トルコ当局、HEX創業者リチャード・ハート拘束を正式確認。715万ドルと6つのコールドウォレットを押収

トルコ司法相のアクン・ギュルレク氏が、暗号資産プロジェクト「HEX」「PulseChain」の創業者リチャード・ハート容疑者をイスタンブールで拘束したと正式に発表した。

警察は関連先15か所を捜索し、多額の現金と6つのコールドウォレット、複数の銃器を押収している。ハート容疑者は2024年12月からインターポールの国際手配を受けていた人物だ。

この記事では押収品の詳細、国際手配の背景、関連トークンへの市場の影響を整理する。

トルコ司法相が拘束を正式確認

トルコ司法相が拘束を正式確認

トルコのギュルレク司法相は10月17日、HEXとPulseChainの創業者リチャード・ハート容疑者をイスタンブールで拘束したとX(旧Twitter)への投稿で発表した。法的な氏名はリチャード・ジェームズ・シューラー。10月14日にイスタンブールのベシクタシュ地区で妻とともに身柄を確保された。

HEXは2019年に登場したイーサリアム基盤のトークンだ。預けた期間と金額に応じて高利回りをうたう仕組みで、個人投資家の間で話題になった。PulseChainはハート容疑者が後から立ち上げた別のブロックチェーンで、どちらも同人物が中心的な発信者を務めてきた。

作戦を主導したのはイスタンブール首席検察局だ。市警の情報部門と金融犯罪部門が連携し、トルコの情報機関であるMİT(国家情報機構)も支援した。警察はその後、ハート容疑者のボディーガードとして働いていたとみられる3人も拘束した。

トルコ国営アナドル通信は、ハート容疑者の妻名義の車両9台が差し押さえられたと別途報じた。司法手続きと押収物の鑑定は現在も続いている。

押収品の内訳と捜査の広がり

押収品の内訳と捜査の広がり

ギュルレク司法相の発表によると、警察はベシクタシュ、ユスキュダル、サリエルの3地区にまたがる15か所を捜索した。押収された主な物品は現金715万ドル、コールドウォレット6つ、銃器7丁、弾薬1,400発だ。

コールドウォレットとは、インターネットから切り離して暗号資産の秘密鍵を保管する専用機器のこと。ネット接続されたホットウォレットより安全性が高いため、大口保有者が資産管理に使うことが多い。押収された6つの端末にどの程度の資産が入っているかは現時点で明らかになっていない。

このほか、16万トルコリラ、腕時計28本、宝飾品97点、バッグ300個、グラフィックカード19枚も見つかった。銃器の内訳は長銃身タイプのライフル4丁と無許可の拳銃3丁という。

報道と公式発表の食い違い

拘束が最初に報じられた10月14日時点では、トルコメディアは押収された現金を400万ドル、高級腕時計の数を64本と伝えていた。今回の司法相の公式発表により、現金は715万ドル、腕時計は28本に修正された形だ。

現金の額が約1.8倍に増えた理由について司法省は説明していない。追加の家宅捜索で差額が見つかった可能性もあれば、報道段階の推計が不正確だった可能性もある。いずれにせよ、トルコ当局が押収規模を従来報道より大幅に上方修正した点は重要だ。

国際手配からSEC訴訟まで、事件の経緯

国際手配からSEC訴訟まで、事件の経緯

ハート容疑者をめぐる捜査は、トルコ国内にとどまらない。ギュルレク司法相は、今回の拘束がインターポールのレッドノーティス(国際手配書)に基づくものだと言及した。レッドノーティスとは、国際刑事警察機構が加盟国に対し、特定人物の身柄拘束を要請する仕組みだ。

フィンランド主導の国際手配

このレッドノーティスは2024年12月、フィンランドの要請を受けて発行された。フィンランド当局はハート容疑者を深刻な脱税と暴行の疑いで追っている。ギュルレク司法相はさらに、米国とフィンランドにおける10億ドル規模の暗号資産詐欺疑惑にも言及した。

トルコがフィンランドまたは米国から正式な身柄引き渡し要請を受けているかは明らかになっていない。引き渡し手続きは外交関係や現地法の適用次第で長期化することが多く、今後数か月にわたる法的争いが予想される。

米SECの訴訟は管轄権で却下

米国では証券取引委員会(SEC)がハート容疑者を詐欺容疑で提訴していたが、連邦地裁は2025年2月、管轄権を理由に訴訟を却下した。管轄権とは、その裁判所が事件を審理できる権限のこと。米国外での活動が中心と判断され、米国の裁判所で審理する根拠が弱いとされたのだ。

SECは同年4月に再提訴を見送った。このため米国では刑事・民事のいずれも、ハート容疑者に対する強制力を持った手続きが止まっている状態だった。今回のトルコでの拘束は、フィンランド主導の捜査が国際的に前進したことを意味する。

HEXトークンへの影響と今後の注目点

HEXトークンへの影響と今後の注目点

ハート容疑者が2019年に立ち上げたHEXトークンは、拘束の報を受けて下落した。コインゲッコーのデータによると、過去24時間で約14%の値下がりだ。

創業者の拘束は、プロジェクトの信頼に直接打撃を与える。HEXは「高い利回りを約束する貯蓄型トークン」として個人投資家に広く販売されてきた経緯がある。中心人物が国際手配される事態となれば、開発体制の継続性やトークンの流動性に不安が生じても不思議ではない。

一方で、HEXの価格下落率が約14%にとどまっている点はやや意外でもある。創業者逮捕という最悪に近いニュースとしては、市場が一定程度織り込んでいた可能性や、流動性の低さゆえに大口保有者が一度に売却しづらい状況だった可能性が考えられる。

コールドウォレットの中身と今後の展開

今後の焦点は、押収された6つのコールドウォレットの中身だ。警察が秘密鍵を確保できなければ資産を移せず、逆に秘密鍵がハート容疑者側に残っていれば、外部から資産を動かせる余地が残る。捜査当局がどのように端末を解析するのか、暗号資産追跡の専門家の関心を集めている。

もう1つの注目点は、トルコが身柄引き渡しに応じるかどうかだ。フィンランドと米国のどちらの要請を優先するのか、あるいはトルコ国内での立件を進めるのか。ハート容疑者の弁護人やヘルシンキ警察への取材が進んでおり、今後の公式発表が待たれる。

この記事のポイント

  • トルコ司法相がリチャード・ハート容疑者の拘束を正式確認、身柄確保は10月14日だった
  • 現金715万ドルとコールドウォレット6つ、銃器7丁、弾薬1,400発を押収
  • 妻と3人のボディーガードも拘束、妻名義の車両9台を差し押さえ
  • 国際手配はフィンランド主導で2024年12月に発行、米国ではSECの訴訟が管轄権で却下されていた
  • HEXトークンは過去24時間で約14%下落
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