米司法省(DOJ)が暗号資産開発者に対する姿勢を明確に転換した。トッド・ブランシュ代行司法長官はラスベガスで開催されたカンファレンスで「コードは犯罪ではない」と明言し、開発者コミュニティに強い安心感を与えた。
長年にわたり、暗号資産の開発者は自らが公開したコードが犯罪に利用されるリスクにおびえてきた。DOJの今回の発言は、この不透明な状況を終わらせる可能性がある一方、実務レベルでの課題を浮き彫りにしている。
この記事では、DOJの歴史的転換の背景と、開発者コミュニティの反応、そして依然として残る法的リスクについて、詳しい友人が教えてくれるような易しいトーンで解説する。
司法省トップが明確に「コードは犯罪ではない」と発言

ブランシュ代行司法長官は2026年4月28日、ラスベガスでの業界カンファレンスに登壇し、これまでのDOJの執行姿勢からの決別を印象づけた。「コードは犯罪ではない」というメッセージは、暗号資産コミュニティで瞬く間に拡散され、X(旧Twitter)上では何千ものリポストが行われた。
この発言の核心は、ソフトウェアを公開する行為そのものを犯罪とみなさないという点にある。つまり、非管理型(ノンカストディアル)のソフトウェア、たとえばユーザー自身が秘密鍵を管理するウォレットや、第三者を介さずに取引を実行するスマートコントラクトを開発しただけで、開発者が刑事責任を問われることはない、という解釈を示した格好だ。
なぜ「コードは犯罪ではない」が重要なのか
暗号資産の世界では、ソフトウェアの公開は思想の表明に近い。ビットコイン(BTC)のホワイトペーパーも、イーサリアム(ETH)のスマートコントラクトも、すべてはコードとして世に出された。これに対しDOJは過去数年、マネーロンダリング防止法や無認可送金業の取り締まりを根拠に、開発者を訴追するのではないかという懸念を広げてきた。
Cointelegraphの記事によれば、ブランシュ長官は「いかなるプラットフォームも、司法省やFBIを『自分たちに問題を引き起こす存在』と見なしてほしくない」と述べたという。この言葉は、執行機関がイノベーションの敵ではなく、むしろ建設的な対話を望んでいることを示唆している。
開発者コミュニティの反応と残された課題

ブランシュ長官の発表を受け、開発者や政策専門家からは歓迎と慎重論が入り交じった声が上がっている。表面的には朗報だが、細部を見れば多くの疑問が残るからだ。
コインセンター幹部が指摘する「片目を開けて寝る」状態
暗号資産の政策提言団体コインセンターの事務局長ピーター・ヴァン・ヴァルケンバーグ氏は、Xでブランシュ長官に反応し、「近年DOJから聞かれたメッセージの中では間違いなく良い」と評価した。しかし同時に、同氏は「本当の問題は、DOJが非管理型ソフトウェアの公開と、悪質なユーザーを『支援』または『認識』していることとの線引きをどこに置くかだ」と指摘している。
これは重要なポイントだ。たとえば、完全に分散化された取引所のプロトコルを開発したとしても、その利用者の一部が犯罪行為を行った場合、開発者がその事実を「知っていた」と認定されるリスクはゼロではない。DOJの新しい方針は良い出発点だが、「知っていた」の法的定義を明確にしなければ、開発者は依然として警戒を緩められない。
「ソフトウェア公開」と「幇助」の境界線はどこか
ヴァン・ヴァルケンバーグ氏の懸念は抽象論ではない。暗号資産の世界では、オープンソースのコードを誰がどのように使うかを開発者が完全に制御することは不可能だ。もし誰かが公開されたコードを使って詐欺を行った場合、開発者は「犯罪を助けた」と見なされるのだろうか。この不確実性は、新しいプロトコルの開発をちゅうちょさせる冷や水効果を生み出しかねない。
この問題は、単に「ソフトウェアの開発者は保護される」という宣言だけでは解決しない。執行機関と開発者コミュニティの間で、具体的なケーススタディに基づく対話が継続されることが不可欠だといえる。
マイケル・ルウェレン訴訟が問う不透明性の代償

