ビットコイン(BTC)が2月25日(水)、一時7万ドル(約1,050万円)を突破した。イーサリアム(ETH)は13%超、ソラナ(SOL)は15%超の急騰を記録し、暗号資産市場全体の時価総額は約8%増加して2.5兆ドル規模に達した。
この日の急反発を語る上で欠かせないのが、米金融大手ジェーン・ストリート・グループ(Jane Street)に対して提起されたインサイダー取引訴訟だ。訴訟のニュースが出た直後から「毎朝10時のBTC売り崩し」疑惑が市場参加者の間で一気に燃え上がり、買いが買いを呼ぶ連鎖が起きた。
ただし、この「10時ダンプ」がジェーン・ストリートによるものだという公的な証拠は存在しない。噂の真偽よりも、噂が消えたという「空気の変化」が市場を動かした日だった。
急騰の全体像——BTC・ETH・SOL、何がどれだけ上がったか

市場時価総額が一日で$1,700億増加
CoinGeckoのデータによると、暗号資産市場全体の時価総額は2月25日(水)に約8%上昇し、2.5兆ドル前後に達した。前日比での増加額は約1,700億ドル(約25兆円)に相当し、これは数週間ぶりの最大規模の一日上昇だ。
BTCは日中に一時7万ドルを超えた。ETHは13%を上回る上昇を記録し、SOLは15%超の急騰を見せた。この3銘柄が足並みをそろえて2桁近い上昇を記録するのは、直近の弱気相場では珍しい現象だ。
直前まで続いていた約46%の下落
今回の急騰の重みを理解するには、直前の相場環境を押さえる必要がある。BTCは2025年10月に12万ドルを超える史上最高値を記録した後、2月上旬には6万5,000ドルを割り込む水準まで下落していた。高値からの下落幅は46%超に達し、市場全体に売り疲れと悲観論が漂っていた時期だ。
ETHも高値圏から継続的な調整を受け、SOLも同様の展開が続いていた。ショートポジション(価格下落を見込む売り建て)が積み上がった状況下で今回の急騰が起きたことで、踏み上げ(ショートスクイーズ)の連鎖が発生したとみられる。
ジェーン・ストリート訴訟——何が問われているのか

テラ・ルナ崩壊と「内部情報取引」の疑い
今回の訴訟は、テラフォームラボス(Terraform Labs)の清算管財人が原告となって提起した。訴えの骨子は、ジェーン・ストリートがテラフォーム社の内部者から非公開情報を入手し、ドゥ・クォン氏が率いたテラ・ルナ(Terra-Luna)エコシステムの崩壊に絡む取引で利益を得たというものだ。ウォール・ストリート・ジャーナルが詳細を報じた。
「インサイダー取引(Insider Trading)」とは、一般に公開されていない重要情報を使って金融商品を売買する行為だ。株式市場では厳しく規制されているが、暗号資産市場では法規制の適用範囲が長らく不明確だった。今回の訴訟は、その境界線をどこに引くかという問いを突きつける事例でもある。
テラ・ルナ崩壊とは何だったか
テラ・ルナの崩壊は2022年5月に発生した。USTと呼ばれるアルゴリズム型ステーブルコイン(価格を特定の通貨に連動させる設計の暗号資産)がドルとの連動(ペッグ)を喪失し、連鎖的に関連トークンが暴落。市場全体から推計400億ドル以上の価値が失われた。
アルゴリズム型ステーブルコインとは、担保資産を持つのではなく、アルゴリズム(自動化された計算ロジック)によって価格を維持しようとする設計だ。市場の信頼が崩れると価格維持の仕組み自体が破綻するという、本質的な脆弱性を抱えていた。
この崩壊は2022年の暗号資産弱気相場を加速させた主因の一つとして広く認識されている。訴訟の被告であるジェーン・ストリートが、崩壊前にこの情報を掴んでいたとすれば、法的・道義的な問題は大きい。
ジェーン・ストリートとはどんな企業か
ジェーン・ストリートは高頻度取引(HFT: High-Frequency Trading)で知られる米国の量的運用会社だ。株式・先物・オプション・ETFなど多様な市場でマーケットメイク(売買の仲介役となり市場に流動性を供給する役割)を担う。HFTとは、コンピュータアルゴリズムを使って1秒間に数千回以上の注文を出す取引手法のことだ。
同社はプライベートカンパニーであるため財務情報の開示義務がなく、実際の取引戦略は外部にほぼ知られていない。今回の訴訟に対する同社からの公式コメントも現時点では出ていない。
「午前10時のダンプ」——噂か、実在した売り圧力か

SNSで急拡散した「アルゴリズム売り崩し」論
訴訟のニュースが伝わると、暗号資産コミュニティではある仮説が急速に拡散した。「ジェーン・ストリートが毎朝10時(東部標準時)にBTCを機械的に売却するアルゴリズムを何ヵ月も稼働させており、それが市場の慢性的な売り圧力になっていた」という説だ。
暗号資産コメンテーターのバーク(Bark)氏はX(旧Twitter)に「ジェーン・ストリートは毎朝10時に毎日何ヵ月もBTCを売り崩していた。リテール投資家を踏みつぶし、安値で買い戻していた。訴訟を受けた瞬間に止まった。午前10時のダンプが消えた。そして今日、BTCは何ヵ月ぶりかの大幅高を記録した」と投稿した。
オンチェーン分析者のノンジー(Nonzee)氏も同様の観察を共有した。「何ヵ月もの間、10時といえばジェーン・ストリートのダンプを意味していた。昨日、彼らはインサイダー取引訴訟を受けた。今日の10時、BTCは代わりに急騰した」と述べた。
証拠なき噂が市場を動かすメカニズム
ただし、ザ・ブロック(The Block)の報道が明示するように、ジェーン・ストリートが特定の時刻に組織的にBTCを売却していたことを示す公的な証拠は確認されていない。特定の時間帯に売り圧力が集中しているように見えた可能性はあるが、その原因がジェーン・ストリートのアルゴリズムであるという証明はない。
それでも市場は反応した。ブルームバーグのシニアETFアナリスト、エリック・バルチュナス氏はXに「お化けはいなくなった。それが今の暗号資産コミュニティと価格行動の空気感だ。それを排除するだけで持続的な反発が起きるのか。答えはこれから出る」と投稿した。
バルチュナス氏の言葉が示すように、今回の動きは「事実の確認」ではなく「疑いが消えた」という心理的な変化によって引き起こされた面が大きい。市場センチメントとは本来そういうもので、確証のない情報でも、多くの参加者が信じれば価格は動く。その逆も然りだ。
この記事のポイント
- 2月25日(水)、BTCが一時$70,000を突破。ETH+13%超・SOL+15%超。市場時価総額は約8%増の$2.5兆に回復した
- 上昇の直接的な引き金は、米金融大手ジェーン・ストリートへのインサイダー取引訴訟。テラ・ルナ崩壊に絡む内部情報の不正利用が問われている
- 暗号資産コミュニティで「毎朝10時のBTC売り崩しアルゴリズム」説が急拡散。訴訟と同日に10時台の売り圧力が消えたとされる
- この説を裏付ける公的証拠は存在しない。ただし「疑惑が消えた」という心理的変化が市場を動かした
- BTCは直近の史上最高値$120,000から$65,000前後まで下落していた局面での反発。持続的なトレンド転換かどうかはこれから問われる
出典
- The Block「Bitcoin, Ethereum and Solana rally as analysts flag pause in ’10 a.m. dump’ after Jane Street lawsuit」(2026年2月25日)

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