米国商品先物取引委員会(CFTC)が、予測市場の取引を連邦の監督下に置くための正式な規則づくりに動いた。10月9日、関連する暫定最終規則1本と提案規則1本を公表している。
カジノ型ギャンブルは規制の対象外としつつ、スポーツや政治の結果を取引するイベント契約は連邦規制の枠組みに組み込む方針だ。KalshiやPolymarketなど予測市場の運営企業に影響する。
背景にあるのは、予測市場の管轄権をめぐる州との争いだ。問題は米最高裁に持ち込まれており、CFTCは裁判での立場を固める狙いがあると見られている。
新たな2つの規則が示すCFTCの狙い

CFTCは10月9日、2つの規則を公表した。1つは予測市場の取引をスワップ規制に組み込む提案規則だ。もう1つはカジノ型ギャンブルをスワップの定義から外す暫定最終規則である。
どちらも、予測市場の監督官庁はCFTCだけだとするマイク・セリグ委員長の立場を制度として固める内容になっている。
スワップとは、当事者同士が将来のキャッシュフローを交換する金融契約を指す。金利スワップや通貨スワップが代表例だ。デリバティブ(金融派生商品)の一種に分類され、CFTCは議会からスワップ取引の監督権限を与えられている。
規則の要点は明快だ。カジノ型ギャンブルはスワップではないと明確にする。その一方で、予測市場のイベント契約はスワップに含める。この線引きによって連邦の監督権限を確保しようとしている。
カジノ型ギャンブルを除外した暫定最終規則
暫定最終規則は、カジノ方式の賭け事をスワップの定義から除外した。州や部族が運営するカジノやスポーツブックでの賭けは、CFTCの監督対象にならないと明示した形だ。
暫定最終規則という形式は、発効と同時に政策として機能し始め、運用しながら一般からの意見も受け付ける仕組みを指す。CFTCはこの規則を即座に動かしつつ、市場の反応を確認する構えだ。
イベント契約をスワップに含める提案規則
もう1つの提案規則は、スポーツ、政治、文化、天候などに関するイベント契約を、既存の米国スワップ規制に明示的に含める内容だ。KalshiやPolymarketのような企業で取引されている契約が対象になる。
こちらはまだ提案段階で、意見募集期間は30日間と短い。規則づくりの過程で修正される余地はあるが、CFTCの方向性ははっきりした。
州との法廷闘争がついに最高裁へ

予測市場の管轄権をめぐる州との争いは、ここ数カ月で激しさを増している。複数の州は、予測市場上のスポーツ賭博が違法なギャンブル運営に当たるとして、自らの規制権限を主張してきた。
連邦控訴裁判所の判断は割れている。直近の判決では、1件が州側の主張を退け、2件が州側を支持した。司法の間でも予測市場の法的な位置づけが定まっていないことが浮き彫りになった。
最高裁に提出された意見書
こうした状況を受け、複数の州と元連邦政府高官は今週、米最高裁に意見書を提出した。CFTCの解釈に対する反対意見を正式に伝えたことになる。
州側の主張はシンプルだ。CFTCのスワップ定義をそのまま適用すれば、州や部族のカジノ、スポーツブックで行われるあらゆる賭けが連邦法違反になりかねない。これが州の強い反発を招いている。
規則づくりの速さが示すもの
これらの規則は、ホワイトハウスの審査に提出されてから2週間足らずで公表された。連邦規則の制定プロセスとしては異例の速さだ。裁判を意識したスケジュールだったと言わざるを得ない。
TD Cowenの政策アナリスト、ジャレット・サイバーグ氏は10月9日付の顧客向けメモで、今回の暫定最終規則について「裁判所でのCFTCの立場を改善するために設計された」と指摘した。カジノ型ギャンブルを除外したのも州側の懸念に応える狙いがあるとの見方を示している。
予測市場とスワップ規制を理解する

予測市場とは、スポーツの勝敗や選挙の結果、天候など、将来の出来事の成り行きを取引する市場だ。的中すれば利益を得られる仕組みで、金融市場と賭けの中間に位置する存在として注目されてきた。
KalshiはCFTCの監督下で運営される予測市場プラットフォームだ。Polymarketは暗号資産を基盤にした予測市場で、2024年の米大統領選の予測市場として一躍有名になった。どちらもスポーツから政治まで幅広い契約を提供している。
スワップに分類されると何が起きるのか
イベント契約がスワップと定義されると、CFTCの登録、報告、透明性などデリバティブ市場向けの規制が適用される。Kalshiのような企業は既にCFTCの監督下にあるため、実務上の変化は限定的だ。
重要なのは州との関係だ。スワップは連邦の専管事項になるため、州のギャンブル規制が及ばなくなる。これが州当局や一部の議員から「違法ギャンブルへの抜け道になる」と批判される理由だ。
つまり、今回の規則づくりは予測市場を誰が監督するかという権限争いの核心に触れている。利用者にとっては取引ルールの一貫性につながる一方、州ごとの消費者保護が後退する懸念もある。
今回の動きをどう見るか

一連の動きは、単なる規制の明確化ではないと考えるべきだ。州との訴訟で不利な判決が続く中、裁判所に対して「CFTCは予測市場の監督を既に始めている」という実績を示す狙いが大きい。規則づくりの速さがその意図を裏付けている。
さらに、規制当局の人員体制が異例なことも見逃せない。CFTCは本来5人で構成される委員会だが、現在はセリグ委員長1人だけが在任している。トランプ政権は追加の委員を指名していない。SECも定員5人のところ2人しかいない。
1人委員会が進める規制の持続性
規制当局の人員が極端に少ない状態で、重要規則が1人の判断で動かされている。意思決定が速い半面、政権交代や委員の追加で方針が覆るリスクもある。市場参加者にとっては、規制の持続性という点で不確実性が残る。
特に暗号資産ベースの予測市場にとって、この不確実性は重い。規則が確定すればコンプライアンス体制の整備が必要になる一方、政権が変われば規制の枠組み自体が変わるかもしれない。事業計画を立てにくい環境が続く。
Polymarketに与える影響
Polymarketは暗号資産ブロックチェーン上で動く予測市場だ。今回の規則が最終化すれば、同社を含む暗号資産ベースの予測市場もCFTCのスワップ規制に組み込まれる可能性がある。
とはいえ、規制の枠組みが明確になること自体は、長期的には事業者にとって追い風になり得る。グレーゾーンが続くより、監督官庁と適用ルールがはっきりした方が、機関投資家の参入や新規事業の計画が立てやすくなるからだ。
ただし、30日間という意見募集期間は、業界が十分に対応するには短い。特に暗号資産ベースの予測市場は、従来の金融規制との整合性を慎重に検討する時間が必要だ。拙速に進めば、後々の混乱を招く恐れもある。
この記事のポイント
- CFTCが10月9日、予測市場をスワップ規制に組み込む提案規則と、カジノ型ギャンブルを除外する暫定最終規則を公表した
- 州との管轄権争いは連邦控訴裁判所で判決が割れ、米最高裁に持ち込まれている
- 今回の動きは裁判での立場強化が主目的で、規則づくりのスピードも異例に速い
- CFTCは5人委員会のうち1人だけが在任しており、SECも2人体制と規制当局の人員不足が目立つ
- 暗号資産ベースの予測市場Polymarketにとっても、今後の規制対応が重要な課題になる

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
分かりやすい解説で、ブロックチェーン革命の潮流を一般に広めることを目指す。初心者から上級者まで、最新情報を求めるすべての人に役立つ情報発信を心がけている。
