ビットコイン2018年以来の5カ月連続下落へ、ETF流出38億ドルと地政学リスクが直撃

ビットコイン(BTC)が、2018年から2019年にかけての弱気相場以来となる、5カ月連続の月足下落を記録する見通しとなった。2026年2月末時点の価格は約64,000ドル付近で推移しており、月間では約20%の下落を記録している。年初からの50日間としても過去最悪のパフォーマンスであり、市場には強い警戒感が広がっている。この異例の続落は、現物ETF(上場投資信託)からの巨額の資金流出と、緊迫化する地政学リスクが複雑に絡み合った結果だ。本記事では、この「負の連鎖」の背景にある構造的な変化と、今後の価格動向を左右する重要な指標を深掘りする。

2018年以来の「負の連鎖」——ビットコイン市場を襲う5カ月連続の続落

2018年以来の「負の連鎖」——ビットコイン市場を襲う5カ月連続の続落
ビットコイン市場は現在、極めて稀な長期の下落トレンドに飲み込まれている。月足で5カ月連続の陰線を引くのは、仮想通貨の冬と呼ばれた2018年のベアマーケット以来、約7年ぶりの事態だ。

過去最悪の年初50日間を記録

2026年の幕開けは、ビットコインにとって歴史的な苦境となった。年初から50日間の騰落率は、ビットコインの歴史の中で最も低い数字を記録している。通常、1月や2月は「アノマリー」として上昇しやすい傾向にある。しかし、今回は史上初となる「1月・2月連続の下落」という不名誉な記録も更新しようとしている。最高値からの下落率(ドローダウン)は52%に達しており、投資家心理を冷え込ませている。ドローダウンとは、ある一定期間における最高値から最安値までの下落幅を指す。この数字が大きいほど、市場のパニックが深刻であることを意味する。

ゴールドや米株との相関性の変化

今回の下落で特筆すべきは、他の資産クラスとの乖離だ。伝統的な安全資産であるゴールド(金)が堅調に推移する一方で、ビットコインは大きく値を下げている。ビットコイン対ゴールドの比率は、過去14カ月で70%も低下した。これは、投資家がビットコインを「デジタル・ゴールド(価値の保存手段)」としてではなく、依然として景気に左右されやすい「リスク資産」として扱っていることを示唆している。また、米国の主要株価指数であるナスダックとの相関性も不安定だ。2月初旬には「逆相関(株が上がればビットコインが下がる)」の状態にあったが、中旬には「正相関(同じ方向に動く)」へと急変した。この不安定さは、市場がビットコインの適正な役割を見失っている証拠だとの見方がある。

38億ドルのETF流出とマクロ経済の三重苦

38億ドルのETF流出とマクロ経済の三重苦
価格を押し下げている直接的な要因の一つが、米国の現物ビットコインETFからの資金流出だ。投資家の期待を一心に背負って承認されたETFが、現在は売り圧力の源泉となっている。

現物ETFからの資金引き揚げが加速

直近5週間で、現物ビットコインETFからは合計38億ドル(約5,700億円)もの資金が流出した。機関投資家や個人投資家が、ポートフォリオのリスクを軽減するためにビットコインを売却している実態が浮き彫りになっている。ETFとは、証券取引所に上場している投資信託のことだ。ビットコインを直接購入しなくても、証券口座を通じて投資できるため、大口の資金が動きやすい特徴がある。この出口戦略が加速したことで、市場の流動性が奪われている。

ドル高・原油高と地政学リスクの直撃

マクロ経済環境もビットコインには逆風だ。中東情勢の緊迫化、特にイランとイスラエルを巡る衝突が市場に影を落としている。地政学的な緊張が高まると、投資家は現金(米ドル)やエネルギー資源(原油)に資金を移す傾向がある。実際に米ドル指数(DXY)と原油価格は上昇しており、相対的にビットコインのようなボラティリティ(価格変動)の激しい資産は売られやすくなっている。

米連邦準備制度理事会(FRB)が早期の利下げに慎重な姿勢を崩していないことも、買い控えの一因だ。金利が高い状態が続くと、利息を生まないビットコインを保有するメリットが薄れるため、資金が債権などに流れてしまうからだ。

「構造的なレジームシフト」か「ベアマーケットの入り口」か

「構造的なレジームシフト」か「ベアマーケットの入り口」か
現在の市場状況について、専門家の間では解釈が真っ向から対立している。単なる一時的な調整なのか、それとも市場の前提条件が変わる「構造的な変化」なのかが議論の焦点だ。

