今回は注目を集めている2つの新世代ブロックチェーン「アプトス」と「スイ」について詳しく解説します。
どちらも「Move言語」を採用した次世代のレイヤー1ブロックチェーンですが、同じルーツを持ちながらなぜ別々の道を歩むことになったのか、その理由や違いについて掘り下げていきます。
アプトスとスイの基本情報

まず、アプトスとスイはどちらも「レイヤー1」と呼ばれるブロックチェーンです。
レイヤー1というのは、イーサリアムやビットコインのように、独自のブロックチェーンネットワークを持つ基盤層のことです。
| 項目 | アプトス | スイ |
|---|---|---|
| 分類 | レイヤー1 | レイヤー1 |
| 開発元 | Aptos Labs | Mysten Labs |
| 発表 | 2021年 | 2022年 |
| 創設者 | 元Diemのコアメンバー | 元Diemの研究者チーム |
両者とも、元々はFacebook(現Meta)が開発していた「Diem」(旧Libra)プロジェクトに関わっていたチームによって開発されました。
Diemプロジェクトは規制の問題などで中止されましたが、その技術やビジョンは、アプトスとスイという形で生まれ変わったのです。
「Diem」プロジェクトとは何だったのか?

アプトスとスイを理解するためには、その前身である「Diem」(旧Libra)プロジェクトについて知っておく必要があります。
Diemプロジェクトの概要
Diemは2019年にFacebook(現Meta)が発表したグローバルな決済システムとステーブルコインのプロジェクトでした。
当初は「Libra」という名前で発表され、後に「Diem」に改名されています。

このプロジェクトの主な目的は、
- 金融包摂の促進:銀行口座を持たない世界中の何十億もの人々に金融サービスを提供すること
- 国際送金の効率化:手数料を抑え、送金速度を速くすること
- デジタル通貨の普及:米ドルなどの法定通貨に紐づいた安定した価値のデジタル通貨を作ること
Facebook(現Meta)は様々な大企業とリブラ協会(後のDiem協会)を設立し、共同でこのプロジェクトを進めようとしていました。
しかし、世界中の規制当局からの強い反対や懸念に直面します。

多くの国の政府や中央銀行は、世界中に何十億人ものユーザーを持つFacebookが独自の通貨を発行することで、国家の金融主権が脅かされる可能性を懸念しました。
結局、2022年1月にDiemプロジェクトは正式に終了し、資産の大部分はSilvergate Capital Corporationに売却されました。
しかし、このプロジェクトで開発された技術やビジョン、そして何より優秀な開発チームは、アプトスとスイという形で新たな道を歩み始めたのです。
なぜ1つではなく2つのプロジェクトに分かれたのか?

これは多くの人が疑問に思うポイントです。
同じDiemプロジェクトから生まれたのに、なぜ別々のブロックチェーンになったのでしょうか?
分裂の主な理由
- ビジョンと設計思想の違い:アプトスは高速取引処理に重点を置き、スイはデジタル資産管理の革新を目指しました。
- 技術的アプローチの違い:同じMove言語を使いながらも、データ構造やコンセンサスメカニズムに対する考え方が異なりました。
- 市場戦略の違い:アプトスは金融・DeFi市場を、スイはNFT・ゲーム・メタバース市場をそれぞれターゲットにしました。
例えるなら、家族経営のレストランで兄弟がそれぞれの得意分野を活かして別々の店を出したようなものです。
一方はスピード重視の定食屋、もう一方は素材の質と多様性を重視したレストランという感じでしょうか。
実はこの分裂が、ブロックチェーン技術の多様な発展につながっているとも言えるのです。
共通点:Move言語とは?

