暗号資産のマーケットメイキングで世界的なシェアを持つGSRが、投資家向けに新たな選択肢を提示した。ビットコイン、イーサリアム、ソラナの3大銘柄を一つのパッケージにした上場投資信託(ETF)をローンチし、取引を開始したのだ。
この新しいETFは、単に価格に連動するだけでなく、ステーキング報酬を投資家に還元する仕組みや、市場環境に合わせて構成比率を動的に変更する戦略を採用している。伝統的な金融機関がビットコイン単体のETFに注力する中で、暗号資産の専門企業ならではの「攻め」の設計が施されている点が最大の特徴だ。
機関投資家の参入が加速する中、なぜGSRは今このタイミングで複合型ETFを市場に投入したのか。その詳細な中身と、背景にある戦略、そして市場への影響を読み解いていく。
新たなETF「BESO」の登場

暗号資産取引プラットフォームのGSRは、2026年4月22日に「GSR Crypto Core3 ETF(ティッカーシンボル、BESO)」の提供を開始した。この投資信託は、暗号資産市場で時価総額上位を占めるビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)の3銘柄の現物価格を追跡するように設計されている。
初日の取引高は約480万ドルを記録
BESOは取引開始初日から、市場の関心を一定数集める結果となった。ナスダックのデータによると、初日の取引枚数は185,574株に達し、取引高は約480万ドル(約4.8Mドル)を記録している。初日の終値は26.04ドルだったが、時間外取引では33ドル付近まで上昇する場面も見られた。
数千億ドル規模の資産を動かす巨大ETFと比較すれば規模はまだ小さいが、特定の3銘柄に特化した複合型ETFとしては順調な滑り出しを見せたといえる。特に、単一銘柄のETFではなく、複数の主要アルトコインを含む商品に対して、初日からこれだけの流動性が供給されたことは、投資家のニーズが多様化している証拠だ。
ステーキング報酬とダイナミック戦略
BESOが既存のスポット(現物)ETFと大きく異なるのは、保有する資産から得られる「ステーキング報酬」を投資家に還元する点だ。イーサリアムやソラナは、ネットワークの維持に貢献することで報酬が得られるプルーフ・オブ・ステーク(PoS)を採用している。この仕組みを活用し、投資家は価格変動による利益だけでなく、インカムゲインのような報酬も期待できる。
また、GSRは「ダイナミック・アロケーション(動的配分)」という戦略を採用している。これは、あらかじめ決められた比率で固定するのではなく、市場の調査に基づいたシグナルに従って、週単位で構成比率を調整する手法だ。管理手数料は年率1%に設定されており、プロのマーケットメイカーが市場環境に応じて最適なバランスを追求する対価として設定されている。
イーサリアムとソラナを重視する配分戦略

GSRが公開したモデルポートフォリオの内容は、多くの市場関係者にとって意外なものだった。暗号資産の象徴であるビットコインの比率が極めて低く、代わりにイーサリアムとソラナが大部分を占めているからだ。
ビットコインの比率を抑えた理由
GSRが4月22日に公表したモデルポートフォリオの分析によれば、最適化された資産配分は以下の通りとなっている。イーサリアムが51.4%、ソラナが41.67%であるのに対し、ビットコインはわずか6.93%にとどまっている。時価総額ではビットコインが圧倒的だが、このETFではあえてその比率を最小限に抑えている。
この配分の背景には、リターンの最大化という狙いがある。ビットコインは「デジタル・ゴールド」としての地位を確立し、ボラティリティ(価格変動)が比較的落ち着いてきている。一方で、イーサリアムやソラナはエコシステムの拡大に伴う成長余力が大きく、さらにステーキング報酬という追加収益も期待できる。GSRは、アルトコインの持つ高い成長性と収益機会を重視した結果、このような構成に至ったと説明している。
週次リバランスによるリターン最適化
このETFの強みは、一度決めた配分を維持するのではなく、毎週リバランス(再調整)を行う点にある。GSRが長年のマーケットメイキングで培ったデータ分析に基づき、どの銘柄がより高いリターンをもたらすかを予測し、柔軟に資金を移動させる。これは、個人投資家が自分で行うには手間とコストがかかる作業を、ETFというパッケージの中で自動的に代行してくれることを意味する。
例えば、ソラナのネットワーク活動が活発化し、価格の上昇期待が高まった場合には、ビットコインやイーサリアムの比率を下げてソラナを買い増すといった調整が行われる。このように「リサーチ主導のシグナル」を活用することで、市場平均を上回るパフォーマンスを目指すのがBESOのコンセプトだ。
伝統的金融機関との競争激化