マティ・グリーンスパン氏が唱える「再評価」

クアンタム・エコノミクスの創設者であるマティ・グリーンスパン氏は、現在の動きを「構造的なレジームシフト(体制の転換)の中での再評価」と呼んでいる。同氏によれば、市場は不確実性が高い時代において、リスク資産の価値を根本から見直している最中だという。ビットコインが一時的に株式と異なる動きを見せるのは、将来的に「国家に依存しないヘッジ資産」として独立するための準備期間であるという、強気な見解を示している。

ジョナタン・ランディン氏が警告する80%下落の可能性

一方で、PrimeXBTのシニアアナリスト、ジョナタン・ランディン氏はより慎重な姿勢を崩さない。同氏は、現在の52%という下落幅はまだ「通過点」に過ぎない可能性を指摘している。過去の本格的な弱気相場では、ビットコインは最高値から80%以上の暴落を経験してきた。その歴史に照らせば、現在の調整はまだ半分程度であり、さらに30%から40%の追加下落があっても不思議ではないという。ランディン氏は、ビットコインが再び上昇に転じるためには、少なくとも68,000ドルから72,000ドルの抵抗帯(レジスタンスライン)を明確に上抜ける必要があると分析している。

テクニカル指標とオンチェーンデータが示す「底打ち」の兆候

テクニカル指標とオンチェーンデータが示す「底打ち」の兆候
価格の低迷が続く一方で、一部のデータには反転の兆し、あるいは「売られすぎ」の状態を示すシグナルが出始めている。

RSI(相対力指数)が過去最低水準に

週足のRSI(相対力指数)は、ビットコインの歴史の中で最も低い水準にまで落ち込んでいる。RSIとは、市場の「買われすぎ」や「売られすぎ」を判断するための指標だ。例えるなら、RSIは「伸び切ったゴム」のようなものだ。極端に低い数値は、市場が過度に悲観的になり、売られすぎていることを意味する。過去のサイクルでは、RSIがここまで低下した後は、強力な反発が起こるケースが多かった。

クジラによる37万BTCの蓄積行動

オンチェーンデータ(ブロックチェーン上の取引記録)からは、興味深い動きが観察されている。12月下旬以降、いわゆる「クジラ(大口投資家)」のアドレスが、合計で約37万2,000BTCを蓄積しているのだ。一般の投資家がパニック売りをしている裏で、長期的な視点を持つ大口投資家は、現在の価格を「絶好の買い場」と捉えて買い集めている可能性がある。ただし、過去の弱気相場でも、こうした蓄積行動が見られた後にさらなる暴落が起きた例がある。クジラの動きは「底打ち」の必要条件ではあるが、十分条件ではない点には注意が必要だ。

独自の分析:ビットコインは「デジタル・ゴールド」の試練に立たされている

独自の分析:ビットコインは「デジタル・ゴールド」の試練に立たされている
今回の5カ月連続下落は、ビットコインが真の「デジタル・ゴールド」になれるかどうかの大きな試練だ。これまでビットコインは、有事の際の避難先として期待されてきた。しかし、今回の中東危機において、資金はビットコインではなくゴールドや米ドルに流れた。この事実は、ビットコインがまだ「成熟した資産」とは見なされていない現実を突きつけている。現在の価格下落は、過剰な期待が剥落し、実態に見合った価格へと収束していくプロセスと捉えるべきだろう。しかし、これは決してビットコインの終焉を意味しない。むしろ、ETFからの流出が一巡し、マクロ経済の不透明感が晴れたとき、クジラたちが蓄積した37万BTCが強力な供給不足を引き起こす可能性がある。短期的には58,500ドル付近にある「200週移動平均線」が、最終的な防衛ラインとして機能するかが焦点となるだろう。ここを割り込めば本格的な冬の到来となるが、死守できれば2026年後半に向けた大反転の足場となるはずだ。

この記事のポイント

  • ビットコインは2018年以来となる5カ月連続の下落を記録し、歴史的な弱気トレンドにある。
  • 現物ETFから5週間で38億ドルが流出し、地政学リスクによるドル高・原油高が価格を圧迫している。
  • 最高値から52%下落しているが、過去の例では80%下落の可能性も指摘されており、予断を許さない。
  • 一方で、RSIが過去最低水準にあり、クジラが大口の買い増しを続けているなど、底打ちを示唆するデータも出ている。
  • 当面の重要ラインは58,500ドル(200週移動平均線)と、68,000ドル以上のレジスタンス突破だ。

出典

  • CoinDesk「Bitcoin’s five-month slide: why BTC is set for worst losing streak since 2018」(2026年2月28日)
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