Revolutが8月にUSDT取り扱い停止、MiCA規制とリスク懸念で

Revolut、8月にUSDTの取り扱いを停止へ。MiCA準拠企業にも波及する規制の波

Revolut、8月にUSDTの取り扱いを停止へ。MiCA準拠企業にも波及する規制の波

2026年8月をもって、欧州のデジタルバンク大手Revolut(レボリュート)が暗号資産USDT(テザー)の取り扱いを停止する。欧州連合(EU)の包括的暗号資産規制「MiCA(ミカ)」への対応とリスク管理上の懸念が理由だ。RevolutはすでにMiCAに基づく事業者ライセンスを取得済みであり、規制を満たした企業の側が特定の暗号資産を自主的に外すという、市場再編の新たな局面を象徴する動きになっている。

対象となる地域や、今後同社が提供する暗号資産ラインナップの詳細は明らかにされていない。CointelegraphがRevolutにコメントを求めたが、記事公開時点で回答は得られていない。しかしこの発表は、欧州でステーブルコインをめぐる規制環境が一段と厳しくなるなか、個別企業の判断にも大きな影響を及ぼし始めたことを示している。

本記事では、RevolutのUSDT取り扱い停止発表の背景にあるMiCA規制の仕組みや、発行元テザー社の対応、欧州ステーブルコイン市場で進行する構造変化をわかりやすく解説する。「なぜいま、欧州からUSDTが消えつつあるのか」、その理由と今後の展望を一緒に見ていこう。

Revolutが8月にUSDT取り扱い停止を発表、その背景と事実関係

Revolutが8月にUSDT取り扱い停止を発表、その背景と事実関係

発表の概要とRevolutの規制上の立場

Cointelegraphが2026年7月4日に報じたところによると、Revolutは同年8月にUSDTの上場を廃止する予定だ。理由として挙げられたのは、EUのMiCA規制に関連するコンプライアンス上の要請と、それに伴うリスク評価だ。USDTは暗号資産市場で時価総額第3位、約1,840億ドル(約25兆7,600億円)規模の巨大ステーブルコインである。これだけ大きな存在の取り扱いを止める判断には、相応の重みがある。

興味深いのは、RevolutがすでにMiCAに基づく「暗号資産サービスプロバイダー(CASP)」のライセンスを取得済みという点だ。このライセンスは欧州証券市場監督機構(ESMA)の公式登録簿によれば、2025年11月にキプロス証券取引委員会(CySEC)によって発行された。つまり、Revolutは規制の枠内で正規に事業を営める立場にありながら、あえてUSDTという特定の資産を自社のプラットフォームから外す選択をしたことになる。

CASPs(暗号資産サービスプロバイダー)とは、EU域内で暗号資産の売買・交換・保管などを業として提供する事業者を指す。MiCAの枠組みでは、これらの事業者は各国の監督当局からライセンスを取得し、顧客保護やマネーロンダリング防止など厳格な要件を満たす必要がある。Revolutはその手続きを経ている正規事業者だ。

欧州で広がるUSDT離れの流れ

Revolutの決定は突然のものではない。欧州では2024年末以降、複数のCASPsがUSDTの取り扱いを段階的に終了してきた。背景には、USDTの発行元であるテザー社がMiCAへの準拠を拒否し続けていることがある。規制に従わないステーブルコインを、規制に従う事業者が扱い続けることのリスクが無視できなくなっているのだ。

この点は、後に詳述するが、単に「悪貨が良貨を駆逐する」といった単純な話ではない。規制当局と発行体、そしてサービス提供事業者の三者の関係性が、欧州市場の形を大きく変えようとしている。

MiCA規制の要点とテザー社の準拠拒否の背景

MiCA規制の要点とテザー社の準拠拒否の背景

MiCAとは何か、なぜUSDTに影響するのか

MiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)は、EUが2023年に成立させた包括的な暗号資産規制の枠組みだ。2024年末から段階的に施行され、2026年7月時点では完全適用の移行期間が終了している。暗号資産の発行体やサービス提供事業者に対して、透明性・顧客保護・準備金の確保など、金融規制に近いレベルの義務を課す内容になっている。

ステーブルコイン発行体に特に重要なのが「準備金要件」だ。これは、発行するステーブルコインの価値を裏付ける資産を適切に保有し、その一部をEU域内の信用機関(銀行など)に預け入れることを求めるルールである。要は、「1ドルの価値があると言うなら、本当にその分の資産を持っていることを証明し、EUの銀行で保全しなさい」という話だ。銀行預金のように厳格な裏付けを求める考え方といえる。