アプトスとスイの最大の共通点は、どちらも「Move」というプログラミング言語を採用していることです。
Move言語はDiemプロジェクトで開発された、ブロックチェーン用の新しいプログラミング言語です。
Move言語の特徴

- 安全性重視: バグやハッキングに強い設計
- リソース指向: デジタル資産を直接プログラムで扱える
- 検証可能: コードの安全性を自動的に確認できる
身近な例で説明すると、Move言語は「お金を二重に使えない」「資産が消えたり勝手に複製されたりしない」というルールをプログラム言語レベルで保証します。
これは、財布から取り出したお金が魔法のように増えたり消えたりしないのと同じ原理です。
イーサリアムで使われるSolidity言語では、スマートコントラクトのバグが原因で大規模なハッキング事件が起きることがありました。

例えば、The DAO事件(2016年)では、約6000万ドル相当の被害が発生しました。
他にも、
・Parity Wallet事件(2017年)
・Poly Network事件(2021年)
など、ハッキングは後を絶ちません。
Move言語はこうした問題を根本から解決するために設計されているのです。
アプトスの特徴と強み

アプトスは「高速で安全な取引処理」を最大の強みとしています。
アプトスの主な特徴
- Block-STM: 並列処理技術で高いスループット(処理量)を実現
- 分散型処理: 複数の処理を同時に行うことで高速化
- 高いTPS: 理論上は100,000TPS以上(1秒間に処理できる取引数)
- 即時確定性: 取引が素早く確定する
分かりやすく例えると、スーパーのレジが1台だけだと混雑しますよね。
アプトスは多数のレジを同時に開けるようなものです。
しかも、各レジが互いに連携して、支払い処理を効率良く行えるのです。
スイの特徴と強み

スイはデジタル資産の管理に特化したブロックチェーンで、「所有権」の概念に革新をもたらします。
スイの主な特徴
- オブジェクト中心設計: すべてのアセットをオブジェクトとして扱う
- 所有権モデル: 資産の所有と管理が柔軟
- パラレル実行: 関連のない取引を同時処理
- 低いガス代: 取引手数料が安い
スイは家の鍵を管理するようなイメージです。
自分の持ち物(デジタル資産)を簡単かつ安全に管理できるだけでなく、必要に応じて他の人に貸したり、共同で使ったりすることができます。
アプトスとスイの主な違い

ここからは、両者の重要な違いを見ていきましょう。
| 比較ポイント | アプトス | スイ |
|---|---|---|
| 設計思想 | 高速な取引処理と安全性 | デジタル資産管理の革新 |
| コンセンサス | BFT(ビザンチン障害耐性) | Narwhalコンセンサス |
| データ構造 | アカウントベース | オブジェクトベース |
| 特化分野 | 金融取引、DeFiアプリ | NFT、ゲーム、メタバース |
コンセンサスメカニズム
「コンセンサス」とは、ブロックチェーンのネットワーク参加者が合意に達する方法のことです。
- アプトス: BFTベースの「AptosBFT」を採用。安全性と速度のバランスを重視
- スイ: 「Narwhal」と「Bullshark」という独自のコンセンサスを使用。メッセージの処理と合意形成を分離し、さらなる高速化を実現
村の重要な決定を例にすると、アプトスは村の長老たちが一堂に会して話し合う形式、スイは議題ごとに専門チームを作って効率的に決定する形式というイメージです。
データ管理方法
- アプトス: アカウントを中心に設計。ユーザーのアカウントがすべての基本単位
- スイ: オブジェクトを中心に設計。デジタル資産を独立したオブジェクトとして管理
例えるなら、アプトスは銀行口座のような「アカウント」が中心で、スイはデジタルな「モノ」そのものを管理する仕組みといえるでしょう。
あなたの財布(アカウント)にお金が入っているのがアプトス、あなたが持っている野球カードやフィギュア(オブジェクト)をそのまま管理するのがスイ、という感じです。
実用例と採用事例

アプトスの実用例
- 金融アプリケーション: 高速な取引処理を活かした分散型取引所(DEX)
- DeFiプロジェクト: 流動性提供や貸借サービス
- 決済システム: 大量のトランザクションを処理する必要がある場面
実際のプロジェクト例:
- Liquidswap(分散型取引所)
- Tortuga(ステーキングプラットフォーム)
- Aptos Name Service(ドメインサービス)
スイの実用例
- NFTプラットフォーム: デジタルアートや収集品の管理
- ゲーム: ゲーム内アイテムやキャラクターの所有権管理
- メタバース: 仮想空間での資産管理
実際のプロジェクト例:
- Sui Move Analyzer(開発ツール)
- Ethos Wallet(ウォレット)
- Suiマーケットプレイス(NFT取引所)
将来統合の可能性はあるのか?

