英国FCAが暗号資産の最終ルール策定、2027年までに認可必須へ

英国の暗号資産規制が最終段階に入った。金融行為規制機構(FCA)は2026年6月29日、国内で事業を展開する暗号資産企業に対する最終的なルールを公表し、2027年までに新たな認可を取得するよう義務付けた。

今回の発表で特に重要なのは、既存のマネーロンダリング規制の下で何らかの認可を得ている事業者も、自動的に新制度へ移行できるわけではないという点だ。すべての事業者が改めて審査を受け、新しいルールに基づいた認可を取得しなければならない。

これにより、英国市場での暗号資産ビジネスは、より厳格な消費者保護と透明性が求められる時代に突入する。小口投資家にとっては、自身が利用する取引所やサービスが正式な認可を得ているかを確認する必要性が高まるだろう。

最終規則の全体像と認可取得の新たなハードル

最終規則の全体像と認可取得の新たなハードル

FCAが公表した今回の最終規則は、長年にわたる協議と草案の修正を経て固まったものだ。最大のポイントは、マネーロンダリング・テロ資金供与対策規則(MLR)に基づきFCAに登録済みの事業者であっても、新制度下での認可を自動的に引き継げない点にある。

これは、既存の登録制度が主に資金洗浄対策に焦点を当てていたのに対し、新制度では消費者保護、資産の分別管理、経営陣の適格性、財務の健全性など、より包括的な審査が行われることを意味する。つまり、過去に登録を受けていても、ビジネスモデルや内部管理体制によっては新規認可を得られない可能性があるということだ。

経過措置で事業継続の道を確保

FCAは、新たな認可審査の期間中も特定の事業者が限定的に活動を続けられるよう、「経過措置(セービング・プロビジョン)」を設けている。これは、すでに英国で営業している企業が、申請手続き中に事業を完全停止しなくても済むようにするための仕組みだ。

申請から審査完了までには相応の時間がかかることが想定されるため、この措置は業界にとって実務的な救済策となる。FCAは来月から申請前のサポート面談の提供も開始すると発表しており、事業者が円滑に手続きを進められるよう配慮する姿勢を見せている。

スケジュールと今後の情報公開

規制当局は、今後の方針を明確にするためのスケジュールも公表した。まず7月17日にウェビナーを開催し、政策声明の詳細を説明する予定だ。さらに9月には、暗号資産活動の「規制境界線」、つまりどのような行為が規制の対象となるのかを具体的に定める追加の政策声明を公表する。

この規制境界線の明確化は、特に新しいタイプのトークンや分散型サービスが次々と生まれる業界において、事業者にとっては自社のビジネスが規制対象かどうかを判断するための重要な指針となる。

ステーブルコイン規制の最終設計

ステーブルコイン規制の最終設計

今回の発表には、法定通貨連動型の暗号資産であるステーブルコインの発行に関する最終ガイドラインも含まれている。FCAは基本的な枠組みを維持しつつ、実務上の負担を軽減するための微調整を加えた。

主な変更点として、裏付け資産の構成要件が簡素化された。具体的には、償還予測の提出義務が撤廃された一方で、準備金に対する法定信託(Statutory Trust)の設定が新たに義務付けられている。法定信託とは、法律によって保護された信託勘定で、発行体が破綻した場合でも利用者の資金が発行体の一般債権者から隔離され、優先的に返還される仕組みを指す。

利用者保護と柔軟性のバランス

新ガイドラインでは、発行体に対し、利用者に明確な引出権を提供することも求めている。これにより、保有者は自身のステーブルコインをいつでも、そして確実に法定通貨へ換金できる権利が制度的に保証される。

また、準備金の運用に関しては、裏付け資産プールに最大5%の超過額を保有することが認められた。これは、急激な市場変動や大量の償還請求が発生した場合でも、価格の安定を維持するためのバッファーとして機能する。FCAはこれを「ステーブルコイン発行のベースライン制度」と位置づけており、今年後半には、財務省が「システム上重要」と認定したステーブルコイン発行体に対して、イングランド銀行がどのような追加規制を課すかについても協議を開始する。

DeFiと分散型台帳技術へのアプローチ

DeFiと分散型台帳技術へのアプローチ

中央集権的な事業者だけでなく、FCAは分散型金融、いわゆるDeFiへの対応も本格化させる。年内に、DeFiに関するガイダンスと、分散型台帳技術(DLT)を利用する企業向けのオペレーショナル・レジリエンス(業務継続力)に関するガイドラインについて、個別の市中協議を実施する予定だ。

分散型台帳技術とは、特定の管理者に依存せず、ネットワーク参加者間で取引記録を共有・検証する仕組みである。ブロックチェーンはその代表例だ。この技術を使う場合、システム障害やサイバー攻撃にどう耐えるかという課題がつきまとうため、規制当局としても一定の指針を示す必要があると判断した形だ。

「真のDeFi」は規制の枠外に

FCAのペイメント・デジタル資産部門ディレクターを務めるマシュー・ロング氏は、DeFiに関する規制方針について興味深いコメントを残している。同氏は「私たちは引き続きDeFiに取り組んでいく」と述べた上で、ケースバイケースの判断を採用すると説明した。

これは、表面的には分散型を謳っていても実質的に特定の管理者が存在するプロジェクトと、管理者と呼べる主体が完全に存在しない「真のDeFi」を区別するアプローチだ。ロング氏によれば、「活動を担う特定可能な人物がいない」真に分散化されたプロトコルは、規制の範囲外となる見込みだ。

この考え方は、イノベーションを阻害せず、かつ投資家保護も怠らないという難しいバランスを取ろうとする試みである。FCAはまた、暗号資産企業向けの金融犯罪ガイドの更新についても協議を計画しており、マネーロンダリングや制裁回避への対策は引き続き重要なテーマとなる。

この記事のポイント

  • 英国FCAが暗号資産企業向けの最終規則を公表し、2027年までに新たな認可取得を義務付け
  • マネーロンダリング規制下での既存登録事業者も、新制度では改めて審査を受ける必要がある
  • 申請中の事業者が事業を継続できる経過措置が設けられ、来月から事前サポート面談も開始
  • ステーブルコイン規制では法定信託による準備金保護が明確化され、利用者の換金権利が強化
  • DeFiはケースバイケースでの判断となり、管理主体の存在しない「真のDeFi」は規制枠外へ
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