Flow Foundationとその親会社であるDapper Labs(ダッパーラボ)は3月9日、韓国の主要暗号資産(仮想通貨)取引所によるネイティブトークン「FLOW」の上場廃止を阻止するため、ソウル中央地方裁判所に仮処分を申請した。
今回の法的措置は、韓国の取引所大手Upbit(アップビット)、Bithumb(ビッサム)、Coinone(コインワン)が、2026年3月16日をもってFLOWの取引サポートを終了すると発表したことに対応するものだ。
財団側は、すでにグローバルな主要取引所がFLOWのサービスを正常化していることを根拠に、韓国国内での上場廃止決定の不当性を訴えている。
Flow Foundationが韓国取引所を提訴、上場廃止の差し止め求める

Flow Foundationは、韓国市場におけるFLOWの流動性を維持するため、司法の判断を仰ぐ道を選んだ。ソウル中央地裁は3月9日に本申請の内容を検討し、今後の法的手続きを決定する予定だ。
事端の発端は、2025年12月に発生したFlowブロックチェーンのセキュリティ・インシデントにある。この脆弱性を突いた攻撃により、本来の供給管理を回避してトークンを複製する事案が発生した。これを受けて韓国の主要取引所は、ネットワークの信頼性低下を理由に、2026年2月12日に上場廃止を予告していた。
一方、Flow Foundationは、問題発覚後速やかに修正対応を完了したと主張している。現在、FLOWトークンの価格は0.043ドル付近で推移しており、インシデント発生前と比較して約75%下落している。
Upbit、Bithumb、Coinoneの3社が対象
今回の仮処分申請の対象となっているのは、韓国の暗号資産取引所連合(DAXA)に加盟する主要3社だ。韓国市場ではDAXAの決定が事実上の業界標準となっており、これら3社が同時に上場廃止を決定したことは、FLOWの韓国内での流動性に致命的な打撃を与える。
一方で、同じ韓国国内の取引所であるKorbit(コービット)は、現時点でもFLOWの取引サポートを継続している。財団側はこの対応の差を指摘し、上場廃止を決定した3社の判断に一貫性がないことを強調する構えだ。
上場廃止の背景となった「セキュリティ・インシデント」の経緯

2025年12月に発生した脆弱性は、Flowネットワークにおける資産のミント(発行)プロセスではなく、複製を可能にするという特殊なものだった。この攻撃により、既存のユーザー残高から資金が流出することはなかったが、供給コントロールが一時的に無効化された。
390万ドル相当のトークンが不正複製
攻撃者はこの脆弱性を悪用し、約390万ドル(約5.8億円)相当のFLOWトークンを複製した。Flow Foundationは即座にバリデーター(ネットワークの検証者)に対してチェーンのロールバック(巻き戻し)を要請し、不正に生成されたトークンを永久に破棄する措置を講じた。
バリデーターとは、ブロックチェーンの取引を検証し、ネットワークの安全性を維持する役割を担う参加者のことだ。この迅速な対応により、ユーザーの資産が直接的に侵害される事態は回避されたと財団は説明している。
ユーザー資産への影響と財団の対応
財団はインシデント後、外部のセキュリティ機関による監査を実施し、脆弱性の完全な修正を完了した。この修正プロセスを経て、グローバルな取引所に対して安全性の報告を行っている。
「すべての偽造トークンは破棄され、ユーザーの資金は安全である」との主張を繰り返し、ネットワークの完全性が回復したことを強調している。しかし、韓国の取引所側は、供給量が一時的にせよ操作可能であったという事実自体を、投資家保護の観点から重く見ている。
グローバル市場と韓国市場の温度差

Flow Foundationが今回の提訴に踏み切った最大の理由は、韓国以外のグローバル市場ではすでにFLOWの信頼が回復しているという事実だ。財団は「世界の主要な取引所は、独自の調査を経てFLOWのサービスを全面的に再開している」と述べている。
大手取引所はサービスを再開
現在、FLOWはBinance(バイナンス)、Coinbase(コインベース)、Kraken(クラーケン)、OKX、Bybit(バイビット)といった世界最大級のプラットフォームで通常通り取引されている。これらの取引所は、インシデント後に一時的な入出金停止措置を講じたものの、財団の修正対応を確認した上で制限を解除した。
この状況下で、韓国の主要3社のみが上場廃止という最も厳しい措置を維持していることに対し、財団側は「過剰な対応であり、市場のグローバルな評価と乖離している」との見解を示している。
韓国特有の規制環境とDAXAの影響
韓国の取引所が強硬な姿勢を崩さない背景には、同国特有の厳しい規制環境とDAXA(デジタル資産取引所共同協議会)の存在がある。DAXAはかつてのLUNA(テラ)ショックを機に設立された組織で、投資家保護のために上場・廃止基準の統一を図っている。
DAXA(Digital Asset eXchange Alliance)とは、韓国の主要5取引所が構成する自主規制団体だ。過去にもWEMIX(ウィミックス)などの銘柄に対し、流通量の不整合を理由に一斉上場廃止を決定した経緯がある。一度DAXAが「不適当」との判断を下すと、個別の取引所がその方針を覆すことは極めて困難である。
苦境に立たされるFLOWトークンの現状とエコシステムの課題

