フランス国民議会が暗号資産からステーブルコインへの変換に課税する修正案を前進させた。投資家がビットコインなどを売却してステーブルコインに交換した時点で、法定通貨へ換金していなくても利益が課税対象になる内容だ。
修正案は2027年財政法案の一部として審議されており、今後数週間で採決が行われる見通しだ。暗号資産への税制強化が続く欧州で、フランスの動きは個人投資家の売買判断にも影響を与えそうだ。
国民議会は同時に、暗号資産の損失を10年間繰り越す提案を否決した。出国税の拡大と自己管理ウォレットの申告義務を盛り込んだ別の修正案も審議中で、フランスの暗号資産税制は大きく変わろうとしている。
ステーブルコイン課税案が国民議会を通過

フランス国民議会は10月19日、修正案I-3898を前進させた。この修正案は、投資家がビットコインやその他の暗号資産をステーブルコインに変換する際、法定通貨に換金していなくても利益に対して課税する内容だ。
ステーブルコインとは、米ドルなど法定通貨の価値に連動するよう設計された暗号資産の一種である。価格が安定しているため、暗号資産市場では売買の一時的な避難先として広く使われている。
課税の計算方法
修正案I-3898によると、課税額の計算には売却した暗号資産の取得原価と加重平均購入価格を使う。つまり、暗号資産をステーブルコインに交換した時点で損益が確定し、その利益部分が課税対象になる仕組みだ。
これは実務上、重要な変化を意味する。これまで多くの投資家は、暗号資産をステーブルコインに交換しても税金は発生しないと考えてきた。価格が下落した際にとりあえずステーブルコインに退避し、再び買い直すといった操作が、今後は課税イベントになる。
フランスの税務当局は、ステーブルコインを暗号資産ではない別の資産として扱うのではなく、暗号資産同士の交換とみなす立場を明確にした形だ。税務上のグレーゾーンが1つ消えることになる。
損失繰り越し案は否決

国民議会は金曜日、暗号資産の実現損失を10年間繰り越すことを認める提案を否決した。投票結果は賛成18、反対75、棄権3だった。
この提案が通っていれば、暗号資産の売却で出た損失を最長10年間、将来の利益と相殺できる仕組みが導入されるはずだった。多くの投資家にとって、税負担を軽減する手段となる可能性があった。
しかし議会は慎重な姿勢を崩さなかった。暗号資産特有の税制優遇を設けることへの反対意見が多数を占めたとみられている。暗号資産の価格変動が激しいだけに、損失繰り越しを認めると税収が不安定になるという懸念があったようだ。
否決が示す議会の姿勢
損失繰り越し案の否決は、フランス議会が暗号資産投資家に甘い税制を与えるつもりがないことを示している。むしろ課税強化の方向に舵を切っており、ステーブルコイン課税案の通過と合わせると、投資家には厳しい環境になりそうだ。
欧州ではドイツが暗号資産を1年以上保有した場合の売却益を非課税とするなど、国によって温度差がある。フランスは課税強化の側に立ったことになる。
出国税と自己管理ウォレット申告の提案

フランス議会は来年度予算の一環として、さらに2つの暗号資産関連の修正案を検討している。いずれも個人投資家に直接影響する内容だ。
出国税の拡大
修正案I-CF1822は、フランスの出国税制度を暗号資産の含み益にまで拡大する提案だ。暗号資産ポートフォリオの総額が80万ユーロ(約89万5,000ドル)を超える納税者が海外に居住を移す場合、その時点での未実現利益にも課税されることになる。
出国税とは、納税者が国外に移住する際に、その時点での含み益に対して課税する制度のことだ。株式など伝統的な金融資産にはすでに適用されているが、暗号資産は対象外だった。修正案が通れば、暗号資産も出国税の対象に含まれる。
高額の暗号資産を保有する富裕層にとって、フランスからの移住は税務上の大きな決断になる。海外移住を考えている投資家は、移住前に暗号資産を処分するか、税負担を受け入れるかの選択を迫られる。
自己管理ウォレットの申告義務
修正案I-2701は、自己管理ウォレットの保有額が関連税年度に10万ユーロ(約11万2,000ドル)を超える個人に対して、その保有内容の申告を義務付ける内容だ。
自己管理ウォレットとは、暗号資産を取引所に預けず、自分自身で秘密鍵を管理するウォレットのことである。セルフカストディウォレットとも呼ばれる。取引所を経由しないため、税務当局からは資産の把握が難しい仕組みだ。
この修正案が成立すれば、一定額以上の自己管理ウォレットを持つ投資家は、毎年の税務申告でその残高を報告する必要が出てくる。暗号資産の分散型の理念と国家の税務執行が正面から衝突する論点だ。
プライバシーを重視して自己管理ウォレットを使う投資家にとっては、大きな負担になる可能性がある。一方で、税務当局から見れば、取引所を介さない取引による脱税を防ぐ手段として有効と映るだろう。
フランスの動きが示す欧州の税制強化

フランスで進む一連の税制改正は、欧州全体の暗号資産規制の流れと軌を一にしている。EUは暗号資産市場規制法(MiCA)を施行し、取引所やステーブルコイン発行体への規制を強化してきた。税制面でも各国が対応を急いでいる。
フランスの修正案が成立すれば、他のEU加盟国にも同様の動きが広がる可能性がある。特にステーブルコインへの交換を課税イベントとみなす考え方は、税制の整合性を保つうえで各国が参考にする論点になりそうだ。
個人投資家の立場からすると、暗号資産を売買する前に税務上の影響を確認する重要性が増している。今回のフランスの動きは、欧州で暗号資産を保有する投資家にとって、無視できない変化である。
この記事のポイント
- フランス国民議会は暗号資産からステーブルコインへの交換に課税する修正案I-3898を前進させた
- 法定通貨に換金していなくても、ステーブルコインへの変換で利益が課税対象になる
- 暗号資産の損失を10年間繰り越す提案は賛成18、反対75で否決された
- 出国税を暗号資産の含み益に拡大する案と、10万ユーロ超の自己管理ウォレット申告義務案も審議中
- いずれも2027年財政法案の一部として、今後採決される見通し

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
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