zk-rollupの先駆者LoopringがDEX閉鎖、普及不足と技術陳腐化が原因

zk-rollupの先駆者Loopring、DEXを閉鎖

zk-rollupの先駆者Loopring、DEXを閉鎖

Ethereum初のzk-rollupとして知られるLoopringが、分散型取引所(DEX)と自動マーケットメイカー(AMM)の全取引サービスを停止した。リレイヤーも即時停止し、事実上DEX事業から完全撤退する。

Loopringチームは28日、X(旧Twitter)への投稿で閉鎖の3つの理由を挙げた。有意義な普及に至らなかったこと、ビジネス開発スキルの欠如、そして最新のzkEVMソリューションに技術面で追い抜かれたことだ。

2017年にICOで4,500万ドルを調達し、zk-rollupによるEthereumスケーリングの可能性を証明した先駆者だった。しかし暗号資産業界の技術進化は速く、自らが道を切り拓いたzkSyncやScroll、StarkNetといった後発プロジェクトに追い越される結果となった。

本稿ではLoopring閉鎖の経緯と背景、zk-rollup技術の変遷、そして2026年に相次ぐ暗号資産プロジェクトの閉鎖トレンドについて詳しく解説する。

「意味のある普及には至らなかった」Loopringチームが率直に認めた敗因

「意味のある普及には至らなかった」Loopringチームが率直に認めた敗因

Loopringチームは今回の発表で、自らの失敗を極めて率直に認めている。「正直なところ、Loopringが意味のある普及を達成することはなかった」と述べ、最初期のzk-rollupとしてバーチャルマシン(VM)を持たなかったことが決定的な制約になったと説明した。

VM不在がもたらした致命的な制約

バーチャルマシン(VM)とは、ブロックチェーン上でスマートコントラクトを実行するためのソフトウェア環境のことだ。Ethereum本体がEVM(Ethereum Virtual Machine)を持ち、誰でも自由にプログラムを動かせるのに対し、Loopringはそうした汎用性を持たない専用設計だった。

つまりLoopringは「決済と取引に特化した専用レイヤー2」であり、他のアプリケーションと組み合わせて使う「コンポーザビリティ(相互運用性)」がなかった。実世界の支払いユースケースにも対応できず、エコシステムが拡大しなかったのはこの技術的制約が大きいとチームは振り返っている。

「我々は技術者であってビジネス開発者ではなかった」

技術面だけでなく、チームの組織的な弱みも今回の発表で赤裸々に語られた。Loopringチームは自らを「根っからのエンジニア」と表現し、コードを書くことは得意でもビジネス開発への「情熱もスキルも育たなかった」と認めている。

さらに2026年には主要取引所でLRCトークンが相次いで上場廃止になったことも決定打の一つだった。「外部からの圧力(取引所の上場廃止を含む)が、不可避の結末を加速させただけだ」とチームは述べている。

技術の陳腐化とビジネス面の限界が重なり、もはや「形だけのサービスを続けるより、潔く幕を引く」選択をしたということだ。

zk-rollupの先駆者が技術進化に取り残されるまで

zk-rollupの先駆者が技術進化に取り残されるまで

Loopringは暗号資産業界にzk-rollupという概念を実装したパイオニアである。だが皮肉にも、自らが証明した技術の可能性が、より高機能な後発プロジェクトを生み出し、結果的に自らを時代遅れに追い込むことになった。

zk-rollupとは何か

zk-rollupとは、大量の取引をEthereumのメインネット(レイヤー1)の外で処理し、その結果を証明データとともに圧縮してメインネットに送信する技術だ。処理の正しさを「ゼロ知識証明(ZKP)」と呼ばれる暗号技術で保証するため、高い安全性を維持しながらスケーラビリティを実現できる。

ZKPとは、簡単に言えば「答えそのものを見せずに、その答えが正しいことだけを証明する」技術だ。年齢確認で身分証の生年月日を隠したまま「20歳以上であること」だけを証明するようなもの、と考えるとわかりやすい。

zkEVMの登場で決定的に差がついた

Loopringの最大の問題は、このzk-rollupを取引処理だけに特化させてしまったことだ。後発のzkSync、Scroll、StarkNetといったプロジェクトは、zkEVM(ゼロ知識証明対応のEthereum仮想マシン)を実装し、Ethereumのスマートコントラクトと完全な互換性を持たせた。

zkEVMがあるレイヤー2では、Ethereum上で動くアプリケーションをほぼそのまま移植できる。DeFi(分散型金融)、NFT、ゲームなど、あらゆるユースケースを取り込める。一方でLoopringの専用アーキテクチャは、こうした汎用性をまったく持たなかった。