法的争いが続く一方で、FLOWトークンの市場パフォーマンスは危機的な状況にある。2021年のNFTバブル期に記録した史上最高値から、その価値はほぼ消失している。
価格は最高値から99.9%下落
CoinGeckoのデータによると、FLOWは2021年に記録した史上最高値の42ドルから、現在99.9%下落した水準にある。直近のセキュリティ・インシデントが追い打ちをかけ、投資家の離散に拍車をかけている。
かつて「Ethereum(イーサリアム)キラー」の一角として期待されたプロジェクトが、ここまで価格を落とした背景には、トークンのアンロック(売却制限解除)による供給増加と、NFT市場全体の低迷がある。
NFT市場の冷え込みとTVLの減少
Flowブロックチェーンは、ディズニーやNBA、NFLといった世界的ブランドを抱えるエコシステムを持つ。しかし、DeFiLlamaのデータによれば、ネットワーク上のTVL(預かり資産総額)は2025年11月のピーク時から約82%減少し、現在は2,100万ドル程度に留まっている。
TVL(Total Value Locked)とは、そのブロックチェーン上のスマートコントラクトにロックされている資産の総額を指す。この数字の減少は、ネットワーク上の経済活動が縮小していることを意味する。NFT市場全体の時価総額も、2022年のピーク時である170億ドルから、現在は14億ドル規模まで縮小しており、Flowが注力してきたセクター全体が逆風に晒されている。
独自分析:上場廃止を巡る法的争いが示唆する「取引所の裁量権」の限界

今回のFlow Foundationによる提訴は、暗号資産市場における「取引所の裁量権」と「プロジェクトの権利」の衝突という、根深い問題を浮き彫りにしている。
韓国では過去、ゲーム関連プロジェクトのWEMIXが上場廃止を不服として仮処分を申請したが、裁判所は「取引所の上場廃止の判断は、重大な瑕疵がない限り尊重されるべき」として申請を却下した。この前例を鑑みると、Flow Foundationが勝訴するハードルは極めて高い。
しかし、今回のケースがWEMIXと異なるのは、バイナンスやコインベースといった世界的な「基準」が、すでにプロジェクトの安全性を認めている点だ。韓国の裁判所が、国内独自の規制基準(DAXAの方針)とグローバルな市場評価のどちらを重視するかが焦点となる。
もし財団側の主張が認められれば、取引所による一方的な上場廃止決定に対し、プロジェクト側が対抗する強力な法的根拠となるだろう。逆に申請が却下されれば、韓国市場の閉鎖性とDAXAの権限が改めて裏付けられる結果となる。これは、韓国に進出する海外プロジェクトにとって、技術的な問題が一度発生すれば「即座に市場から追放される」という極めて高いリスクを再認識させる事態となる。
この記事のポイント
- Flow Foundationが、韓国の主要3取引所(Upbit, Bithumb, Coinone)によるFLOWの上場廃止を止めるため、ソウル中央地裁に仮処分を申請した。
- 上場廃止の理由は2025年12月のセキュリティ・インシデントだが、財団は「修正済みであり、グローバル大手取引所はすでにサービスを再開している」と主張。
- FLOWトークンの価格は史上最高値から99.9%下落しており、NFT市場の低迷と相まってエコシステム全体が苦境に立たされている。
- 韓国特有の自主規制団体「DAXA」の判断と、グローバルな市場評価の乖離が、今回の法的紛争の背景にある。
- 裁判所の判断は、今後の暗号資産取引所における上場廃止決定のプロセスや裁量権に大きな影響を与える可能性がある。
出典
- Cointelegraph「Flow Foundation files court motion to block Korean exchange delistings」(2026年3月9日)
- Flow.com「Flow Ecosystem March 2026 Update」(2026年3月)
- DeFiLlama「Flow TVL Statistics」(2026年3月参照)
- CoinGecko「Flow (FLOW) Price Chart & Market Cap」(2026年3月参照)

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
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