2026年Q1の購入実績を振り返る

Strategy社にとって、2026年の第1四半期は過去最大級の蓄積期間となった。この3ヶ月間だけで、同社は計89,316 BTCを取得している。これに投じられた資金は総額で約63億ドルに達する。市場全体が停滞感を強める中で、これほどの規模で買い向かえる資本力と決断力は、他の追随を許さない。

特に3月の動きは際立っていた。Cointelegraphの報道によれば、3月単体での取得数は41,362 BTCにのぼり、週単位でも過去最高クラスの購入を何度も記録している。ビットコインが一時的に値を下げる局面で、同社が強力な「下支え」として機能していた可能性も高い。

3月に見せた過去最大級の攻勢

3月のビットコイン市場は、マクロ経済の不透明感や規制動向により、投資家心理が冷え込んでいた時期だ。しかしStrategy社は、この時期に約63億ドルもの資金を市場に投入した。これは、同社が「安値で拾う」という戦略を徹底している証拠だ。

同社は3月30日から31日にかけても、自社株の販売を通じて約2億9,900万ドルの現金を確保し、それをすぐさまビットコインの購入資金に充てている。手元の現金を最小限に抑え、余剰資金をすべてビットコインという「硬い資産(Hard Asset)」に変換するスピード感こそが、Strategy社の真骨頂である。

420億ドル規模の新たな資金調達計画

420億ドル規模の新たな資金調達計画

Strategy社のビットコイン集めは、まだ序盤に過ぎないのかもしれない。同社は今回、さらなる買い増しを可能にするための巨大な資金調達計画を発表した。具体的には、「Stretch(STRC)」株と「Common A(MSTR)」株のそれぞれで、210億ドルずつの新たな売り出し枠を設定している。

これら合計420億ドルの資金調達は、「ATM(At-The-Market)」プログラムと呼ばれる手法で行われる。これは、あらかじめ決められた枠の中で、市場価格を見ながら機動的に新株を発行して資金を集める仕組みだ。一度に大量の新株を発行して株価を暴落させることなく、効率的にビットコイン購入資金を確保するための戦略的なツールといえる。

STRCとMSTR株による大規模なATMプログラム

ATMプログラムは、いわば「打ち出の小槌」のようなものだ。自社の株価が高調な時に少しずつ新株を市場に流し、得た現金でビットコインを買う。ビットコインの保有量が増えれば、暗号資産へのエクスポージャー(投資機会)を求める投資家によって同社の株価も上がりやすくなる。このサイクルを繰り返すことで、同社は実質的に「ビットコインを裏付けとしたレバレッジ企業」へと進化している。

実際に、4月1日から5日にかけても、同社は約1億7,400万ドルの株式を売却して資金を調達した。今回設定された420億ドルという枠は、現在のビットコイン価格で換算すれば、さらに数十万枚のBTCを市場から吸収できる規模だ。Strategy社がビットコインの「ブラックホール」化していると言われる所以である。

独自分析:Strategyの戦略は「ビットコイン銀行」への進化か

独自分析:Strategyの戦略は「ビットコイン銀行」への進化か

Strategy社の一連の動きを単なる「無謀な投資」と片付けるのは早計だ。筆者の分析によれば、同社は自らを「世界初のビットコイン銀行」あるいは「ビットコイン開発会社」へと再定義しようとしている。彼らの目的は、単にビットコインの値上がりを待つことではない。ビットコインという最強の担保資産をベースに、資本市場から低コストで資金を調達し、それを再びビットコインに還元する独自の経済圏を構築することにある。

144億ドルの含み損を抱えながらも買い増しを続けられるのは、同社の収益構造がビットコインの価格だけに依存していないからだ。本業のソフトウェア事業によるキャッシュフローがあり、さらに今回のATMプログラムのように、資本市場から直接資金を吸い上げる仕組みを完成させている。これにより、ビットコインが一時的に下落しても、企業の存続を危うくすることなく「買い」を継続できるのだ。

ビットコインを巡る上場企業のパラダイムシフト

これまで、多くの企業は「現金」を最も安全な資産として保有してきた。しかし、インフレによって現金の価値が目減りする中で、Strategy社はビットコインを「究極の貯蓄手段」として選択した。この戦略は当初、異端視されていたが、現在では多くの機関投資家が同社株を通じてビットコインに間接投資を行っている。

含み損が拡大する局面こそ、真の「ダイヤモンドハンド(握力が強く、決して売らない投資家)」かどうかが試される。Strategy社が示すこの姿勢は、ビットコインが「デジタル・ゴールド」としての地位を確立していく過程で、将来的に他の多くの企業が模倣するモデルケースになる可能性がある。420億ドルの調達枠を使い切った時、同社が保有するビットコインは100万枚の大台に乗ることも現実味を帯びてくるだろう。

この記事のポイント

  • Strategy社が直近1週間で4,871 BTCを約3億2,900万ドルで追加購入した。
  • 第1四半期の決算では144億ドルを超える巨額の含み損を計上したが、税務処理などで対応している。
  • 2026年Q1の累計購入数は約8.9万BTCに達し、集積のスピードが過去最高レベルに加速している。
  • 新たに合計420億ドル規模の自社株売り出し枠(ATMプログラム)を設定し、さらなる買い増しに備えている。
  • 同社は価格下落を好機と捉え、平均取得単価を下げる戦略的な蓄積を継続する姿勢を鮮明にしている。
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