Janus HendersonがNasdaq-100連動ファンドをStellarで開始、初のライセンス付きトークン化

大手資産運用会社Janus Hendersonが、米国株の代表的な指数であるNasdaq-100指数に連動するファンドをブロックチェーン上で発行した。トークン化基盤を手がけるCentrifugeと組み、Stellarブロックチェーン上で「JQQQ」という名称のファンドをローンチした。

このファンドは、Janus Hendersonが自ら発行・運用する「発行体支援型」と呼ばれる形式を採用している。サードパーティが株式を勝手にトークン化する従来の手法とは一線を画すもので、Nasdaqが指数のライセンスを正式に提供している点も特徴だ。

伝統金融の世界では、米国債やマネーマーケットファンドのトークン化が先行してきた。今回のJQQQは、その流れを株式市場の商品にまで広げる転換点となる。発行体が主体的に関与するモデルが、規制当局や投資家にどのように受け止められるかが今後の焦点となる。

JQQQとは何か、Nasdaq-100をStellarで運用する仕組み

JQQQとは何か、Nasdaq-100をStellarで運用する仕組み

発行体が主導する初のライセンス付きファンド

JQQQは、Nasdaq-100指数に連動するよう設計されたトークン化ファンドだ。Nasdaq-100には、NvidiaやApple、Microsoftといった米国の大手テクノロジー企業が含まれている。投資家はこのファンドを通じて、米国株の主要銘柄にまとめてアクセスできる。

仕組みは3層に分かれる。ファンドを発行し運用するのがJanus Henderson、ブロックチェーン上のインフラを提供するのがCentrifuge、そして指数のライセンスを供与するのがNasdaqだ。この3社の役割分担により、既存の金融商品と同じ信頼性をブロックチェーン上で再現しようとしている。

Janus Hendersonはロンドンを拠点とし、およそ5000億ドル(約75兆円)の資産を運用する大手だ。同社のオンチェーン投資プラットフォームには、米国債や仕組債、株式を合わせてすでに10億ドル超の資産が乗っている。JQQQはその規模をさらに拡大する一手となる。

昨年のSPXAに続く第2弾

JQQQは、同様のオンチェーン指数ファンドとしては2例目にあたる。2025年9月、CentrifugeはCoinbaseのBaseネットワーク上で「Janus Henderson Anemoy S&P 500 Fund(SPXA)」をローンチした。S&P Dow Jones Indicesからライセンスを受けた初のトークン化指数ファンドだった。

SPXAがS&P 500指数を追跡するのに対し、JQQQはNasdaq-100指数を追跡する。指数提供元もブロックチェーンも異なるが、発行体支援型という基本設計は共通している。つまり、実績のある運用会社が主導権を握り、ブロックチェーン企業が技術を支える形だ。

このモデルは、投資家保護の観点から重要だ。誰が発行したのかが明確で、指数の使用許諾も正規に取得しているため、規制面での不確実性が低い。だからこそ機関投資家も参加しやすくなる。

発行体支援型と第三者のストックトークン、何が違うのか

発行体支援型と第三者のストックトークン、何が違うのか

OKX-ICE計画に反対する22社

トークン化をめぐる議論の中心にあるのが、発行体支援型と第三者のストックトークンの違いだ。報道によれば、最近では22社がOKX-ICEという取引所計画に反対を表明した。自社の株式が許可なくブロックチェーン上で取引されることに異議を唱えた形だ。Wells FargoやCisco、Marvellなどが含まれていたという。

この対立は、株をトークン化する際に「誰の許可が必要か」という根本的な問題を浮き彫りにする。発行体支援型では、Janus Hendersonが明示的にファンドを発行し、Nasdaqが指数利用を認めている。いわば全員が合意した上で商品が生まれる。

一方、第三者のストックトークンは、裏付けとなる株式をカストディに預けていたり、株価に連動する別の金融商品として構成されていたりする。投資家は実際の株式を保有するわけではなく、株主としての権利も得られない。企業側から見れば、自社の名前が勝手に使われていることになる。

投資家の権利をどう守るか

JQQQが採用する発行体支援型モデルは、この問題に対する1つの回答だ。ファンドを設計したのはJanus Hendersonであり、投資家は同社の運用ノウハウとコンプライアンス体制の恩恵を受ける。ブロックチェーン上で動いていても、中身は伝統的な投資信託に近い。

Centrifugeのチーフ・ストラテジー&グロース・オフィサーであるAnil Sood氏は、トークン化の価値について「投資家が保有したい資産が、オンチェーン金融システムの構成要素にもなるとき、トークン化ははるかに強力になる」と述べた。単なるデジタルコピーではなく、ブロックチェーン上の経済活動に組み込めることが本質だという指摘だ。