テザーCEOの批判とMiCAをめぐる見解の対立

テザー社のCEOパオロ・アルドイーノ氏は、MiCAの規制設計について強い批判を繰り返してきた。2025年5月のCointelegraphのインタビューで同氏は「非常に考え抜かれていない規制(very not well thought legislation)」と断じている。そのうえで同社は、EU域内でのライセンス取得や準備金の一部EU銀行預託といった要件に応じる意思がないことを明確にしてきた。

テザー社の主張の背景には、準備金の運用方針やビジネスモデル上の制約があるとみられる。MiCAが求める「EU銀行への預託」は、テザー社がこれまで採用してきた米国債中心の運用とは大きく異なる。こうした構造的な不一致が、歩み寄りを難しくしている要因のひとつだ。

欧州ステーブルコイン市場の構造変化とUSDCの台頭

欧州ステーブルコイン市場の構造変化とUSDCの台頭

2大ステーブルコインの勢力図

本稿執筆時点で、USDTの時価総額は約1,840億ドルと、暗号資産全体でビットコイン、イーサリアムに次ぐ第3位の規模を誇る。一方、最大の競合であるサークル社のUSDC(USDコイン)は時価総額約730億ドルで、第5位だ。この数字だけを見れば、USDTの優位は揺るぎないように思える。

だが、欧州という局地戦に限れば話は別だ。MiCAへの準拠を進めるUSDCは、EU域内で正規のステーブルコインとしての地位を固めつつある。複数のCASPsがUSDTを外しUSDCを残す、あるいは新たにUSDCを追加する動きを見せている。このトレンドは、規制を梃子(てこ)にした市場シェアの再編が現実に進行していることを示している。

Revolutの判断が持つ象徴的な意味

RevolutのようにすでにMiCAライセンスを取得している大手事業者がUSDTを外す判断をしたことは、欧州市場において重要なメッセージになる。規制当局から「外せ」と言われたわけではなく、事業者自身のリスク評価とコンプライアンス判断で外す。これは、規制対応コストと事業リスクを天秤にかけた結果、USDTの取り扱い継続が合理的でないと判断されたことを意味する。

裏返せば、仮にテザー社が将来的にMiCA準拠に転じたとしても、一度離れた事業者が戻るかは未知数だ。USDCなど代替手段が整備されつつあるなか、欧州における「USDT外し」は不可逆的な性格を帯び始めている。

この決定が意味するもの – 欧州暗号資産市場への影響

ユーザーが直面する現実的な影響

RevolutでUSDTを保有していた欧州のユーザーは、8月までに資産を別の暗号資産や法定通貨に交換するか、他ウォレットへ移動する必要が生じる。同社がUSDTに代えてどのステーブルコインを提供し続けるのかは現時点で明らかでない。USDCやユーロ連動型ステーブルコインにシフトする可能性が高いと見られている。

より広範な影響として、欧州居住者がアクセスできるステーブルコインの選択肢が狭まる点が挙げられる。これは一見すると不便に思えるが、規制に準拠した安全なステーブルコインだけが流通する環境へと向かう過渡期ともいえる。利用者保護と利便性のバランスが問われる局面だ。

「規制された市場」の実像と今後の展望

MiCAは暗号資産に法的地位を与え、健全な市場発展を促すことを目的としている。しかしそのプロセスでは、既存の大手プロジェクトやサービスが退出を迫られることも避けられない。規制の網の目を通った資産だけが残る、いわば「選別」のフェーズに入ったといえる。

この選別は、長期的には欧州市場の信頼性を高める効果があると考えられる。金融危機や大規模ハッキングのたびに暗号資産全体への不信が広がるよりも、厳格なルールのもとで運営される資産や事業者が明確に区別されるほうが、健全な普及にはプラスに働く。ただし短期的には、流動性の低下や一部サービスからの撤退といった摩擦は避けられないだろう。

この記事のポイント

  • Revolutが2026年8月にUSDTの取り扱いを停止。MiCA規制への対応とリスク管理が理由。
  • RevolutはすでにMiCAライセンスを取得済み。規制準拠企業が自主的にUSDTを外す判断をした点が重要。
  • テザー社はMiCAへの準拠を引き続き拒否。CEOは規制設計を「考え抜かれていない」と批判している。
  • 欧州ではUSDCを中心にMiCA準拠のステーブルコインがシェアを拡大。市場構造の再編が進行中。
  • 長期的には規制による選別が市場の信頼性向上につながる一方、短期的な摩擦や選択肢の縮小も予想される。
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