BitMineが73億円相当のETHを追加購入、総保有量は流通量の4.8%に

米上場企業BitMine Immersion Technologies(NYSE: BMNR)が、過去1週間で約42,200ETHを追加購入した。金額にして約7,300万ドル(約73億円)に相当する規模だ。これにより同社のETH総保有量は5,742,237ETHに達し、イーサリアムの流通供給量全体の4.8%を占めるに至った。

同社はFundstratのトム・リー氏が会長を務める、いわば「イーサリアム財務企業」だ。企業のバランスシートに暗号資産を組み込む動きはMicroStrategyのビットコイン戦略が有名だが、BitMineはイーサリアムで同様のアプローチを取っている。今回の追加購入で、同社が掲げる「ETH総供給量の5%支配」という目標が視野に入ってきた。

追加購入の詳細と保有資産の内訳

追加購入の詳細と保有資産の内訳

BitMineが7月26日に自社の公式Xアカウントで公表した保有状況によると、暗号資産およびその他資産の総額は約111億ドルに上る。この中核をなすのがETHポジションであり、1コイン1,800ドル換算で評価されている。

内訳を見ると、ETH以外にも206BTCを保有しているほか、Beast Industriesへの1億8,000万ドルの出資や、Eightco Holdings(NASDAQ: ORBS)への7,100万ドルの出資も確認できる。さらに現金および市場性のある有価証券として5億2,700万ドルを確保しており、流動性にも余裕がある状態だ。

今回の1週間での追加購入額約7,300万ドルは、複数の独立した市場追跡機関が同社の開示情報を基に算出した数字だ。なお、同社自身の開示では週次の購入額が累計と分けて記載されていないため、外部の追跡データが実態を補足する形となっている。

ステーキング量は変わらず、保有増加とのズレ

ステーキング量は変わらず、保有増加とのズレ

注目すべきは、全体のETH保有量が増加しているにもかかわらず、ステーキングに回しているETHの量が4,879,157ETHで前週から変わっていない点だ。

イーサリアムのステーキングとは、ネットワークの検証作業に参加する代わりに報酬を得る仕組みだ。銀行の定期預金に似ており、預けた資産を一定期間動かせない制約がある。その分、年率で数%の利回りが得られる。

BitMineは保有ETHの約85%をすでにステーキングに回している計算になるが、今回の追加購入分についてはステーキングに加えず、流動性のある状態で保持していることになる。この背景には、市場環境を見極めながら柔軟に売却や再配置ができる状態を維持したいという意図があると見られている。

単純計算でいえば、追加購入した約42,200ETHをステーキングに回せば、年間でさらに数百ETH規模の追加収益が見込める。それでもあえてステーキング比率を下げる判断をしたことには、同社のリスク管理姿勢が表れている。

トム・リー会長の戦略的ビジョン

BitMineの会長を務めるトム・リー氏は、ウォール街で著名なストラテジストであり、Fundstrat Global Advisorsの共同創業者として知られる。同氏はこれまで一貫して暗号資産に強気の姿勢を示してきた人物だ。

6月には、同社の資金調達モデルをめぐり内部から「資金不足に陥る可能性がある」との警告が出た際も、リー氏は公の場でこれを否定。「イーサリアムが資金危機に陥る可能性はゼロだ」と断言し、同社の財務戦略への自信を示している。

さらに以前の発言では、暗号資産を「戦時下の価値保存手段(wartime store of value)」と位置づけており、地政学的リスクが高まる時代における企業財務のあり方として、暗号資産の保有に戦略的意義を見出していることがうかがえる。これは単なる投機ではなく、長期的な資産保全の手段としてETHを捉えている姿勢の表れだ。

5%支配という目標が意味するもの

BitMineは「ETH総供給量の5%を支配する」という明確な数値目標を財務戦略の指標として掲げている。現在の4.8%という数字は、この目標まであと0.2ポイントに迫っていることを意味する。

5%という閾値には、どのような意味があるのだろうか。上場企業において、他社の株式を5%以上取得した場合、大量保有報告書の提出が義務付けられる。これは市場の透明性を確保するための制度だが、BitMineの戦略にはそうした制度的なメルクマールとしての意識もあるのかもしれない。

より本質的には、5%という数字は「この市場における無視できないプレイヤーである」という宣言に近い。流通供給量の20分の1を単一の企業が保有するという事実は、イーサリアムの分散性をめぐる議論にも一石を投じる。とはいえ、BitMineの保有はあくまで企業財務としての蓄積であり、プロトコルのガバナンスに影響を及ぼす意図は現時点で示されていない。

同社の株式はニューヨーク証券取引所(NYSE)でティッカーシンボル「BMNR」として取引されている。ETH価格の変動が同社の株式評価にも直接影響を与える構造になっており、投資家にとっては暗号資産市場への間接的なエクスポージャー(投資対象との連動性)を得る手段としても機能している。

企業による暗号資産蓄積の潮流

企業による暗号資産蓄積の潮流

BitMineの動きは、企業がビットコインだけでなくイーサリアムも財務資産として本格的に組み入れ始めたことを示す象徴的な事例だ。ビットコインの蓄積で知られるMicroStrategyの時価総額が急拡大したことは記憶に新しいが、イーサリアム版の「マイクロストラテジー」とでも呼ぶべき存在として、BitMineは注目を集めている。

両者の違いは、単なる対象資産の違いにとどまらない。ビットコインが「デジタルゴールド」としての価値保存に特化しているのに対し、イーサリアムはステーキングによる利回り獲得が可能だ。BitMineが85%ものETHをステーキングに回しているのは、単なる値上がり益だけでなく、保有そのものからキャッシュフローを生み出せる点を重視しているからにほかならない。

このモデルが広がれば、企業の財務戦略における暗号資産の位置づけは「投機対象」から「収益資産」へと進化する可能性がある。とくに金利の低下局面では、年間数%のステーキング報酬が相対的に魅力的に映る。ただし、規制の不確実性や税務上の取り扱いなど、企業が大規模に暗号資産を保有するうえでの課題は依然として残っている。

この記事のポイント

  • BitMineが約7,300万ドル相当の42,200ETHを追加購入し、総保有量は流通供給量の4.8%に到達した
  • ステーキング量は前週から変わらず、追加購入分は流動性を保ったまま保持されている
  • トム・リー会長は一貫してETHの戦略的価値を強調し、「戦時下の価値保存手段」と位置づけている
  • 5%支配という目標達成が目前に迫り、企業によるイーサリアム蓄積の象徴的事例として注目される
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