暗号資産業界にとって今議会最大の期待であるCLARITY法案が、重要な委員会通過からわずか数週間で勢いを失いつつある。Galaxy Digitalは2026年中の成立確率を従来の75%から60%に引き下げた。
この法案は、米国で初めてデジタル資産の包括的な連邦規制枠組みを構築するものだ。夏の議会スケジュールの逼迫と、未解決の倫理規定や不正金融対策をめぐる対立が、議会通過への道のりを険しくしている。
つまり、暗号資産ビジネスに明確なルールをもたらすはずだった法案が、選挙イヤーの政治力学に飲み込まれようとしている状況だ。以下、何が起きているのかを詳しく見ていく。
Galaxy Digitalが成立確率を下方修正した理由

Galaxy Digitalのリサーチ責任者であるアレックス・ソーン氏は、クライアント向けノートの中で、今回の下方修正は法案への支持が崩れたからではなく、主に時間的な制約に基づくものだと説明した。問題は上院の議事日程が急速に狭まっていることにある。
具体的には、上院が夏の休会に入る7月末までに、法案を通過させるために使える実質的な議会日数が著しく不足している。ソーン氏の分析によれば、法案が成立するには60票の確保、本会議での討論と修正、上院農業委員会の別の法案テキストとの調整、そして下院での審議という複数のハードルを越えなければならない。
議事日程を圧迫する思わぬ伏兵
この2週間で、状況はさらに悪化した。政権の「反武器化基金」をめぐる与野党の争いが、移民税関捜査局と国境警備隊の予算案審議中に本会議の時間を消費してしまったのだ。また、外国情報監視法(FISA)第702条の再承認も47対52の手続き投票で進まず、6月12日の失効期限に向けて新たな混乱が生じている。
これらはCLARITY法案とは直接関係ないが、議会の「時間」という希少資源を奪い合うライバルになった格好だ。上院指導部にとって、票のメドが立っていない法案に貴重な1週間を割く理由は乏しい。
上院の厳しい日程と中間選挙の影

JPモルガンのアナリストも今週、同様の警告を発している。立法の機会窓は狭まっており、議員たちの関心が中間選挙に向かうにつれて、暗号資産の市場構造改革の進展は遅れる可能性があるとの見方だ。
上院多数党院内総務のジョン・スーン氏が本会議の時間を確保するなら7月中になるが、そのタイミングを逃せば、次は9月以降になる。問題は、選挙前の政治情勢の下で妥協された法案と、11月の中間選挙後に力関係が変わった状況で成立する法案とでは、中身が大きく異なる可能性があることだ。
超党派の支持を得るための課題
法案が前進するには、超党派の支持が不可欠だが、未解決の争点はまだ大きい。ルーベン・ガレゴ上院議員ら民主党は、利益相反に関連する倫理規定の盛り込みを強く求めている。また、マネーロンダリングや制裁リスクへの対策強化を主張する議員もいる。上院銀行委員会と農業委員会は、それぞれのアプローチを統合する作業も残ったままだ。
5月14日に銀行委員会を15対9で通過した時点では、CLARITY法案はかつてないほど成立に近づいたように見えた。暗号資産が証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)のどちらの管轄になるのかを明確化し、これまでの「執行による規制」に代わる明確なルールを提供するという、業界悲願の枠組みだ。しかし、その勢いは明らかに減速している。
銀行業界とステーブルコイン利回りをめぐる攻防

日程問題に拍車をかけているのが、銀行業界によるステーブルコインをめぐる持続的な反対運動だ。ステーブルコインとは、米ドルなどの価値に連動するように設計され、ブロックチェーン上で取引されるデジタルトークンを指す。
銀行にとって最大の争点は、暗号資産企業がステーブルコインの保有残高に対して「利回り」を提供することを認めるかどうかだ。銀行業界団体は、デジタルドルが利子のような報酬を提供すれば、規制された銀行に適用されるルールを回避しながら、当座預金や普通預金から資金を流出させる恐れがあると警告している。
「パッシブ利回り」と「アクティブ報酬」の境界線
法案は当初、単にステーブルコインを保有しているだけで発生する受動的な利回りを禁止する意図だった。しかし現在の条文では、支払いや取引、ロイヤルティプログラム、取引インセンティブなど、何らかの活動に紐づく報酬は引き続き認められる方向だ。
この区別は重要である。ステーブルコインが単なる決済ツールにとどまるのか、それとも銀行預金の代替商品になるのかを左右するからだ。暗号資産業界は、活動ベースの報酬は決済イノベーションと利用者獲得の一部だと主張する。銀行側は、銀行のような商品を提供するなら銀行と同じ義務を負うべきだと反論し、激しいロビー合戦を展開している。
消費者保護か業界保護か
米国銀行協会(ABA)が支援する調査は「消費者は、ステーブルコインに利息のような報酬を認めることに伴うリスクから、地域金融と金融システムを守ることを強く支持している」と主張する。この論点は、ステーブルコインがデジタル金融の中で存在感を増し、主要な取引所が顧客残高を利回り連動型商品に転換しようとする動きが強まるにつれて、政治的にも重みを増してきた。
銀行と暗号資産企業の双方が自らの利権のために攻防を続ける中、この対立は法案を前進させる上での最大の障害物の一つであり続けている。
立法化への道筋と今後を見通す上での分析

CLARITY法案の今後を展望すると、いくつかのシナリオが浮かび上がる。Galaxy Digitalの指摘にもあるように、楽観的な筋書きは、上院指導部が7月前半から中旬に本会議の時間を確保し、倫理や不正金融をめぐる争点が決着し、銀行・農業両委員会が一本化したパッケージを用意することだ。これらのシグナルが揃えば、法案に必要な票と日程の両方があると示せる。
しかし、状況は悪い方向に傾きつつある。議会の機能不全は近年ずっと深刻化しており、大型法案の成立には通常、危機感か超党派の強い合意が必要だ。CLARITY法案にはそのどちらも欠けているように見える。暗号資産業界にとっての重要性は疑いないが、一般有権者の生活に直結するテーマではないため、選挙を控えた議員にとって優先順位はどうしても下がる。
また、銀行業界のロビー活動は単なる時間稼ぎ以上の効果を発揮している。利回り禁止の主張は「利用者保護」という旗印の下で行われており、中間選挙で消費者保護を訴えたい議員にとって都合の良い論点だ。一方で、暗号資産業界の「イノベーションの阻害だ」という反論は、有権者に直感的に響きにくい。
筆者自身の見解としては、2026年内の法案成立は依然として五分をわずかに上回る程度の可能性があると考える。ただし、その場合は大幅な妥協が不可避だ。特にステーブルコインの利回り条項と、SECとCFTCの管轄境界をめぐる具体的な閾値は、銀行業界にかなり譲歩した内容になる公算が大きい。9月以降にずれ込めば、法案自体が次の議会に持ち越されるリスクはさらに高まるだろう。
この記事のポイント
- Galaxy DigitalがCLARITY法案の2026年成立確率を75%から60%に下方修正した
- 主因は上院の実質的な審議日程不足であり、支持離れではない
- JPモルガンも同様の懸念を表明し、中間選挙が立法プロセスを遅らせると指摘している
- 銀行業界によるステーブルコイン利回り反対が、引き続き大きな障害となっている
- 7月に本会議の時間が確保できなければ、選挙後の情勢変化で法案内容が大きく変わる可能性がある

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
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