Ledger Nano S PlusでイーサリアムネットワークのUSDTを受け取るなら、USDT専用アプリではなく「Ethereumアプリ」を入れてETHアカウントを作ればよい。USDTはETHと同じアドレスで受け取れる。ただし送金する時は、ガス代として同じアカウントにETHが必要になる。
なぜLedgerに「USDTアプリ」が見つからないのか

イーサリアム上のUSDTは独立したブロックチェーンではなく、イーサリアムの上で動く「トークン」だからだ。そのためLedgerではEthereumアプリがまとめて管理する。
イーサリアム上のトークンはERC-20という共通規格で作られている。ERC-20とは、イーサリアムでトークンを発行するためのルールのことだ。USDTやUSDCなど多くのトークンがこの規格に沿っている。
たとえるなら、イーサリアムのアドレスは1つの郵便受けのようなものだ。ETHという手紙もUSDTという手紙も、同じ郵便受けに届く。郵便受けを2つ用意する必要はない。
要は、Ethereumアプリさえ入っていれば、ETHもERC-20のUSDTも同じアカウントで扱えるということだ。
USDTは複数のネットワークに存在する
USDTはイーサリアムだけでなく、TronやBNB Smart Chainなど複数のネットワークで発行されている。名前は同じUSDTでも、ネットワークごとに別物として扱われる。
| ネットワーク | 取引所での表記例 | アドレスの形 | ガス代に使う通貨 |
|---|---|---|---|
| Ethereum | ERC20 | 0xから始まる | ETH |
| Tron | TRC20 | Tから始まる | TRX |
| BNB Smart Chain | BEP20 | 0xから始まる | BNB |
この記事では、イーサリアムネットワーク(ERC20)で受け取る前提で手順を説明する。
LedgerでUSDTを受け取る準備の手順

準備は3段階で終わる。Ethereumアプリの導入、ETHアカウントの追加、USDTの表示設定だ。PC側ではLedger Wallet(旧Ledger Live)を使う。
Ethereumアプリをデバイスにインストールする
最初に、Nano S Plus本体へEthereumアプリを入れる。BitcoinアプリやBitcoin Cashアプリが入ったままでも問題ない。
- Nano S PlusをPCにつなぎ、PINを入力してロックを解除する
- Ledger Walletを開き、「マイLedger」(英語表示ではMy Ledger)を選ぶ
- デバイス側でLedger Walletからの接続を許可する
- アプリ一覧からEthereumを探してインストールする
アプリ一覧で「USDT」や「Tether」を探しても見つからないのは正常だ。ERC-20のUSDTはEthereumアプリで扱うためだ。
Ledger Walletにイーサリアムアカウントを追加する
次に、Ledger Walletの画面でETHアカウントを作る。アカウントとは、Ledger Wallet上で残高や履歴を見るための入れ物のことだ。
- Ledger Walletの「アカウント」から「アカウントを追加」を選ぶ
- 一覧からEthereum(ETH)を選ぶ
- デバイスでEthereumアプリを開く
- 表示に沿ってアカウント名を付けて追加する
USDTアカウントを表示させる
USDTはETHアカウントの「中」に表示される仕組みだ。USDTを受け取ると、ETHアカウントの下にトークンとして自動で表示されることが多い。
受け取る前から表示させたい場合は、「アカウントを追加」でTether USD(USDT)を検索して追加する方法もある。その場合も、親となるETHアカウントにひも付けられる。画面の細かな表示はバージョンによって異なる。
送金元サービスからUSDTを出金するときのアドレスの考え方

ETHを受け取る時もUSDTを受け取る時も、伝えるアドレスは同じ0xから始まるETHアドレスでよい。何を送るかを決めるのはアドレスではなく、送金元サービスの出金画面だ。
ここで混乱する人は多い。「ETHアドレスを渡したらETHが届くのでは」と考えがちだが、そうはならない。送金元で「USDTを出金」と選べば、届くのはUSDTだ。
出金画面では、通貨にUSDT、ネットワークにEthereum(ERC20)を選ぶ。そして宛先欄に、Ledger Walletで表示したETHアドレスを貼り付ける。ETHを出金する時は、通貨をETHにして同じアドレスを貼ればよい。
要は、アドレスは「届け先の住所」で、中身を決めるのは送り主ということだ。
受信アドレスはデバイスの画面で照合する
Ledger Walletで「受信」を押すと、アドレスをデバイスで確認するよう求められる。PCの画面とデバイスの画面のアドレスが一致しているか、必ず照らし合わせる。
PCがマルウェアに感染していると、表示中やコピー時にアドレスがすり替えられることがある。デバイスの画面はPCから改ざんされにくいので、最終確認の拠り所になる。貼り付けた後も、先頭と末尾の数文字を見比べておくと安心だ。
初回は少額でテスト送金する
はじめての出金では、まず少額だけ送って着金を確かめる。届いたのを確認してから、残りをまとめて送れば失敗の被害を抑えられる。
ただしイーサリアムでは送金のたびに手数料がかかる。テストを何度も繰り返すと手数料がかさむので、1回で十分だ。
USDTを送るのにETHが必要な理由と用意する量