多くの人が気になるのは「将来的にアプトスとスイは統合されるのか?」という点でしょう。
統合の可能性
結論から言うと、完全な統合は技術的に非常に難しいと言えます。
その理由は:
- 根本的な設計思想の違い: アカウントベースとオブジェクトベースという基本設計が異なります。
- コンセンサスメカニズムの違い: BFTとNarwhalというコンセンサスアルゴリズムの違いは、単純に統合できるものではありません。
- 異なるエコシステム: それぞれ独自のアプリケーション、開発者コミュニティ、投資家が育っています。
例えるなら、電車と車を統合して新しい乗り物を作るようなもので、技術的には可能かもしれませんが、現実的ではないでしょう。
協力の可能性
ただし、両者が協力して相互運用性を高める可能性はあると思います。
例えば:
- Move言語の共同開発・標準化
- ブリッジ技術によるアセット連携
- 開発者ツールの共有
これは、電車と車が別々の乗り物でありながらも、駅とパーキングを隣接させて乗り換えを便利にするようなイメージです。
将来性と課題

アプトスの将来性と課題
将来性:
- 高速処理能力を活かした大規模金融システムへの応用
- 企業向けブロックチェーンソリューションの提供
課題:
- 開発者コミュニティの拡大
- Move言語の普及と学習ハードルの低減
スイの将来性と課題
将来性:
- ゲームやメタバースとの連携
- NFTの実用性向上と新たな応用
課題:
- ネットワークの安定性と拡張性の証明
- 一般ユーザー向けのインターフェース改善
私の個人的な意見

従来の金融システムを模倣するだけでなく、デジタル世界に「物理的所有権」の概念を持ち込むスイのアプローチは、メタバースやWeb3の未来において決定的な優位性になるでしょう。
アプトスが従来の金融機関のような「口座管理」に優れる一方、スイは「モノそのもの」を管理できる点で、デジタルネイティブな若い世代により受け入れられると予想します。
私たちの日常生活がますますデジタル化する中で、「口座」よりも「モノ」の概念のほうが直感的で、未来のインターネットとの親和性が高いと確信しています。
また、この「分裂」は一見マイナスに思えますが、実は良い競争を生み出し、ブロックチェーン技術全体の発展を加速させていると思います。
多様性は技術革新の原動力なのです。
結論

アプトスとスイは、どちらもMove言語を採用したレイヤー1ブロックチェーンであり、元Facebookのプロジェクトから生まれた兄弟のような関係です。
しかし、その設計思想と特化分野には明確な違いがあります。
アプトスは高速で安全な取引処理を強みとし、金融アプリケーションやDeFiでの活用が期待されています。
一方、スイはデジタル資産の管理に革新をもたらし、NFT、ゲーム、メタバースでの可能性を秘めています。
Diem(旧Libra)から分かれて誕生した2つのプロジェクトは、完全に統合される可能性は低いものの、それぞれの得意分野で発展し、相互運用性を高めることで、ブロックチェーン技術の可能性をさらに広げていくことでしょう。
これからブロックチェーンの世界に足を踏み入れる方は、自分の興味や目的に合わせて、アプトスとスイの特徴を理解し、活用していくことをおすすめします。
未来を形作る技術の最前線に、あなたも参加してみませんか?
この記事はアプトスとスイの情報提供を目的としており、投資アドバイスではありません。暗号資産投資にはリスクが伴いますので、自己責任で行ってください。

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
分かりやすい解説で、ブロックチェーン革命の潮流を一般に広めることを目指す。初心者から上級者まで、最新情報を求めるすべての人に役立つ情報発信を心がけている。
