米連邦準備制度理事会(FRB)は9月24日、ステーブルコイン規制のGENIUS法に基づく2つの規則案を公表した。資本や準備資産の要件と、銀行が自らステーブルコインを発行する際の手続きを定める内容だ。
今回の規則案は60日間のパブリックコメントを経て最終化される。2025年に成立したGENIUS法は、米国の銀行規制当局と財務省に対し2026年7月までの規則整備を求めていたため、各機関は法定期限を超過しながらも作業を急いでいる段階にある。
ステーブルコインは価格が常に1ドル前後で推移するよう設計された暗号資産だ。決済や送金の手段として普及が進む一方、発行体の監督や利用者保護の枠組みが長年あいまいだった。今回の規則案はその穴を埋める動きになる。
FRBが示した2つの規則案の中身

FRBが公表した1つ目の規則案は、資本と準備資産に関する要件を扱う。ステーブルコインが最も流動性の高い資産で完全に裏付けられ、発行体が市場ストレス時にも耐えられる財務基盤を持つことを狙いとする。
具体的には、FRBの監督下にある銀行が認められるステーブルコイン関連業務の範囲も示された。ここには今回の規則案で最も注目を集める論点、ステーブルコイン保有者への報酬プログラムの扱いも含まれている。
2つ目の規則案は、規制対象銀行が自らステーブルコインを発行する場合の手続きを定めている。事業計画や財務情報、関連する方針や手続き、その他の文書を提出することが要件となる。
発行体に求められる安全網
FRBのマイケル・バー理事は声明で「ステーブルコインが安定するのは、さまざまな状況下で額面どおり確実かつ迅速に償還できる場合だけだ」と述べた。
バー理事は続けて、市場ストレス時に流動性の高い国債でさえ価格圧力を受ける局面や、発行体そのものに問題が生じた局面でも、この償還能力が問われると指摘している。つまり、ステーブルコインの信頼は平常時ではなく緊急時にこそ試されるという考え方だ。
この考え方は、準備資産を単に「十分に持つ」だけでは足りず、その資産の質と換金性まで厳しく見る規制姿勢を示している。利用者から見れば、突然換金できなくなるリスクを減らす措置といえる。
報酬プログラムはどこまで認められるか

GENIUS法は発行体がステーブルコインの保有に対して利息や利回りを支払うことを原則として禁じている。今回のFRB案は、この禁止措置をどう運用するかに踏み込んだ内容だ。
FRBは規則案で「第三者を介する特定の仕組みは、利息や利回りの支払いとして禁止されるものと推定する」と記した。この方針は、通貨監督庁(OCC)がすでに示していた提案と整合的だとしている。
一方で、規制当局は暗号資産プラットフォームがクレジットカードのインセンティブ制度に似た形で、ステーブルコイン利用者に報酬を提供する余地をごく狭い範囲で残している。現時点では規則が最終化されていないため、この解釈は今後のパブリックコメントで変わる可能性がある。
ステーブルコイン報酬の問題は、コインベースのような企業が利用者にどこまで還元できるかを左右する。この論点は最近成立に至らなかったデジタル資産市場明確化法をめぐる議論でも対立点になっており、現在はGENIUS法が報酬ルールを定める主要な法律となっている。
米国のステーブルコイン規制は全体像が見えてきた

ステーブルコイン規制はFRBだけで完結しない。複数の連邦機関がGENIUS法の実施に必要な規則を分担して整備している。
連邦預金保険公社(FDIC)は2025年12月、GENIUS法に基づく米国初のステーブルコイン規則案を示した。財務省は2026年8月、米国ステーブルコインの発行の定義や適用対象を定める独自案を公表している。
さらに2026年6月には複数の当局が、ステーブルコイン発行体に銀行と同等の顧客本人確認を求める規則案を提案した。FRBの今回の動きで、主要機関の規則案が出そろった格好だ。
規制の枠組みが固まれば、銀行だけでなく既存のステーブルコイン発行体も対応を迫られる。大手発行体にとっては、ビジネスモデルの再設計が必要になる場面も出てくるだろう。
今後のスケジュールと注目点

FRBの規則案は公表から60日間、一般からの意見を受け付ける。規制当局は提出された意見を踏まえて案を修正し、最終規則として公表する。このプロセスは通常数カ月かかり、場合によってはさらに長引く。
最終化までに特に注目すべきは、報酬プログラムの扱いと資本要件の厳格さだ。この2点はステーブルコイン市場の競争環境を大きく左右する。
報酬提供がほぼ全面禁止となれば、利回りを売りにする商品設計は困難になる。逆にインセンティブが一定程度認められれば、従来型金融と暗号資産サービスの境界はよりあいまいになる。今後のコメント募集で業界側がどのような主張を展開するかが焦点となる。
この記事のポイント
- 米FRBがGENIUS法に基づく2つの規則案を公表し、60日間の意見募集を開始した
- 1つ目は資本・準備資産とステーブルコイン関連業務の要件、2つ目は銀行による発行手続きを扱う
- 保有者への利息・利回り支払いを原則禁止する法律の運用方針も示された
- FDICや財務省に続く規則案で、米国のステーブルコイン規制の全体像が明確になりつつある

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
分かりやすい解説で、ブロックチェーン革命の潮流を一般に広めることを目指す。初心者から上級者まで、最新情報を求めるすべての人に役立つ情報発信を心がけている。
