イーサリアムが史上最高の四半期を記録、3年ぶりの回復を達成

イーサリアムのネットワーク活動が史上最高水準に達した。2026年第1四半期の基盤層取引数が初めて2億件を突破し、3年にわたるU字型回復を完了させた。

しかし、ネットワークの活況とは裏腹に、イーサリアムのネイティブトークンETHの価格は2025年8月の高値から50%以上下落したままだ。この「ファンダメンタルズと価格の乖離」が市場の注目を集めている。

取引数増加の主な要因はレイヤー2とステーブルコインの決済だ。これらは基盤層の取引数を押し上げるが、昨年実施されたDencunアップグレードの影響で、取引数の増加がそのまま手数料収入やトークンバーン、保有者価値の向上にはつながりにくい構造になっている。

史上最高の取引数とU字型回復

史上最高の取引数とU字型回復

ブロックチェーン分析プラットフォームArtemisのデータによると、イーサリアムの基盤層は2026年第1四半期に2億400万件の取引を処理した。これは四半期ベースで初めて2億件の大台を突破した記録となる。

イーサリアムの取引数は2023年に約9,000万件まで落ち込んだ後、長い回復局面に入った。2024年は大半の期間、1億件から1億2,000万件の間で横ばいが続いていた。回復の転機は2025年半ばに訪れ、四半期ごとに取引数が増加。2025年第4四半期の1億4,500万件から、2026年第1四半期には43%も急増し、明確なU字型回復を描いた。

ここで言う「取引」とは、ETHの送金だけでなく、スマートコントラクトとのやり取りや、トークンの転送など、ブロックチェーン上に記録されるあらゆるアクションを指す。イーサリアムは銀行や弁護士などの仲介者を必要とせずに契約を自動執行する分散型システムだ。

価格とファンダメンタルズの大きな乖離

価格とファンダメンタルズの大きな乖離

ネットワーク活動が史上最高を更新しているにもかかわらず、ETHの価格は大きく低迷している。2025年8月に付けた5,000ドル近くの高値から比較すると、50%以上下落した水準だ。4月17日時点の価格は2,300ドル付近で推移している。

この乖離は、ファンダメンタルズの成長を重視するトレーダーにとって機会と映る可能性がある。一般的に、価格変動はネットワーク活動の回復に先行するか、少なくとも並行して動くことが多い。しかし今回は、活動が回復を完了した後も価格が大きく動いていない。

取引数増加の主役、レイヤー2とステーブルコイン

取引数増加の主役、レイヤー2とステーブルコイン

レイヤー2がもたらす取引数増加のメカニズム

取引数急増の大部分はレイヤー2が生み出している。レイヤー2とは、イーサリアムの上に構築された別のネットワークで、取引を安価に処理した後、それらをまとめて基盤層に最終決済する仕組みだ。自転車に取り付ける追加の荷台のように、基盤層単体では処理しきれない量の取引を運ぶ役割を果たす。

現在、BaseとArbitrumが二大レイヤー2ネットワークだ。ユーザーはこれらのネットワーク上で低手数料で取引を行う。その活動は、決済やブリッジング(異なるチェーン間の資産移動)として、イーサリアムの基盤層の取引数にカウントされる。つまり、エンドユーザーが直接基盤層に触れることなく、基盤層の取引数が増える構造になっている。

ステーブルコイン供給量も史上最高に

もう一つの牽引役がステーブルコインだ。ステーブルコインとは、米ドルなどの法定通貨に価値を裏付けられたトークンのことだ。Token Terminalのデータによると、イーサリアム上のステーブルコイン総供給量は1,800億ドルの史上最高値を記録した。これは世界のステーブルコイン市場の約60%を占める規模だ。

ステーブルコインの転送や取引も、多くの場合レイヤー2を経由するため、同様のメカニズムで基盤層の取引数を押し上げている。

Dencunアップグレードがもたらした新たな課題

Dencunアップグレードがもたらした新たな課題

取引数が増えているのに価格が動かない背景には、2024年3月に実施された「Dencun」アップグレードの影響がある。このアップグレードは、レイヤー2が基盤層にデータを書き込むコストを大幅に削減した。

これはユーザーにとってはレイヤー2の手数料がさらに安くなる良いニュースだった。しかし、イーサリアムの基盤層にとっては、取引数が増えても1件あたりの収入が減ることを意味する。アナリストが指摘するリスクは、レイヤー2の活動が基盤層の手数料圧力をマスクしてしまう点だ。

より多くの活動が、そのままトークンバーン(手数料の一部を焼却する仕組み)の増加や、保有者価値の向上に直結しなくなった。この構造変化が、取引数とETH価格の連動性を弱めている一因と考えられる。

今後の見通しと重要な観測ポイント

今後の見通しと重要な観測ポイント

今回の記録的な取引数が転換点となるか、それとも一時的なサイクルの頂点に過ぎないか。その判断は今後数四半期の動向にかかっている。

まず注目すべきは、2億件という水準が2026年第2四半期に維持されるかどうかだ。継続的な成長が確認されれば、本格的な上昇サイクルの入り口である可能性が高まる。

次に、成長の質が問われる。取引数の増加が、本物の新規ユーザーのオンボーディングによるものか、それともボット活動によるものかを見極める必要がある。特にステーブルコインのオンチェーン取引量では、ボット活動の占める割合が増加しているとの指摘もある。

長期的には、イーサリアムの利用がこのような数年にわたる回復を完了したことは、価格が後から追従する典型的なパターンの前段階である可能性を示唆している。しかし、Dencunアップグレード後の新しい経済モデルにおいて、取引数と価格がどのように再び連動していくかは、まだ未知数の部分が多い。

この記事のポイント

  • イーサリアムの基盤層取引数が2026年Q1に史上初の2億件を突破し、3年ぶりのU字型回復を完了した。
  • ETH価格は高値から50%以上下落したままで、ファンダメンタルズとの大きな乖離が生じている。
  • 取引数増加は主にレイヤー2ネットワークとステーブルコインの決済活動によるもので、ユーザーは直接基盤層を利用していない。
  • Dencunアップグレードでレイヤー2のデータコストが激減し、取引数増加が手数料収入やトークンバーンに直結しにくい構造に変化した。
  • 今後の持続的な成長と、ボット活動ではない本物の需要拡大が、価格への反映に向けた重要な観測ポイントとなる。
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