米共和党上院議員、暗号資産の自己資本規制見直しを要請。バーゼル委基準に異議

米国上院の共和党議員らが金融規制当局に対し、銀行が暗号資産を保有する際の自己資本規制ルールを早急に明確化するよう求めた。現行の国際基準は暗号資産のリスクを過大評価しており、銀行の市場参加を不当に妨げているとの主張だ。

書簡はシンシア・ルミス議員を筆頭に、ダン・サリバン、ビル・ハガティ、バーニー・モレノ、テッド・バッド、ジョン・ハステッドの各上院議員が署名した。彼らはバーゼル銀行監督委員会が定める現行基準に真っ向から異議を唱えている。

この動きの背景には、連邦議会で審議が大詰めを迎えている包括的な暗号資産法案の存在がある。規制の枠組みが固まりつつある今、銀行が暗号資産にどう向き合うべきかを定める資本ルールの整備は、避けて通れない課題として浮上している。

「1250%」という異例のリスクウェイト、その意味と問題点

「1250%」という異例のリスクウェイト、その意味と問題点

上院議員らが問題視するのは、バーゼル銀行監督委員会が長年にわたって維持してきた暗号資産への資本賦課ルールだ。バーゼル委とは、世界各国の中央銀行や金融監督当局の代表が参加する国際的な基準策定機関である。ここが定めるルールは、各国の金融規制の土台として広く採用されている。

問題の核心は「リスクウェイト1250%」という数字にある。

リスクウェイトとは何か

自己資本規制におけるリスクウェイトとは、銀行が保有する資産のリスク度合いを数値化したものだ。たとえばリスクが極めて低い国債は0%、一般的な住宅ローンは50%といった具合に、資産の種類ごとに掛け目が決められている。

銀行は、このリスクウェイトを掛け合わせた「リスク資産」の総額に対して、一定比率以上の自己資本を積む義務がある。リスクウェイトが高い資産を多く持つほど、大量の自己資本が必要になるという仕組みだ。

つまりリスクウェイト1250%とは、100ドル分の暗号資産を保有するために、その12.5倍にあたる1,250ドル分の自己資本を積まなければならないことを意味する。これは事実上、銀行に「暗号資産を保有するな」と言っているに等しい水準だ。

書簡が指摘する「実態なき数字」

議員らは書簡の中で、この1250%という数字について「デジタル資産の実際のリスクプロファイルを適切に評価した上で導き出されたものではない」と断じた。要するに、きちんとしたリスク分析に基づいた数字ではなく、実態を反映していないという批判である。

さらに書簡は、新たな資本規制の枠組みは「デジタル資産の機会とリスクの双方を正確に反映すべきだ」と主張。可能な限りテクノロジーに中立なアプローチを採用し、銀行がデジタル資産市場に意味のある形で参加できるようにすべきだとの立場を明確にした。

議会の暗号資産法案と資本規制の不可分な関係

議会の暗号資産法案と資本規制の不可分な関係

今回の書簡提出のタイミングは偶然ではない。米上院では今週、休会明けとともに包括的な暗号資産法案の審議が再開される予定だ。この法案は米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)がどのように暗号資産市場や関連企業を監督するか、その枠組みを定める画期的な内容となっている。

銀行が市場参加するための前提条件

議員らは書簡の中で「上院で審議中の暗号資産法案は、間違いなく資本規制に関する指針を必要とする」と指摘した。規制の枠組みが法的に整備されるのであれば、それに対応する銀行の資本ルールも同時に用意されなければならないという理屈だ。

仮に法整備だけが進み、資本規制が古い基準のままであれば、銀行は法的には認められた活動を、事実上の資本制約によって行えないという矛盾が生じる。議員らはそうした事態を避けるため、規制当局に対して先手を打つよう促している。

法案成立へのハードル

現在、上院の銀行委員会と農業委員会がそれぞれ独自のバージョンの法案を通過させている。銀行委員会は証券に該当する暗号資産、農業委員会は商品に該当する暗号資産の規制を担当するという分担だ。しかし最終的には、上院本会議でこれらを一本化する必要がある。

さらに60票の賛成を得て迅速に法案を通過させるためには、ステーブルコイン、倫理規定、暗号資産開発者の扱いといった、議員間で意見が割れている論点の調整も避けて通れない。一枚岩になれるかどうかが、法案の命運を握っている。

金融規制における「テクノロジー中立性」とは

金融規制における「テクノロジー中立性」とは

書簡で繰り返し言及された「テクノロジーに中立なアプローチ(technology-neutral approach)」という考え方は、金融規制の世界では近年重要度を増している概念だ。

これは簡単に言えば、同じ機能を持つ金融サービスは、それがどのような技術で実現されているかに関わらず、同じ規制を適用すべきだという原則だ。たとえば、銀行が扱う伝統的な証券と、ブロックチェーン上で発行されたトークン化証券は、経済的実態が同じであれば同じ規制の下に置かれるべきだという考え方である。

議員らの主張は、この原則を資本規制の分野にも適用すべきだというものだ。暗号資産だからという理由だけで実際のリスク以上に高い資本賦課を行うのではなく、その資産が持つ本質的なリスクに基づいた評価をしろということになる。

今後の展開と市場への影響

今後の展開と市場への影響

現時点では書簡への直接の回答は示されていないが、議会で暗号資産法案の審議が本格化する中、規制当局がこの問題を無視し続けることは難しくなってくるだろう。特に、超党派での合意形成が急務となる局面では、共和党側からのこうした要求は無視できない重みを持つ。

銀行の本格参入への道筋

仮に資本規制が見直され、暗号資産に対するリスクウェイトが実態に即した水準に引き下げられれば、大手銀行による暗号資産市場への本格参入が現実味を帯びる。現在はカストディ(保管)業務が中心の銀行勢だが、自己勘定での保有や、顧客向けのより多様なサービス提供に乗り出す可能性が出てくる。

これは市場にとって、流動性の向上と機関投資家層の拡大という二重の意味で追い風となる。個人投資家が中心とされてきた暗号資産市場の構造が、大きく変わる契機になりうる動きだ。

国際的な波及効果

米国がバーゼル基準とは異なる独自の資本規制の枠組みを打ち出せば、それは他の主要国の規制当局にも影響を与えるだろう。とりわけ欧州やアジアの金融ハブでは、銀行の国際競争力を維持する観点から、同様の見直しに動く可能性がある。

一方で、拙速な規制緩和が新たな金融リスクを生むことへの懸念も根強い。2022年から2023年にかけての暗号資産市場の混乱を経験した規制当局が、どの程度までリスクウェイトの引き下げに応じるかは不透明だ。安全と成長のバランスをどこに置くか、難しい舵取りを迫られることになる。

この記事のポイント

  • 米共和党上院議員6名が金融当局に書簡を送り、暗号資産の自己資本規制を明確化するよう要請した
  • バーゼル委が定める1250%のリスクウェイトは実態を反映しておらず、銀行の市場参加を阻害していると批判
  • 上院で審議中の包括的暗号資産法案と整合的な資本規制の枠組みを早急に策定するよう促した
  • テクノロジーに中立なアプローチを採用し、資産の本質的リスクに基づいた評価を求めている
  • 規制見直しが実現すれば、大手銀行の本格参入と機関投資家層の拡大につながる可能性がある
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