オーストラリアが初の包括的な暗号資産規制法を成立させた。暗号資産取引所やカストディ事業者は、オーストラリア金融サービスライセンスの取得が義務付けられる。同国は、年間最大240億豪ドルと試算されるデジタル金融の機会を捉えるための地盤を整えた。
包括規制法の骨子 二つの新規制カテゴリー

オーストラリア議会は4月1日、暗号資産に関する初の包括的な規制枠組みとなる法案を可決した。この法律は、暗号資産そのものではなく、顧客資産を管理する中間事業者を規制対象とする。
具体的には、企業法の下に二つの新たな規制カテゴリーを創設する。一つは「デジタル資産プラットフォーム」だ。これはユーザーに代わって暗号資産を保有する事業者を指す。一般的な暗号資産取引所がこれに該当する。
もう一つは「トークン化カストディプラットフォーム」だ。これは現実世界の資産を保有し、それに対応するデジタルトークンを発行する事業者を指す。不動産や債券などの資産をトークン化するサービスが想定される。
ライセンス取得とASICの監督
これらのカテゴリーに該当する事業者は、オーストラリア証券投資委員会から金融サービスライセンスを取得しなければならない。これにより、暗号資産事業者は証券会社やファンドマネージャーと同様のコアルールの下に置かれることになる。
適用されるルールには、顧客資産の保護、標準化された開示の提供、誤解を招く行為の回避、紛争解決および補償システムの維持などが含まれる。過去の暗号資産業界の失敗で問題となった、顧客資産の混合や流用、倒産時のリスクを低減することが政策立案者の目的だ。
規制の狙いと業界の反応
取引所大手Krakenの広報担当者は、この法律がオーストラリアがデジタル資産に本気であるという「トップダウンのシグナル」を提供すると述べた。より明確なルールは、企業が現地で投資と事業拡大を行う自信を与えると付け加えた。
OKX AustraliaのCEOであり、Digital Economy Council of Australiaの共同議長も務めるKate Cooper氏は、この法案を「決定的な瞬間」と呼んだ。同氏は、これが機関投資家の参加と長期的な資本配分のための基盤を確立すると述べている。
240億豪ドルの経済機会と従来の課題

Digital Finance Cooperative Research Centerや業界団体の調査によると、オーストラリアはトークン化市場、決済、デジタル資産から年間最大240億豪ドルを生み出す可能性がある。これはGDPの約1%に相当する規模だ。
しかし、従来の規制の道筋の下では、同国は2030年までにそのうちの10億豪ドルしか獲得できない見通しだった。今回の包括規制は、この大きな機会を捉えるための制度的な障壁を取り除くことを意図している。
国際的な規制競争の文脈
オーストラリアの動きは、シンガポール、EU、英国など、主要金融センターが相次いで暗号資産の包括的な規制枠組みを整備する国際的な流れの一環だ。各国は、金融安定性の確保とイノベーション促進のバランスを模索している。
特に、顧客資産の保護に関する明確なルールは、FTXなどの大規模な破綻事件を受けて、世界中の規制当局が優先的に取り組む課題となっていた。オーストラリアの新法は、この点に直接応える内容となっている。
香港の安定コイン規制遅延との対比

一方、アジアの金融ハブである香港では、独自の規制スケジュールに遅れが生じている。香港金融管理局は、香港ドル建て安定コイン発行体へのライセンス発行について、自己設定した3月の期限を達成できなかった。
当局者は3月に最初の承認が行われると示唆していたが、現時点でいかなる申請も承認されておらず、更新されたタイムラインも公表されていない。この遅延は、香港の安定コイン規制枠組みがどの程度迅速に実現するかについて疑問を投げかけている。
規制アプローチの違い
オーストラリアが取引所やカストディ事業者といった「事業者」を規制の中心に据えたのに対し、香港は「安定コイン」という特定の資産クラスに焦点を当てた規制を進めようとしている。これは、規制哲学の違いを反映している。
オーストラリアのアプローチは、既存の金融サービス規制の延長線上に暗号資産業界を位置づけ、既存の監督機関であるASICの権限を拡大するものだ。これにより、規制当局はなじみのあるフレームワークを使って業界を監督できる。
今後の展開と市場への影響

新法の成立を受けて、既存の暗号資産事業者はASICによるライセンス申請プロセスを開始することになる。移行期間に関する詳細は今後明らかになる見込みだ。事業者は、コンプライアンス体制の構築やシステムの改修に取り組む必要が生じる。
市場のクリーンアップと信頼性向上
規制が明確になることで、オーストラリア市場からはコンプライアンス基準を満たせない小規模事業者や信頼性の低い事業者が退出する可能性がある。短期的にはサービスの選択肢が減るように見えるが、長期的には市場全体の信頼性と健全性が高まるとの見方がある。
機関投資家や伝統的な金融機関が、明確なルールの下で暗号資産関連商品やサービスに参入しやすくなる。これが、試算されている240億豪ドルの経済機会を現実化する鍵となる。
プライバシー技術との関係性
CoinDesk Researchの別の報告書は、ブロックチェーンのデータが増大するにつれて、多くの暗号資産のプライバシーモデルが弱体化していると指摘する。ただし、Zcashのような暗号化ベースのモデルは強固さを増すという。
規制が顧客識別と取引監視を要求する中で、プライバシーを重視する技術やプロジェクトがどのように対応するかは、今後の注目点の一つだ。AI能力が向上するにつれて、匿名化ベースのプライバシーアプローチの耐久性が問われることになる。
この記事のポイント
- オーストラリアは暗号資産取引所・カストディ事業者に金融サービスライセンス取得を義務付ける包括規制法を成立させた。
- 規制対象は「デジタル資産プラットフォーム」と「トークン化カストディプラットフォーム」の二つの新カテゴリーに分けられる。
- 顧客資産の保護や適切な開示が義務化され、過去の業界失敗の教訓が反映されている。
- 規制明確化により、年間最大240億豪ドルと試算されるデジタル金融の経済機会獲得を目指す。
- 業界からは前向きな反応があり、香港など他地域の規制動向との違いも浮き彫りになった。

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
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