もくじ
Magic Edenの戦略転換:BTC・ETHサポート終了の背景

マルチチェーン路線の撤回とSolanaへの回帰
ルー氏の発表によると、Magic Edenは今後2週間以内にビットコインおよびイーサリアムに関連するアセットの取引を停止する。これには、イーサリアムのレイヤー2であるPolygon(ポリゴン)やBase(ベース)上のアセットも含まれる。さらに、ビットコイン上のNFTに相当する「Ordinals(オーディナルズ)」や、代替可能トークンの規格である「Runes(ルーンズ)」のサポートも終了する。Ordinalsとは、ビットコインの最小単位である1サトシにデータを書き込む技術を指す。同社が提供するセルフカストディ型(自己管理型)ウォレットについても、4月初旬までにこれらのネットワークへの対応を順次打ち切る計画だ。今後は同社のルーツであるSolanaエコシステムに特化し、ユーザー体験の向上を図るという。ビットコインNFT市場での先駆者からの退場
Magic Edenは、ビットコイン上でのNFT市場において極めて重要な役割を果たしてきた。2023年にOrdinalsが登場した際、主要な取引所に先駆けていち早くサポートを開始し、一時はビットコインNFT市場で圧倒的なシェアを誇った。しかし、ビットコイン関連アセットの取引熱は急速に冷え込んでいる。Dune Analyticsのデータによれば、先月のMagic Edenにおけるデジタルコレクティブルの取引総額は約5億7,600万ドルだったが、そのうちビットコイン関連は約12万1,000ドルに留まっている。この数字は、同社のプラットフォーム全体においてビットコイン関連の活動がいかに限定的になっているかを示している。維持コストや開発リソースを考慮した結果、不採算部門を切り捨てる判断に至ったとの見方が強い。iGamingプラットフォーム「Dicey」への注力

「投機スーパーサイクル」を見据えたカジノ事業
ルー氏は、現在の暗号資産市場を「投機スーパーサイクル(Speculation Supercycle)」と定義している。金融とエンターテインメントが融合する新たな時代において、iGamingには巨大なチャンスがあると確信しているようだ。2025年1月に発表されたDiceyは、暗号資産を活用したカジノおよびスポーツブック(賭け屋)として運営されている。ルー氏によれば、Diceyのクローズドベータ版(限定公開テスト)開始から2ヶ月で、ユーザー数は約200人に過ぎないものの、賭け金の総額は1,500万ドル(約22億円)を超えているという。この驚異的な資金効率の高さが、Magic Edenの経営陣をiGamingへと突き動かしている。従来のNFT取引手数料モデルに比べ、ギャンブル事業は収益性が高く、ユーザーの滞在時間やリピート率も高い傾向にある。
買収戦略による基盤強化
Magic Edenは、この転換に向けて着々と準備を進めてきた。2024年には、モバイル特化の暗号資産取引アプリであるSlingshot Finance(スリングショット・ファイナンス)を買収している。当初、この買収はマルチチェーンでのミームコイン取引を強化するためのものと見られていた。しかし現在では、Slingshotの技術力やモバイルでのユーザー体験を、Diceyなどの新しいエンターテインメント・プラットフォームに統合することが真の狙いだったことが判明している。NFT市場の冷え込みとMEトークンの現状

記録的な価格下落とエコシステムの再定義
MEトークンは、Magic Edenのエコシステムにおけるガバナンス(意思決定への参加)や報酬として利用される。2024年12月のローンチ直後には5.63ドルの高値を付けたが、現在は約0.12ドル付近で推移している。ピーク時から約97%という大幅な下落は、投資家の期待がNFTプラットフォームとしてのMagic Edenから離れていることを示唆している。ルー氏は、今回の事業転換に合わせて、MEトークンの用途をDiceyなどの新製品群へも拡大し、トークンの有用性を再定義する方針を示した。また、これまで実施してきたNFTの買い戻し(バイバック)も中止する。限られた資金をNFT市場の支えに使うのではなく、将来の成長分野であるiGamingへの投資に回すという、冷徹かつ合理的な資本配分へのシフトと言える。過去の巨額資金調達と市場の期待
Magic Edenはこれまでに累計1億4,000万ドルの資金を調達している。2022年のシリーズBラウンドでは、GreylockやElectric Capitalといった著名VC(ベンチャーキャピタル)から1億3,000万ドルを調達し、企業価値は16億ドル(当時のレートで約2,100億円)と評価された。当時はマルチチェーン展開による「NFT界のAmazon」を目指す姿勢が評価されていた。しかし、NFT市場の流動性が枯渇する中で、その戦略は維持コストの増大という足かせに変わった。今回の縮小均衡と新分野への進出は、ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業)としての生き残りをかけた賭けでもある。独自分析:NFTマーケットプレイスの生存戦略と将来像

「何でも揃う」から「ここでしかできない」へ
数年前までのNFTバブル期において、マーケットプレイスの正義は「対応チェーンの多さ」と「アセットの豊富さ」であった。しかし、市場が成熟(あるいは衰退)した現在、単にアセットを並べるだけの仲介業は、OpenSeaなどの先行者や、手数料ゼロを掲げる後発プラットフォームとの激しい消耗戦を強いられている。Magic Edenが選んだ道は、手数料ビジネスからの脱却だ。iGaming、つまり「胴元」としてのビジネスモデルは、NFTの取引手数料よりもはるかに高い利益率を期待できる。これは、単なるマーケットプレイスから、ユーザーが資金を投じて楽しむ「エンターテインメント・ハブ」への変貌を意味する。ビットコイン・エコシステムへの影響
一方で、Magic Edenの撤退はビットコイン・エコシステムにとって短期的には痛手となる。しかし、すでにTaproots Wizardsの共同創設者であるウディ・ヴェルトハイマー氏などが、Ordinalsに特化した独自のマーケットプレイス構築を表明している。汎用的なプラットフォームが去り、より専門性の高い、コミュニティ主導のプラットフォームがその座を継承する流れは、エコシステムの健全な分化とも捉えられる。ビットコイン上のNFTは、投機的な熱狂が去った後、よりコアなファン層に向けたアーティスティックな領域へと純化していく可能性がある。まとめ:この記事のポイント
- Magic Edenはビットコインとイーサリアム(およびその関連チェーン)のサポートを2週間以内に終了する。
- 今後は創業の地であるSolanaエコシステムへの回帰を優先し、プラットフォームの純化を図る。
- 経営資源の多くを、新事業であるiGamingプラットフォーム「Dicey」へと集中させる。
- MEトークンの価値が97%下落する中、ギャンブル事業との統合によるトークンの有用性強化を目指す。
- NFT市場の低迷を受け、手数料モデルから高収益なエンターテインメント・モデルへの大胆なピボット(路線転換)を敢行する。
出典
- Decrypt「Magic Eden Pulls Plug on Bitcoin and Ethereum Support, Doubles Down on Solana」(2026年2月27日)
- Blockspace Media「Magic Eden to Shutter Bitcoin and EVM Marketplaces, Sunset Multi-Chain Wallet」(2026年2月27日)
- CoinGecko「Magic Eden (ME) Price Data」(2026年2月27日)

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
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