GSRのETF市場参入は、ウォール街の巨大金融資本が暗号資産ETFへ続々と参入しているタイミングと重なっている。しかし、GSRのような暗号資産ネイティブな企業と、伝統的な銀行では、そのアプローチに明確な違いが見られる。
モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスの動き
大手投資銀行のモルガン・スタンレーは、2026年4月8日にビットコイン現物ETFをローンチした。このファンドはすでに1億6,380万ドル(約163.8Mドル)の純流入を記録しており、既存の顧客基盤を背景に急速に資産を拡大させている。また、ゴールドマン・サックスも4月14日に「ビットコイン・プレミアム・インカムETF」の登録申請を行った。
ゴールドマン・サックスが計画している商品は、オプション戦略を組み合わせて、ビットコインの価格上昇の恩恵を受けつつ、投資家に定期的な収入(パッシブインカム)を提供するものだ。伝統的な金融機関は、既存の投資家にとって馴染みのある「インカムゲイン」の形を暗号資産に持ち込もうとしている。
暗号資産ネイティブな専門性が生む強み
対するGSRは、2013年に元ゴールドマン・サックスのトレーダーであるクリスティアン・ギル氏とリチャード・ローゼンブラム氏によって設立された、業界でも有数の老舗マーケットメイカーだ。CEOのXin Song氏は、同社のETF戦略について「資産クラスがどのように進化しているかについての深い理解を反映している」と述べている。
伝統的な金融機関が「ビットコイン」という入り口に集中する中で、GSRはより踏み込んだソリューションを提供している。イーサリアムやソラナといったスマートコントラクト・プラットフォームに焦点を当て、さらにステーキングという暗号資産特有の収益構造を組み込んだ。これは、単なる資産の裏付けがあるだけのETFではなく、暗号資産の特性をフルに活用した運用商品といえる。
独自分析:複合型ETFが個人・機関投資家に与える影響

GSRによるBESOの投入は、暗号資産投資のフェーズが「単一銘柄の保有」から「戦略的なポートフォリオ運用」へと移行し始めたことを象徴している。この動きが市場にどのような変化をもたらすのか、いくつかの視点から分析してみたい。
ポートフォリオの多様化と運用の簡素化
これまで、ビットコイン以外の銘柄に分散投資を行いたい投資家は、自分で各銘柄を買い揃え、ウォレットを管理し、ステーキングの手続きを行う必要があった。特に機関投資家にとって、個別の銘柄管理やステーキングに伴う技術的なリスクは、参入の大きな障壁となっていた。
BESOのような複合型ETFは、これらの複雑なプロセスをすべてパッケージ化し、証券口座を通じて売買できるようにした。これにより、投資家は一つの銘柄を買うだけで、主要な暗号資産への分散投資と、ステーキング報酬の獲得を同時に実現できる。運用の簡素化は、これまで様子見をしていた保守的な投資家層を呼び込む強力なインセンティブになるだろう。
アルトコインETF承認への布石となるか
現在、市場の関心はイーサリアムやソラナの現物ETFがいつ承認されるかに集まっている。GSRがこれらの銘柄を組み込んだETFをローンチし、市場で安定した取引実績を積み上げることは、規制当局に対するポジティブなアピールになり得る。特に、週次リバランスやステーキングといった高度な運用が、適切に管理されたETFの枠組みの中で可能であることを証明できれば、後続の商品承認に向けた強力な論拠となるはずだ。
また、ビットコインの比率を極端に下げた今回のモデルポートフォリオは、ビットコイン以外の資産が持つ「投資対象としての価値」を強調している。ビットコインが市場の牽引役であることは疑いようがないが、イーサリアムやソラナが独自の経済圏と収益構造を持っていることが一般の投資家にも広く認識されるきっかけになるだろう。
この記事のポイント
- GSRがビットコイン、イーサリアム、ソラナを対象とした新ETF「BESO」をローンチした
- 初日の取引高は約480万ドルを記録し、時間外取引でも価格が上昇する好調な滑り出しを見せた
- 現物価格の追跡に加え、ステーキング報酬の還元と週次リバランスによる動的な配分戦略が特徴だ
- モデルポートフォリオではイーサリアムとソラナが約9割を占め、ビットコインは7%未満に抑えられている
- 伝統的な金融機関がビットコインに注力する中、暗号資産ネイティブなGSRはアルト重視の独自路線を打ち出した

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
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