NYSEとBlockchain.comが提携、トークン化米国株を暗号資産ユーザーに提供へ

ニューヨーク証券取引所(NYSE)とBlockchain.comが提携を発表し、暗号資産ユーザーがトークン化された米国株を取引できる道が開けた。SECが2026年9月17日に導入した新しい免除制度を活用した動きで、伝統的な株式市場とデジタル資産の融合が一段と進む。

この提携は、規制当局が現実世界の資産をブロックチェーン上に載せる流れを認めたことを示すものだ。単なる技術実証ではなく、既存の金融インフラが暗号資産市場を取り込み始めたという意味で、重要な節目といえる。

NYSEとBlockchain.comの提携内容

NYSEとBlockchain.comの提携内容

今回の提携は、Blockchain.comのプラットフォーム上でトークン化された米国株へのアクセスを提供するものだ。暗号資産ユーザーは、ビットコインやイーサリアムと同じウォレット環境から、株式を表すデジタルトークンに触れることができるようになる。

Blockchain.comは、世界的に利用される暗号資産ウォレットと取引所を運営する企業だ。ビットコイン取引の初期から市場を支えてきた実績があり、個人投資家の利用者数は多い。NYSEは世界最大級の証券取引所であり、この両者の組み合わせは市場の関心を集めている。

トークン化とは、現実の資産をブロックチェーン上で発行されるデジタル表現に変換することだ。株式であれば、1株に対応するトークンが作られ、そのトークンを保有することで従来の株主と同様の経済的価値を受け取れる。取引はブロックチェーン上で記録され、24時間365日の決済が可能になる。

提携の発表は、SECが新しい免除制度を公表してから1週間足らずのタイミングで行われた。規制上の根拠が整った直後に、大手金融機関と暗号資産企業の連携が動き出した格好だ。制度設計のスピード感が市場の期待を反映している。

SECが設けたイノベーション免除の仕組み

SECが設けたイノベーション免除の仕組み

SECは2026年9月17日、トークン化証券の取引を一定条件下で認める「イノベーション免除」を導入した。期間は5年間で、適格なトークン化証券取引所は、証券取引所として規制されることなく、許可型のAMM(自動マーケットメイカー)流動性プールを利用して取引を促進できる。

許可型AMM流動性プールとは

AMMとは、注文帳の代わりに流動性プールを使って売買を成立させる仕組みだ。利用者はプールに資金を預け、そのプールとの間でトークンを交換する。従来の取引所と異なり、買い手と売り手を直接マッチングする必要がない。許可型とは、プールに参加できる主体が事前に審査されることを意味する。

つまりこの免除は、規制された参加者だけが使えるAMMを想定している。無制限な分散型取引所ではなく、監督が及ぶ範囲でトークン化証券の取引を認める枠組みだ。これによって透明性と投資家保護を確保しながら、新しい技術の導入を試せることになる。

免除を受けるための条件

免除を受けるには、いくつかの条件がある。なかでも重要なのが、トークン化された株式が、同等の従来の株式と同じ権利と特権を持たなければならない点だ。具体的には、議決権や配当の受け取りなどがこれに含まれる。

規制当局としては、トークン化によって投資家が不利益を被ることを防ぐ意図がある。単なる価格変動へのエクスポージャーではなく、実際の株主と同じ地位を保証することを求めた形だ。この要件は、トークン化証券の質を左右する基準になる。

既存のトークン化株式商品が対象外になる理由

既存のトークン化株式商品が対象外になる理由

新しい免除制度の下では、既存の一部商品が現行形式のままでは対象外となる。KrakenのxStocksとRobinhoodのStock Tokensがその例だ。これらは原株への価格連動を提供するものの、保有者に従来の株主と同じ権利を与えていない。

KrakenとRobinhoodの既存商品

KrakenのxStocksは、暗号資産取引所で米国株などの価格に連動する資産を取引できるサービスだ。RobinhoodのStock Tokensも同様に、株式を裏付けとするデジタル資産を提供してきた。利用者は株式そのものではなく、その価格に連動する資産を保有する。

この仕組みは、取引の手軽さでは優れる一方、議決権や配当を受け取る権利はない。SECが示した「同等の権利と特権」の要件に照らすと、新しい免除の対象にはならない。現行形式のままでは、規制上の優位性を得られない状況だ。

同等の権利要件が意味すること

SECの要件は、トークン化株式の質を引き上げる方向に働く。価格だけを追いかける商品から、実際の株主権を備えた商品へと移行を促すため、既存のサービスは設計変更を迫られる可能性がある。これは市場の再編を促す要因になる。

一方で、この要件は新しい参入者にとって明確な基準になる。NYSEとBlockchain.comのように、最初から権利を担保した設計でサービスを始めれば、規制上の不確実性を避けられる。結果として、制度に適合したサービスが市場の主導権を握る可能性が高い。

市場への影響と今後の展望

市場への影響と今後の展望

SEC委員のヘスター・パース氏は、今回の免除がトークン化証券の特定のモデルを対象としている一方で、枠組み外の他のアプローチの可能性も残されていると述べている。規制当局がすべてを固定したわけではなく、今後の技術革新にも余地を残した格好だ。

パース委員の示唆

パース氏は、暗号資産に対して比較的寛容な立場で知られるSEC委員だ。今回の発言は、現在の免除制度が唯一の解ではなく、別のモデルも認められる可能性があることを示唆している。事業者にとっては、許可型AMM以外の設計を追求する選択肢も閉ざされていないということになる。

この発言は、規制の柔軟性を求める業界にとって前向きなシグナルだ。SECが最初から硬直的なルールを敷くのではなく、市場の反応を見ながら制度を進化させる可能性を示している。暗号資産と証券の境界をめぐる議論は、今後さらに活発になるだろう。

伝統金融と暗号資産の融合

NYSEという世界的な証券取引所が暗号資産企業と組んだ事実は、トークン化市場の成熟度を物語る。これまで暗号資産業界の外側にあった伝統的な金融インフラが、自らこの分野に足を踏み入れる段階に入った。市場参加者の裾野はこれまで以上に広がる。

投資家の視点では、資産の持ち方が変わる可能性がある。暗号資産口座と証券口座の境界が曖昧になり、一つのウォレットでさまざまな資産を管理できるようになる。規制の整備がその流れを後押ししており、利便性と透明性の両立が今後問われる。

ただし、課題も残る。同等の権利を担保するためには、発行体が従来の株式と同じ情報提供やコーポレートアクションに対応する必要がある。制度の細部が固まるにつれて、対応できる事業者とそうでない事業者の差が広がるだろう。競争は技術力だけでなく、コンプライアンス対応力でも進むことになる。

トークン化された現実資産(RWA)市場は、ここ数年で注目度を高めてきた。株式、債券、不動産など、従来は流動性が低かった資産をブロックチェーン上で取引できるようにする動きは、金融のあり方を変える可能性を秘めている。今回のNYSEとBlockchain.comの提携は、その流れを象徴する出来事といえる。

この記事のポイント

  • NYSEとBlockchain.comが提携し、暗号資産ユーザーにトークン化米国株を提供する
  • SECが2026年9月17日に導入したイノベーション免除が規制上の根拠になる
  • 免除の条件は、トークン化株式が従来の株式と同等の権利を持つこと
  • KrakenやRobinhoodの既存商品は現行形式では対象外
  • 伝統金融と暗号資産の融合が制度面から加速する
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