この考え方は、今後のトークン化競争の方向性を示している。単に株価を模倣するだけの商品ではなく、担保に使えたり、別の金融アプリに移動できたりする「生きた資産」を目指すべきだというメッセージだ。

トークン化の最前線、ウォール街の次の一手

トークン化の最前線、ウォール街の次の一手

債券から株式へ、3つのステップ

伝統資産のトークン化は、大きく3段階で進んできた。第1段階は米国債だ。第2段階はマネーマーケットファンドとプライベートクレジット。そして今回のJQQQで第3段階の株式市場商品に到達した。

米国債のトークン化は、安定した利回りと高い流動性から機関投資家に受け入れられ、短期間で市場が拡大した。マネーマーケットファンドも同様に、現金管理の効率化という明確な需要があった。株式市場はこれらより複雑だ。指数ライセンス、発行体の承認、投資家保護など、乗り越えるべきハードルが多い。

JQQQはそのすべてをクリアしたからこそ、象徴的な意味を持つ。ウォール街がトークン化の対象を、扱いやすい債券から本丸の株式へと広げ始めた証拠だからだ。他の大手運用会社も追随を検討しているとの見方がある。

ナスダックの本気度

Nasdaqのインデックス製品管理責任者であるSean Wasserman氏は、公式コメントで「投資家がデジタル基盤を通じて市場にアクセスする新しい方法を模索する中、確立された透明性の高いベンチマークへの需要は伸び続けている」と述べた。指数を提供する側として、この分野への積極的な関与を示した形だ。

これは大きな意味を持つ。指数プロバイダーが正式にトークン化商品へのライセンス供与を認めることで、他の運用会社も参入しやすくなる。NasdaqやS&Pといった指数ブランドの信頼性が、ブロックチェーン商品の信頼性を下支えする構図だ。

これまで「ブロックチェーン上の株式トークン」と聞くと、どうしてもグレーな印象がつきまとった。だが指数プロバイダーと大手運用会社が正式に関与することで、この市場は一気に信頼できる領域へと変わりつつある。

JQQQが開く新たな投資の選択肢と残る課題

JQQQが開く新たな投資の選択肢と残る課題

投資家が得られるもの

JQQQのような発行体支援型ファンドが普及すると、投資家には具体的なメリットが出てくる。まず、ファンドの裏付けや運用責任者が明確になるため、安心して投資できる。次に、トークン化された資産を担保に融資を受けたり、ブロックチェーン上の他の金融アプリに移動したりする可能性が開ける。

ただし、こうした応用は規制要件やプラットフォームの対応状況に左右される。現時点ではまだ限定的だが、CentrifugeのSood氏が指摘したように、資産が「構成要素」として機能するようになれば、トークン化の価値は飛躍的に高まる。

従来の投資信託では、保有中にできることは価格の上昇と分配金の受け取りくらいだ。だがブロックチェーン上のファンドなら、保有資産をそのまま別のプロトコルで活用できる。これは投資の概念を変える可能性を秘めている。

残る規制の壁と今後の展望

とはいえ、課題が消えたわけではない。株式市場のトークン化は、証券規制との整合性が最大の論点だ。米SEC(証券取引委員会)がどのような立場を取るかで、市場の成長速度は大きく変わる。特に第三者のストックトークンに対する規制強化は、発行体支援型の追い風になるとの見方がある。

また、Stellarブロックチェーンの採用も注目点だ。EthereumやSolanaと比べて金融分野に特化したネットワークであり、発行体が選ぶ理由があったと推測される。今後、他のブロックチェーンでも同様のファンドが登場する可能性は高い。

筆者としては、この動きは単なるニュースではないと考える。トークン化市場が「誰が発行するのか」を問う段階に入ったからだ。発行体が責任を持ち、指数プロバイダーが承認し、ブロックチェーンが動かす。この3点セットが揃った商品のみが、長期的に生き残るだろう。2026年後半から2027年にかけて、このモデルが業界標準になるかどうかが試金石となる。

この記事のポイント

  • Janus HendersonとCentrifugeがStellar上でNasdaq-100連動ファンド「JQQQ」を開始した
  • 発行体支援型モデルを採用し、Nasdaqが指数を正式にライセンスしている
  • 第三者のストックトークンとは異なり、発行者の責任と投資家保護が明確だ
  • トークン化の対象が米国債から株式市場商品へと拡大した転換点である
  • 規制対応と他ブロックチェーンへの展開が今後の焦点となる
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