分散型取引所Hyperliquidが、実世界の出来事を対象とした新たな予測市場を正式に始動させた。核心は、その運営をバリデーター主導で行う点にある。
つまり、外部のオラクルに頼らず、Hyperliquidのチェーン自体が情報の信頼性を担保する仕組みだ。これは、暗号資産と現実世界を結びつける「予測市場」という分野におけるガバナンスのあり方を大きく変える可能性を持つ。
バリデーターがオラクルとなる新設計

今回の発表で最も注目すべきは、予測市場の決着方法だ。Hyperliquidは、これまで必要とされてきた外部オラクルシステムへの依存を完全に断ち切った。
オラクルとは、ブロックチェーンの外側にある情報(例えば、米国の消費者物価指数や選挙結果)をチェーン上に伝えるシステムのことを指す。従来は、この外部情報の正確性をどう保証するかが大きな課題だった。Hyperliquidの開発者であるYaugourt氏は、この変更について「バリデーターの集合体が今やオラクルそのものだ」とXで説明している。
具体的な仕組みはこうだ。Hyperliquidのバリデーターは、チェーンの通常運用の一環として、自動化されたニュースフィードソフトウェアを稼働させる。このソフトが配信する「結果市場(アウトカム・マーケット)」に対し、バリデーターたちはルールの明確さ、正確性、市場の質といった様々な要素を考慮し、その展開と決着に投票する。これにより、現実世界のイベント解決がチェーンのネイティブな機能として組み込まれた格好だ。
既存プラットフォームとの明確な差別化

このバリデーター統治型のアプローチは、既存の主要な予測市場プラットフォームとは一線を画すものである。
PolymarketやKalshiとの比較
例えば、Polymarketは「UMA(Universal Market Access)の楽観的オラクル」を採用している。これは市場参加者が結果を提案し、異議があればそれを争うことができる仕組みだ。参加者間の経済的インセンティブによって真実を見つけ出す、いわば「多数決による真実の承認」に近い。
一方、CFTCの規制下で運営されるKalshiは、より中央集権的なモデルを取っている。内部チームが証拠を精査し、最終的な市場の決着を決定する。これは効率的だが、運営主体への信頼が不可欠となる。
Hyperliquidの方式は、これらの中間に位置しつつ、全く新しいとも言える。中央集権的なチームではなく、プロトコルに参加するバリデーターの分散的な合意によって決着をつけるのだ。これにより、単一の管理者を信頼する必要も、複雑な異議申し立てプロセスに時間を費やす必要もなくなる、というのが彼らの狙いだ。
最初の市場とHIP-4による基盤拡張

この新機能は、Hyperliquidのプロトコルを永続的先物取引から予測市場へと拡張する「HIP-4」アップグレードに基づいている。
5月2日には、結果市場が限定的な機能でメインネットにローンチされたことが発表されていた。今回の発表は、その機能を本格的に有効化する動きと言える。HIP-4で定義されたこれらの「結果」は、完全に担保された契約であり、固定された範囲内で決済される。レバレッジやロスカット(清算)の概念は存在しないため、初心者でも仕組みを理解しやすい構造だ。
実際に5月26日には、最初のオフチェーンイベント予測市場として「5月の米国消費者物価指数(CPI)前年同月比」が立ち上げられた。The Blockの取引ページによると、この市場はローンチからまもなく、出来高が11,268ドルに達している。テーマがマクロ経済指標であることから、単なる投機対象としてではなく、金融情報ツールとしての需要も見込まれているようだ。
HYPEトークンの市場における反応

こうしたプロトコルの進化をよそに、HyperliquidのネイティブトークンであるHYPEの価格は短期的には調整した。The Blockの価格ページによると、過去24時間で3.5%下落し、60.25ドルで取引されている。
ただし、より広い時間軸で見ると状況は異なる。HYPEは過去7日間で26.8%の上昇を記録しており、今回のニュースを含む一連のエコシステム拡大への期待感が、週足ベースでの価格を押し上げているとの見方がある。ニュースが直接的に価格高騰を引き起こしたわけではないが、プラットフォームの基礎的な価値向上に繋がる取り組みとして、市場参加者からは中長期的に評価されているようだ。
この記事のポイント
- HyperliquidがHIP-4の一環として、実世界のイベントを対象とした予測市場を開始した
- バリデーター集団が外部オラクルの代わりに市場の展開と決着を管理する新方式を採用した
- Polymarket(参加者間の異議申し立て)やKalshi(内部チームによる決定)とは異なる分散型ガバナンスモデルである
- HYPEトークンは短期的に調整したものの、過去1週間では約27%の上昇を維持している
- この動きは、ガバナンスの信頼性をプロトコル自体に組み込む重要な実験と位置付けられる

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
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