イラン停戦決裂で原油75ドル急騰、ビットコイン62,000ドル割れ

米国とイランの停戦協議が決裂し、原油相場が急騰するなか、ビットコイン(BTC)は売り圧力に晒されている。7月8日の米ウォール街オープン後、BTCは62,000ドルを下回る水準で推移。市場では重要なサポートラインと目される61,000ドルの節目が意識され始めた。

今回の地政学リスクの再燃は、中東の緊張が暗号資産市場を含むグローバルなリスク資産にどのような影響を与えるかを示す新たな事例だ。原油高がインフレ再燃や金融引き締め長期化への懸念を呼び、投機的資産から資金が引き揚げられる構図が鮮明になっている。

停戦決裂とホルムズ海峡封鎖の再燃

停戦決裂とホルムズ海峡封鎖の再燃

発端は、トルコのアンカラで開催されたNATO首脳会議でのドナルド・トランプ米大統領の発言だ。記者会見の場で停戦について問われた同氏は「自分に言わせれば、もう終わった」と述べ、協議が事実上破綻したことを認めた。

これに加え、複数の報道によれば、米国とイランの双方がペルシャ湾の入口にあたるホルムズ海峡の封鎖を再び検討しているという。ホルムズ海峡は世界の海上輸送石油量の約2割が通過する重要航路だ。ここが封鎖されれば、世界のエネルギー供給に深刻な打撃を与える。つまり、原油価格が跳ね上がる最大の材料の一つが、再び現実味を帯びてきたということだ。

WTI原油は75ドル台へ急伸

このニュースを受け、原油市場は即座に反応した。米国産WTI原油の先物価格は1バレルあたり75ドルを突破し、6月22日以来の高値を記録。エネルギーコストの上昇は、企業の生産コストや消費者物価を押し上げる要因となるため、幅広い金融市場でリスク回避の動きが強まった。

暗号資産に詳しい友人にたとえれば、これは「マグロの漁獲量が減ると、回転寿司チェーン全体の株価が下がる」ような波及の仕方に似ている。原油という一つの原燃料の価格が、遠く離れたように見えるビットコイン市場にも連鎖していくわけだ。

ビットコインへの波及とサポートライン攻防

ビットコインへの波及とサポートライン攻防

リスク回避の流れは暗号資産市場にも押し寄せた。トレーディングビューのデータによると、BTCの日次での下げ幅は一時2.5%に達し、価格は62,000ドルを割り込んでいる。市場関係者のあいだでは、61,000ドルを防衛できるかどうかが当面の焦点となっている。

ここで注目したいのは、ビットコインが「デジタルゴールド」と呼ばれながらも、今回の地政学リスクでは逃避先として機能していない点だ。むしろ株式などと同じリスク資産として売られている。これは、機関投資家の参加が増えたことで、BTCがマクロ経済の動向により敏感に反応するようになった証拠でもある。

著名トレーダーは61,000ドルを「最重要ライン」と指摘

暗号資産トレーダーでアナリストのミカエル・ヴァン・デ・ポッペ氏は、Xへの投稿で61,000ドルが再び試される展開を予想している。「これが起きて、その1、2日後に再び協議が再開される。すると相場も反転する」と同氏はコメント。過去にも中東情勢をめぐるヘッドラインニュースで乱高下したパターンが繰り返される可能性を示唆した。

ヴァン・デ・ポッペ氏はその前の投稿で、中東での戦争が事実上再燃したにもかかわらず、価格が60,000ドルを超えて推移していること自体を「問題はない」と評価している。「比較的浅い調整にとどまっている限り、さらに低い水準に向かうとは考えていない」とも述べており、61,000ドルを防衛できるかが相場の方向性を決めるというスタンスだ。

トレーダー間では「押し目拾い」の好機と見る声も

一方で、今回の下落を前向きに捉えるトレーダーもいる。トレーダーのジェレ氏は、BTCが以前のレンジ下限を回復しようとしていたタイミングでイラン情勢が再燃したと指摘。「かねてより待ち望んでいた、割安に買い集める機会が到来しつつある」との見方を示した。

ここでいう「レンジ」とは、価格が一定期間内で上下を繰り返す値幅のことを指す。レンジを下抜けすると、そこが新たな上値の抵抗線に変わるケースが多く、トレーダーはその節目を意識して売買のタイミングを計っている。

FRBの利上げ観測が追い打ちに

FRBの利上げ観測が追い打ちに

原油高がもたらす二次的影響として無視できないのが、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策をめぐる思惑の変化だ。CMEグループが提供するフェドウォッチ・ツールのデータによると、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが実施される確率が上昇している。

フェドウォッチ・ツールとは、金利先物の価格を基に市場の政策金利予想を確率で示す指標だ。この数字が上がるということは、市場が「景気が過熱しインフレが再燃する」と見ている証拠だ。FRBが金利を引き上げると、企業の借り入れコストが増え、株式や暗号資産などのリスク資産には逆風となる。

一方で、7月の会合では据え置きが有力視されている。つまり市場は、中東情勢の悪化が短期的なショックで終わるか、長期化してインフレに火をつけるかを見極めている段階だ。

2026年中の利上げ確率は55%に

予測市場カルシによれば、2026年中にFRBが利上げに踏み切る確率は55%と算出されている。半数をわずかに超える水準だが、中東情勢がさらに緊迫化すれば、この数字は大きく変動する可能性がある。エネルギー価格の高騰が続けば、FRBは物価安定のために再び動かざるを得なくなるからだ。

地政学リスクと暗号資産の新たな関係性

地政学リスクと暗号資産の新たな関係性

今回の相場変動は、暗号資産市場がマクロ経済や国際情勢と無縁ではいられないことを改めて浮き彫りにした。かつては「インフレヘッジ」や「安全資産」と語られたビットコインだが、金融市場との相関が高まった現在では、むしろリスクオン・リスクオフの動きに敏感に反応する資産へと変容している。

ただ、見方を変えれば、これは暗号資産が成熟し、機関投資家の参加によって伝統的金融と地続きになったことの裏返しでもある。短期的には原油高による売り圧力に晒されながらも、長期的な視座で見れば、分散投資先としての役割を無視できる存在ではなくなっている。

地政学リスクが高まると従来型の安全資産である金に資金が向かう一方で、ビットコインが中長期的にどこまでそれに追随できるかは、今後の大きなテーマだ。少なくとも当面は、WTI原油75ドル台という数字と61,000ドルの攻防から目が離せない展開が続く。

この記事のポイント

  • 米イラン停戦協議の決裂とホルムズ海峡封鎖懸念でWTI原油が75ドル台に急騰した
  • ビットコインは62,000ドルを割り込み、61,000ドルのサポートラインが焦点となっている
  • FRBの9月利上げ観測が浮上し、2026年中の利上げ確率は55%に達している
  • 暗号資産は地政学リスクに対して安全資産として機能せず、リスク資産として売られる傾向が強まっている
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