米連邦地裁、ミネソタ州の予測市場禁止法を差し止め。連邦法優位の判断

米連邦地裁が7月27日、ミネソタ州で成立した予測市場を禁止する州法に対し、暫定的な差し止め命令を下した。この判断は、連邦法である商品取引所法(CEA)が州法に優先するという考え方を示すものだ。

予測市場は、選挙結果や経済指標など将来の不確実な出来事の結果を売買する市場である。今回の決定は、急成長するこの新興市場と、米国における規制の枠組みを考える上で重要な先例となる。

なぜ予測市場は規制の焦点となるのか

なぜ予測市場は規制の焦点となるのか

予測市場とは、将来の出来事の結果に賭けることができるオンラインプラットフォームを指す。たとえば「次の大統領選で誰が勝つか」「今月の消費者物価指数はどうなるか」といった事柄に対し「Yes」か「No」、あるいは確率そのものを売買する仕組みだ。この仕組みは、集合知を集約するツールとして学術的にも注目されている。

一方で、規制当局にとっては扱いが難しい存在でもある。金融派生商品(デリバティブ)に類似しているためだ。米国では、商品先物取引委員会(CFTC)が先物取引やスワップ取引といったデリバティブ市場を連邦レベルで監督している。

ここで重要な概念が「スワップ」だ。スワップとは、将来の特定の条件に基づいてキャッシュフローを交換する契約を指す。予測市場の契約は、この「スワップ」に該当する可能性が高いとみなされており、その場合、規制権限は連邦政府のCFTCにあるという理屈になる。

予測市場大手が直面した規制の壁

今回の訴訟の原告となったのは、Kalshi(カルシ)とPolymarket(ポリマーケット)という予測市場の主要事業者、そしてCFTCという異色の組み合わせだ。通常、規制する側とされる側が対立することが多いが、今回は「連邦法による規制の枠組みを守る」という共通の目的で手を組んだ形である。

発端は2026年初頭、ミネソタ州が予測市場の運営を犯罪とする州法を成立させたことにある。この法律は、州内の住民がこうしたプラットフォームを利用すること、そして事業者がサービスを提供することを禁止する内容だった。

ミネソタ州法の何が問題だったのか

ミネソタ州法の何が問題だったのか

Kalshi、Polymarket、そしてCFTCの3者は、この州法が連邦法である商品取引所法(CEA)に違反すると主張して提訴した。具体的には、CEAがCFTCに与えているスワップ取引に対する「専占的な(排他的な)管轄権」を、州法が侵害しているというロジックだ。

米国の法体系では、連邦法が特定の分野を排他的に規制すると定めている場合、州法はそれと矛盾する規制を設けることができない。これは「専占(せんせん、Preemption)」と呼ばれる法理で、今回の裁判の最大の争点となった。

つまり、予測市場の契約が連邦法の定義する「スワップ」に当たるならば、その規制権限は連邦政府にのみ属する。州が独自に禁止したり課税したりすることは、連邦法に反する可能性が高い、というわけだ。

裁判官が示した「連邦法優位」の見解

ミネソタ州連邦地方裁判所のキャサリン・メネンデス判事は、原告側の主張に理解を示した。判決文の中でメネンデス判事は「KalshiとPolymarket USのプラットフォームに上場されている取引の多くについて、ミネソタ州法の適用は連邦法によって排除される(専占される)」と述べ、原告側が本案訴訟で勝訴する可能性が高いと判断した。

裁判官は、原告3者が「本案において勝訴する可能性が高いこと」「差し止めが認められなければ回復困難な損害(Irreparable Harm)が生じること」という、暫定差し止め命令に必要な2つの要件を満たしていると認定した。

「ラブアイランド」を巡る境界線

判決は興味深い論点にも触れている。裁判官は、予測市場で取引される一部の契約、たとえばテレビ番組「ラブアイランド」の勝者予想のようなものは、連邦法の「スワップ」に該当せず、州法の規制対象になり得る可能性を示唆した。

しかし、そうした一部の契約だけを対象に法律の適用を差し止めることは現実的に困難だと指摘。結果として、法律全体の効力を暫定的に停止する判断を下した。この命令は、本案についての最終判決が出るまで効力を持ち続ける。

暗号資産と予測市場に与える影響

暗号資産と予測市場に与える影響

この判決は、Polymarketのように暗号資産と深く結びついたプラットフォームにとって大きな意味を持つ。Polymarketはポリゴン(MATIC)ネットワーク上で動作し、決済にUSDC(米ドル連動型ステーブルコイン)を用いる代表的な分散型予測市場だ。

州ごとに異なる規制が乱立すれば、国境のないインターネット上のサービス提供は事実上不可能になる。今回の判断は、連邦レベルでの統一的なルール作りを後押しするものであり、業界全体にとっては事業の予見可能性を高める材料となる。

もっとも、今回の決定はあくまで暫定的なものだ。今後、本格的な審理を経て最終的な判断が下される。CFTCが予測市場に対してどのような具体的規制を設けるのか、あるいは議会が新たな立法を行うのか。規制の枠組みが完全に固まるまでには、まだ時間がかかるとみられている。

この記事のポイント

  • 米連邦地裁がミネソタ州の予測市場禁止法を差し止め。連邦法(CEA)が州法に優先するという判断を示した。
  • Kalshi、Polymarket、CFTCの3者が原告となり、州法が連邦法の専占権限を侵害していると訴えていた。
  • 予測市場の契約を連邦法上の「スワップ」と捉えることで、規制の主導権が連邦政府にあることを明確化した形だ。
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