Aave、Kelp DAO不正流出で1.6億ドル調達──DeFi UnitedでrsETH再建へ

主要レンディングプロトコルAaveが2026年最大のDeFiハッキングによる不良債権を埋めるため、約1億6000万ドル(約200億円超)を調達した。ブロックチェーン分析企業Arkhamが26日、明らかにした。

これは目標額の約2億ドルに対し、およそ8割に達する資金だ。Kelp DAOへの攻撃で生じた損失を業界全体で穴埋めしようとする大規模な再建計画が、急速に進んでいることを示している。

Kelp DAOエクスプロイト、Aaveに波及した不良債権

Kelp DAOエクスプロイト、Aaveに波及した不良債権

一連の騒動の発端は、イーサリアムのリキッドステーキングプロトコル「Kelp DAO」が受けた2億9200万ドル規模の不正流出だ。

攻撃者はLayerZeroとの統合部分に存在した脆弱性を突き、担保の裏付けがないrsETHトークンを11万6500枚も不正に発行した。rsETHとは、Kelp DAOが発行するイーサリアムの利回り付き派生トークンだ。預けたETHの代替資産として機能し、Aaveをはじめとするレンディングプロトコルで担保に使える。

つまり、実体のないトークンがAave上で本物の担保として扱われてしまったわけだ。これによりAaveは多額の不良債権を抱え、貸し手の預金引き出しが殺到。総額100億ドル(約14兆円超)もの資金が一気に流出する取り付け騒ぎに発展した。

「DeFi United」結成、業界横断の救済策が始動

「DeFi United」結成、業界横断の救済策が始動

この危機を受け、Aaveのサービスプロバイダーが主導する形で「DeFi United」と呼ばれる復旧チームが立ち上がった。目的は明白だ。攻撃の中心となったrsETHトークンの価値を再建し、システム全体を安定させること。単なる損失補填ではなく、トークンの再資本化によって市場の信認を取り戻そうとする試みである。

調達額の内訳、大口支援者がけん引

Arkhamの投稿によれば、最大の資金拠出元はMantleとAave DAOだ。この2組織だけで5万5000ETH、当時のレートで約1億2700万ドルを拠出した。イーサリアムは現在約2,300ドル付近で推移している。

これに加え、Aaveの創業者スタニ・クレチョフ氏も個人として5000ETH(約1173万ドル相当)を投じている。同氏は「パートナーと協力しながら、DeFi Unitedに個人的に5000ETHを拠出する」とコメントした。

TVL急減の裏側、実態はレバレッジ解消

表面上の数字だけを見ると、2億9200万ドルの流出と130億ドル(約1.8兆円超)のTVL(預かり資産総額)減少は壊滅的に映る。だが実態はやや異なる。TVL急減の大部分は、過剰に積み上がっていたレバレッジポジションが解消された結果であり、実際の資本がすべて蒸発したわけではない。

週末には、Aaveから資金を移したユーザーの受け皿としてSparkのTVLが18億ドルから29億ドルへ急増した。資金はDeFiエコシステムの外に逃げたのではなく、別のプロトコルへ一時的に避難した格好だ。

過去の巨大ハッキングと比較する

過去の巨大ハッキングと比較する

DeFiの歴史を振り返ると、より大規模なハッキング事例は存在する。2022年3月にはRonin Networkから約6億2000万ドルが流出し、同2月にはWormholeで約3億2600万ドルが不正取得された。

いずれも被害額は今回を上回るが、当時は業界全体での協調救済という発想はまだ一般的ではなかった。今回のDeFi Unitedによる取り組みは、業界の成熟度が一段階上がったことを示す動きとも受け取れる。

なお今年3月末には、Solana上のDrift Protocolから少なくとも2億7000万ドルが流出する事件も起きている。こちらはコードのバグや秘密鍵の漏洩ではなく、「耐久性のあるノンス(durable nonces)」という正規の機能を悪用された点が特徴的だ。

Aaveは危機を乗り越えられるか

Aaveは危機を乗り越えられるか

残る4000万ドル(約55億円超)の不足分について、追加の拠出表明があるかどうかが焦点となる。すでに目標の8割を集めている点を踏まえれば、全額調達は十分に現実的との見方が多い。

Aaveのブランド力とコミュニティの結束力が、今回の危機対応で改めて浮き彫りになった。同時に、クロスチェーンプロトコル間の依存関係が想定以上に深まっていることも露呈している。LayerZeroとの統合部分を突かれた今回の手口は、マルチチェーン時代のDeFiが抱える構造的リスクを改めて突きつけた。

DeFi Unitedの取り組みが成功すれば、今後の業界標準となり得る。プロトコル間の相互依存が強まるほど、こうした協調救済の枠組みがリスク管理の新たな層として機能する余地は大きい。

この記事のポイント

  • AaveがKelp DAOエクスプロイトによる不良債権2億ドルのうち、約1.6億ドルを業界横断チーム「DeFi United」で調達
  • 大口拠出はMantleとAave DAO、創業者クレチョフ氏も個人で約1173万ドルを投じた
  • TVLは130億ドル減少したが、多くはレバレッジ解消によるもので実際の資本流出は限定的
  • 協調救済の成否は今後のDeFi業界におけるリスク管理体制の試金石となる
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