結果としてLoopringのTVL(預かり資産総額)は約800万ドルまで縮小した。L2Beatのデータによれば、2021年11月のピーク時には約7億6,000万ドルに達していたことから、実に99%近い減少だ。

ネイティブトークンであるLRCも同様の下落を見せている。2021年11月の最高値3.75ドルからは99%以上下落し、足元では0.01ドル付近で推移している状況だ。

2026年、相次ぐ暗号資産プロジェクトの幕引き

2026年、相次ぐ暗号資産プロジェクトの幕引き

Loopringの閉鎖は、単独の出来事ではない。2026年に入り、弱気相場の長期化と前サイクルのストーリーが通用しなくなったことで、暗号資産プロジェクトの閉鎖が相次いでいる。

今年すでに60以上のプロジェクトが閉鎖

RootDataの集計によると、2026年にはすでに60を超える暗号資産プロジェクトやプロトコルがサービスを停止している。主な事例としては、a16zの支援を受けていた分散型セルフカストディ(自己管理)ソリューションのEntropy、アプリチェーンインフラプロトコルのSyndicate、AIブロックチェーンプラットフォームのYuppなどが挙げられる。

Loopringも2025年7月にウォレットサービスをすでに停止しており、段階的な撤退を進めてきたことになる。チームによれば、2021年のGameStopとの提携は最大のマイルストーンだったが、そうした大型案件も潮目の変化を止めるには至らなかった。

弱気相場と「前サイクルの物語」の終焉

暗号資産市場には明確なサイクルがある。2021年の強気相場ではNFTやメタバース、レイヤー2スケーリングといったテーマが熱狂を集めた。しかし現在の市場環境では、そうした「前回サイクルの物語」に対する資金流入が枯渇している。

特にzk-rollupセクターは、zkEVM対応の汎用レイヤー2が覇権を握りつつあり、専用設計の旧世代ソリューションが生き残る余地は急速に狭まっている。Loopringの閉鎖は、この構造変化を象徴する出来事といえるだろう。

ユーザー資金はどうなるのか 返金プロセスと今後のスケジュール

ユーザー資金はどうなるのか 返金プロセスと今後のスケジュール

DEX閉鎖に伴い、Loopringチームは全ユーザーの最終残高を計算し、Ethereumウォレットに直接資金を返金すると発表している。返金はバッチ処理で行われ、ガス代(取引手数料)はチーム側が負担する方針だ。

現在、LoopringのTVLは約800万ドルとなっている。これはユーザーが預けている資産の総額であり、返金対象となる金額の目安だ。まだ資産を引き出していないユーザーは、公式発表の続報を確認しておく必要がある。

Loopring閉鎖が示す暗号資産業界の構造変化

Loopringの撤退は、暗号資産業界における技術進化の残酷さを端的に表している。最初に新しい技術を実装した先駆者が、必ずしも最終的な勝者にはならない。むしろ後発が先駆者の証明した概念を洗練させ、より汎用的で使いやすい形に仕上げることで市場を制するパターンが繰り返されている。

zk-rollup自体の技術的価値は揺るがない。実際、zkSyncやStarkNet、Scrollといった後発プロジェクトはLoopringが切り開いた道の上に構築されている。しかし暗号資産の世界では「最初であること」よりも「最も使いやすいこと」が普及の鍵を握る。Loopringは技術的な正しさを証明したが、エコシステムを育てるための土壌(VM、コンポーザビリティ、開発者コミュニティ)を持たなかった。

また興味深いのは、チームが「エンジニアであってビジネス開発者ではなかった」と自己分析している点だ。これは暗号資産プロジェクト全般に通じる重要な教訓でもある。優れた技術を持っていても、それを市場に浸透させるビジネス開発力がなければ、結局はよりマーケティングに長けた競合に飲み込まれてしまう。

2026年に入ってからの60件以上の閉鎖事例は、この業界の選別がいかに厳しいかを物語っている。ICOで巨額の資金を調達し、大手VCの支援を受け、一時は華々しく注目されたプロジェクトでさえ、次のサイクルでは生き残れない。暗号資産の世界で「当たり前」になりつつある現実だ。

この記事のポイント

  • LoopringがDEXとAMMの全取引サービスを停止、事実上撤退
  • VMを持たない専用設計が裏目に出て、汎用zkEVMに市場を奪われた
  • チームは技術面とビジネス開発力の両方で限界があったと率直に認める
  • TVLはピークの7.6億ドルから99%減の約800万ドルに縮小
  • 2026年は60以上の暗号資産プロジェクトが閉鎖、業界再編が加速
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