米財務省が10月28日、北朝鮮のITワーカー計画に関与したとして、ロシア人2人を含む10個人と1団体を制裁対象に追加した。
制裁対象者は外国企業から得た給与を暗号資産に換え、北朝鮮政府の兵器開発資金に流していた疑いが持たれている。
北朝鮮は偽装就職で得た収入を兵器開発に充てており、今回の措置は資金源を断つ狙いがある。
制裁の概要、ロシア人2人と北朝鮮関連組織が対象

米財務省の外国資産管理局(OFAC)は10月28日、10個人と1団体を制裁リストに追加したと発表した。対象にはロシア国籍のイリヤ・ボイコフ氏とヴィトルト・オベルタス氏が含まれる。OFACは米国の制裁を執行する財務省の機関で、制裁対象との取引を米国人や金融機関に禁じる権限を持つ。
ボイコフ氏は、2024年3月に制裁を受けた北朝鮮ITワーカー関連企業「アリス」のために、約350万ドル相当の暗号資産を交換・換金したとされている。オベルタス氏は2025年1月以降、北朝鮮当局者のために約200万ドル相当の暗号資産換金と、少なくとも125万ドルのその他通貨取引を行ったと指摘されている。
制裁対象の詳細
制裁対象には、北朝鮮が管理するロシア国内組織「First Financial and Technical Development Center」も含まれる。米財務省によると、この組織の6人の労働者は2025年以降、組織に75万ドル以上をもたらしたという。
8つの暗号資産アドレスを指定
OFACの指定通知には、イーサリアムとトロン上の8つの暗号資産アドレスが記載された。制裁対象の個人に関連するアドレスを公表することで、取引所や金融機関が不審な資金の流れを監視しやすくなる。
北朝鮮ITワーカー計画の手口と資金の流れ
北朝鮮のITワーカー計画は、国外のIT企業に偽装就職し、給与を北朝鮮政府の収入にする仕組みだ。労働者は盗んだ身分証明書や偽造書類を使って正社員として雇われる。企業側は正規のリモート従業員だと思って採用するが、実際には北朝鮮の工作員であることが多い。
リスクは給与の不正送金だけではない。米財務省は、北朝鮮ITワーカーが企業ネットワークへのアクセスを利用してマルウェアを仕込み、機密データや知財情報を盗み出す事例があると指摘する。
給与の大半が北朝鮮政府へ
北朝鮮は労働者の給与の大半を徴収している。通常のIT開発業務への支払いを、国家収入に変える構図だ。これが兵器開発の資金源になっていると米国は見ている。
暗号資産の換金経路
ブロックチェーン分析企業チェイナリシスの追跡によると、北朝鮮ITワーカーが得た暗号資産はボイコフ氏に送られ、同氏が制裁対象のロシア取引所ガランテックスに送って現金化していた。暗号資産の取引はブロックチェーン上に記録が残るため、資金の流れを追跡できる。
AI悪用とブロックチェーン追跡が浮き彫りに

チェイナリシスは、北朝鮮ITワーカーが生成AIを使って履歴書やカバーレターを作成し、技術面接の準備をしていると報告している。生成AIとは、文章や画像を自動で作り出す人工知能技術のことだ。
採用面接では、AIが生成したプロフィール写真やディープフェイク動画が身元を隠すために使われたケースもあるという。ディープフェイクは、AIで顔や声を本物そっくりに合成する技術を指す。
AIが偽装採用を高度化
従来の偽装就職は書類の偽造が中心だった。しかし生成AIの登場で、履歴書の文章や面接での受け答えまで本物らしく整えられるようになった。企業の採用担当者が見破るのは難しくなっている。
チェイナリシスの役割
チェイナリシスはブロックチェーン上の取引を分析する企業だ。暗号資産の送金履歴は誰でも閲覧できる台帳に記録される。チェイナリシスはこの特性を利用し、北朝鮮ITワーカーと制裁対象者のつながりを明らかにした。
繰り返される制裁、企業への教訓

米財務省は2026年3月にも、北朝鮮向けに800万ドルの暗号資産を洗浄したとして、6人と2社を制裁している。今回の措置は一連の取り締まりの延長線上にある。
制裁対象者が利用する暗号資産アドレスが公開され、取引所や金融機関の監視が強化される。一方で北朝鮮は手口を進化させており、AI技術の悪用が新たな課題として浮かび上がっている。
制裁の実効性と課題
制裁は資金の流れを断つ一定の抑止力になる。ただし北朝鮮は制裁を回避するため、偽装身元や新しい換金経路を次々と生み出している。いたちごっこが続いているのが実情だ。
企業が取るべき対策
リモート採用を行う企業は、身元確認の強化、面接時の本人確認、採用後のデバイス監視などが求められる。特に海外のフリーランスを雇う際は、不自然な送金先や勤務状況の変化を見逃さない態勢が重要になる。
この記事のポイント
- 米財務省が北朝鮮ITワーカー計画でロシア人2人を含む10個人と1団体を制裁
- ロシア人2人は合計約550万ドル相当の暗号資産を換金した疑い
- 北朝鮮は給与の大半を兵器開発資金に充てている
- チェイナリシスが生成AIやディープフェイクによる偽装採用の実態を報告
- イーサリアムとトロン上の8つの暗号資産アドレスが指定された

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
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