米軍のイラン追加攻撃で暗号資産市場から800億ドル消失、ビットコインとイーサリアムが急落

米軍のイラン攻撃でリスクオフが加速

米軍のイラン攻撃でリスクオフが加速

2026年5月28日、米軍がイランに対する新たな軍事攻撃を実施したとの一報が世界を駆け巡った。このニュースは金融市場全体に衝撃を与え、特に暗号資産市場では大規模な売りが殺到している。

ビットコイン(BTC)は8万7,300ドル付近まで急落。イーサリアム(ETH)も大打撃を受け、心理的な節目である2,000ドルを下抜け、記事執筆時点で1,976ドルと4%以上の下落を記録した。イーサリアムはこの水準まで落ちるのは3月下旬以来のことだ。

この急落は、単なる一時的な調整ではない。市場が抱える構造的な脆弱性と、暗号資産が依然として「リスクオン」の資産として扱われている現実を浮き彫りにしている。

「安全資産」という物語と現実のギャップ

「安全資産」という物語と現実のギャップ

暗号資産、特にビットコインは長らく「デジタルゴールド」として、インフレヘッジや地政学リスクからの逃避先としての役割を期待されてきた。しかし今回の市場反応は、その期待とは裏腹の動きを見せている。

ビットコインとイーサリアムは高ベータ資産として機能

暗号資産リサーチ会社LVRG Researchのディレクターであるニック・ラック氏はCointelegraphの取材に対し、市場が地政学リスクの高まりや原油供給の混乱、そして安全資産への逃避を織り込んで売られたと分析する。

ラック氏は「ビットコインとイーサリアムは、長期的なヘッジ手段としての物語があるにもかかわらず、不確実性が高まる期間には高ベータのリスク資産のように振る舞い続けている」と指摘した。

高ベータ資産とは、市場全体の値動きに対して価格変動が大きい資産のことだ。株式市場でいえばハイテク株のような存在だ。市場が上昇している時は大きく上がるが、ちょっとした悪材料でも真っ先に売られる。つまり、投資家はリスク回避の局面では、まずビットコインのような値動きの激しい資産から手を引く傾向があるということだ。

投資家の視線は中東エスカレーションとFRB政策に集中

市場参加者の関心は、中東情勢がどこまでエスカレートするのか、そしてそれがインフレや米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策にどのような影響を与えるのか、という点に集まっている。

ラック氏は「トレーダーは現在、中東でのエスカレーションリスクや、インフレとFRB政策への影響を注視している。暗号資産の流動性は急速に細り、レバレッジをかけたポジションは一掃されつつある」と述べている。

レバレッジをかけたポジションの一掃、いわゆる「ロスカット」の連鎖は市場下落を加速させる要因だ。先物取引などで借り入れを行い、自己資金以上の取引をしていた投資家が、価格下落によって強制的にポジションを解消させられ、それが更なる売りを呼ぶという悪循環に陥りやすい。

原油市場との対照的な動き

原油市場との対照的な動き

暗号資産市場が売られる一方で、原油価格は逆の反応を示している。

中東の地政学リスクの高まりは、石油供給への懸念を直接的に刺激する。イランは主要な産油国であり、ホルムズ海峡の安全な航行が脅かされる可能性が意識されるからだ。この結果、WTI原油先物は3.5%上昇して92ドルを突破。北海ブレント原油も98ドルまで値を上げた。

この原油高は、市場が今回の軍事攻撃を「供給ショックの可能性」として捉えている何よりの証拠だ。原油はまさに地政学リスクに対する古典的なヘッジ手段として機能しており、ここにビットコインとの「安全資産」としての性質の違いが明確に表れていると言えるだろう。

今後の市場はインフレと流動性が焦点に

今後の市場はインフレと流動性が焦点に

目先の焦点は、原油価格の高騰がインフレを再燃させ、FRBの利下げシナリオを後退させるかどうかだ。

FRBがインフレ再燃を警戒して金融引き締めを長引かせれば、市場に出回るマネーの量、つまり流動性が細る。暗号資産のようなリスク資産にとって、流動性の縮小は価格の重しとなる。まさにラック氏が警告した「流動性の急速な減少」が現実のものとなる展開だ。

今回の市場急落は、暗号資産がマクロ経済や国際情勢と無縁ではいられない現実を改めて突きつけた。中東の火種が広がれば広がるほど、インフレ圧力は強まり、暗号資産市場の回復には一層の時間がかかる可能性がある。

この記事のポイント

  • 米軍のイラン追加攻撃報道を受け、暗号資産市場全体で800億ドルが消失した
  • ビットコインは8万7,300ドル付近、イーサリアムは1,976ドルまで急落し、安全資産という物語とは逆の値動きを見せた
  • 専門家は、暗号資産が依然として高ベータのリスク資産として扱われていると分析する
  • 対照的に原油価格は急騰し、市場が供給ショックを警戒していることを示した
  • 今後の焦点は原油高によるインフレ再燃と、それがFRBの金融政策に与える影響に集まる
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