USDTを受け取るだけならETHは不要だ。しかしLedgerからUSDTを送る時は、同じアカウントにETHが入っていないと送金できない。
イーサリアム上の取引には、ガス代という手数料がかかる。ガス代は、ネットワークに取引を処理してもらう対価のことだ。これは送る通貨がUSDTでも、必ずETHで支払う決まりになっている。
そのため、USDTを出金するのと同じアドレスへ、少額のETHも出金しておく。順番はどちらが先でも構わない。大事なのは、USDTを送る時点でETHが届いていることだ。
ETHはどれくらい入れておけばよいか
必要なガス代はネットワークの混雑具合で変わるため、固定の金額は言えない。USDTの送金はETH単体の送金より、ガス代がやや高くなる傾向がある。
目安としては、予定している送金回数より少し多めに用意しておくと安心だ。Ledger Walletの送金画面では、実行前に見込みの手数料が表示される。足りない場合は、残高不足を知らせる表示が出て先に進めないことが多い。
なお、送金元サービスから出金する際の手数料は、そのサービス側で別に差し引かれる。Ledger内のETHは使われない。
Ledgerから別のサービスへUSDTを送金する手順

送金する時は、ETHアカウントではなく、その下にあるUSDTのアカウントを選んで「送信」する。新たにUSDT用の何かをダウンロードする必要はない。
先に、送金先サービスでUSDTの入金アドレスを取得しておく。この時、入金ネットワークがEthereum(ERC20)になっているか必ず確認する。送金先がERC20の入金に対応していなければ、送ってはいけない。
- Nano S Plusをつなぎ、Ethereumアプリを開く
- Ledger WalletでETHアカウント内のUSDTを選ぶ
- 「送信」を押し、送金先の入金アドレスを貼り付ける
- 送るUSDTの数量を入力する
- 表示されたネットワーク手数料(ETH)を確認して進む
- デバイス画面で金額と宛先アドレスを確認する
- 内容が正しければデバイスのボタンで承認する
デバイスの画面は英語で表示されることが多いが、送金額と宛先アドレスが順番に出てくる。PCの画面に貼り付けたアドレスと、デバイスに出たアドレスが同じかを最後に照合する。承認すると取引がネットワークに送られ、数分〜数十分ほどで反映されることが多い。
ネットワーク間違いで資産を失わないための注意点

USDTのトラブルで最も多いのは、送る側と受け取る側でネットワークが食い違うことだ。出金時も入金時も、通貨名だけでなくネットワーク名まで必ず確認する。
BEP20で送ってしまった場合はどうなるか
BNB Smart Chainのアドレスも0xから始まるため、ETHアドレスにそのまま送れてしまう。この場合、USDTはイーサリアムではなくBNB Smart Chain上の同じアドレスに届いている。
自分の秘密鍵で管理しているアドレスなら、Ledger WalletでBNB Smart Chainのアカウントを追加すると確認できる場合が多い。ただし、送り出すにはガス代としてBNBが必要になる。焦って操作せず、Ledgerの公式サポート情報を確認してから対応したい。
送金先が取引所の場合はさらに慎重に
取引所の入金アドレスに、対応していないネットワークで送ると反映されないことがある。取り戻せるかどうかは取引所の対応次第で、手数料がかかったり、救済されなかったりするケースもある。
入金画面で表示されたネットワークと、自分が送るネットワークが一致しているか確認してから送金する。迷ったら少額のテスト送金を挟むのが確実だ。
リカバリーフレーズは誰にも教えない
USDTの受け取りや送金で、24単語のリカバリーフレーズを入力する場面は一度もない。サポートを名乗る人物やサイトに求められても、絶対に入力しない。
よくある質問
USDTを受け取るだけでもETHは必要?
受け取るだけならETHは不要だ。ガス代は送る側が支払うためだ。ただし受け取ったUSDTをどこかへ送る時は、同じアカウントにETHが必要になる。
ETHとUSDTのアドレスが同じで本当に大丈夫?
問題ない。ERC-20のトークンは、すべてETHと同じアドレスで管理される仕組みだ。届く中身は、送金元で選んだ通貨によって決まる。
USDTを受け取ったのにLedger Walletに表示されない
まず、送金元の出金履歴にある取引ハッシュをEtherscanで検索し、取引が完了しているか確認する。完了していれば資産は届いているので、Ledger Walletの同期を待つか、USDTのアカウントを手動で追加する。ネットワークがERC20以外だった可能性も確認しておく。
Tron(TRC20)のUSDTもLedgerで受け取れる?
受け取れる。その場合はデバイスにTronアプリを入れ、Ledger WalletでTronのアカウントを追加する。アドレスはTから始まる別のものになり、送金時の手数料にはTRXを使う。
覚えのないトークンがアカウントに届いていたら?
詐欺目的で一方的に送りつけられたトークンの可能性が高い。操作しようとせず、そのまま放置するのが安全だ。トークン名に書かれたサイトへアクセスしたり、承認操作をしたりしないこと。
この記事のポイント
- ERC20のUSDTはEthereumアプリで管理し、専用アプリは存在しない
- ETHとUSDTは同じ0xアドレスで受け取れる
- 届く通貨は送金元の出金画面で選んだもので決まる
- USDTを送る時はガス代用のETHが同じアカウントに必要だ
- 出金側と入金側のネットワークが一致しているか必ず確認する

「エミリーズ・クリプト・インサイダー」のリサーチ担当として、暗号資産の現場で日々生まれる疑問や悩みを丹念に追いかける。
Reddit や海外フォーラムに寄せられる声を読み解き、「初心者がつまずきやすいポイント」「経験者でも見落としがちな落とし穴
」を一つずつ記事として整理している。
専門的な話を誰もが理解できる言葉に置き換えることに全力を注ぐ。情報の正確さと読みやすさの両立を信条としている。