DOJの執行姿勢をめぐる不透明さが、実際に裁判で争われたケースがある。開発者マイケル・ルウェレン氏が、自身のプロジェクトに対するDOJの訴追リスクを事前に明確化するよう求めて起こした訴訟だ。この訴訟は、DOJの方針転換を理解するうえで避けて通れない。
ルウェレン氏が求めた「事前の明確化」
ルウェレン氏は、イーサリアム上で動作するクラウドファンディングツールを開発していた。同氏の懸念は、このツールが無認可の送金業と見なされ、刑事罰の対象になるのではないかという点だった。プロジェクトを進める前に、司法判断を仰ごうとしたのだ。しかしテキサス州の裁判所は2026年3月下旬、DOJによる執行の「信頼できる脅威」が証明されていないとして、この訴えを棄却した。
Cointelegraphの記事は、この判決とDOJの新方針の間にある矛盾を、ヴァン・ヴァルケンバーグ氏の言葉を引用して浮き彫りにしている。すなわち、「DOJは公の場では開発者がまだ片目を開けて寝ていると認めている。その一方で、裁判所ではルウェレン氏が法的明確化を求めることを許すべきではないと主張している」のだ。
「明確な法」なのになぜ不安が残るのか
このダブルスタンダードは、DOJの新方針の実効性を疑問視する根拠となっている。もし法律が極めて明確で、開発者が何も心配する必要がないのであれば、DOJがルウェレン氏の訴訟を争う理由はなかったはずだ。訴訟を棄却に持ち込んだという事実は、現行法の解釈に依然としてグレーゾーンが存在することを示している。
開発者の立場からすれば、DOJの友好的なスピーチは心強いが、裁判所で展開される現実の法廷戦略は別物だと理解せざるを得ない。こうしたギャップを埋めるためには、議会による立法や、DOJ内部でのより具体的なガイドライン策定が求められる。
規制から対話へ、DOJの執行方針が大転換

ブランシュ長官の今回の発言は、孤立したものではない。DOJの執行方針転換は、1年以上前から段階的に進められてきた。この流れを把握することは、暗号資産業界の今後を占ううえで欠かせない。
2025年4月の内部メモが示す「訴追による規制」の終焉
Cointelegraphの報道によると、ブランシュ氏は2025年4月にも内部向けのメモを発表し、DOJが「訴追による規制」を終わらせることを明言していた。このメモは、プラットフォーム利用者の違法行為や、意図しない規制違反を理由に開発者を標的にしないという方針を打ち出している。
「訴追による規制」とは、議会が明確な法律を定めていない領域で、検察が刑事訴追を用いて事実上の規制基準を形成してしまうことを指す。暗号資産の分野では、新しい技術が次々と登場するため、この手法に頼る傾向が強かった。DOJの新方針は、この慣行を根本から見直す意思の表れと受け止められている。
FBIとDOJは「敵」ではないというメッセージ
ラスベガスでのスピーチでブランシュ氏は、「いかなるプラットフォームも、司法省やFBIを単に問題を引き起こす存在と見なしてほしくない」と強調した。この一言は、執行機関が業界との対話と協力を求めていることを示す強力なメッセージだ。
従来、暗号資産コミュニティの一部には、FBIやDOJを敵視する風潮があった。しかし、ブランシュ氏のアプローチが定着すれば、開発者と執行機関の間で建設的な情報共有が進む可能性がある。これは、犯罪行為の早期発見や防止にもつながる好循環を生み出すかもしれない。
それでも残る構造的な課題

DOJの方針転換は歓迎すべき動きだが、暗号資産開発者が直面する法的リスクのすべてが解消されるわけではない。ここでは、中長期的に注視すべき論点を整理する。
立法の不在がもたらす持続的な不確実性
根本的な問題は、米国に暗号資産に関する包括的な連邦法が存在しないことだ。証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の管轄争いも続いており、何が証券で何がコモディティなのか、法的に確定していない。DOJの内規が変わっても、他の規制機関や州レベルの法律が別の基準を適用するリスクは残る。
したがって、真の解決策は議会による立法だ。しかし、政治的な対立が続くワシントンで、暗号資産法案が早期に成立する見通しは不透明である。
「知っていた」の解釈と国際的な調整
ヴァン・ヴァルケンバーグ氏が指摘した「知っていた」の定義は、国際的な文脈でも課題となる。暗号資産は国境を越えて利用されるため、米国DOJの方針が他の国の執行機関に共有される保証はない。グローバルに活動する開発者にとって、複数の管轄区域で異なる基準が適用される状況は、いまだに重大なビジネスリスクだ。
DOJが業界と信頼構築を進める一方で、金融活動作業部会(FATF)など国際的な枠組みとの整合性を図ることも、長期的な課題として浮上している。
この記事のポイント
- 米司法省のブランシュ代行長官が「コードは犯罪ではない」と明言し、開発者を標的にしない方針を鮮明にした。
- コインセンター幹部は評価しつつ、悪質ユーザーを「知っていた」場合の線引きが依然として不明確だと指摘する。
- 開発者マイケル・ルウェレン氏の訴訟棄却は、DOJの友好姿勢と法廷戦略の間のギャップを浮き彫りにした。
- 2025年4月の内部メモ以降、DOJは「訴追による規制」を終わらせる一連の改革を進めている。
- 包括的な連邦法の欠如や国際的な調整不足など、構造的な課題はなお残されている。

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
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