サイバー犯罪団の首謀者ラム被告が有罪答弁、仮想通貨被害は2億4500万ドル超

シンガポール国籍のマローン・ラム被告が、米連邦地裁で有罪答弁を行った。ソーシャルエンジニアリングと自宅侵入を組み合わせた国際的な暗号資産窃取組織の首謀者として、総額2億4500万ドル以上の被害に関与したことを認めた。

米司法省の発表によると、ラム被告はRICO法違反の共謀罪1件で有罪答弁を行った。判事は12月8日に状況聴聞会を予定しているが、量刑言い渡し日はまだ決まっていない。

今回の有罪答弁は、暗号資産を狙うサイバー犯罪の捜査が一段階進んだことを示す。オンラインゲーム上のつながりから構築された国際犯罪組織の実態が、司法手続きを通じて明らかになりつつある。

ラム被告が有罪答弁、被害総額は2億4500万ドル超

ラム被告が有罪答弁、被害総額は2億4500万ドル超

米司法省の発表によると、ラム被告は米連邦地裁のコリーン・コラー・コテリー判事の前で、RICO法違反の共謀罪1件について有罪答弁を行った。判事は12月8日に状況聴聞会を開くことを決めたが、量刑言い渡し日は発表されていない。

ラム被告の有罪答弁によって刑事責任が確定するのは、最初の起訴から約2年後のことになる。同被告が組織した国際犯罪ネットワークは、2023年10月から2025年5月までの期間にわたって活動していたとされる。

有罪答弁の内容

検察側の裁判資料によると、ラム被告はオンラインゲームのプラットフォーム上で形成されたつながりを通じて組織を構築し、標的となる被害者の特定や共犯者への指示役を担っていた。

ラム被告が最初に起訴されたのは2024年9月のことだった。ワシントンDC在住の被害者1人から4,100ビットコイン以上を詐取した罪で起訴され、その価値は当時のレートで2億3000万ドル以上に達していた。

RICO法違反とは何か

RICO法は米国の連邦法で、組織的な犯罪行為を包括的に取り締まるための法律だ。単発の犯罪ではなく、継続的に行われる違法行為のパターンを組織的犯罪として扱う点が特徴となる。

今回の事件では、暗号資産の窃取と資金洗浄が組織的に行われていたとして、検察側がこの法律を適用した。RICO法が適用されると、組織の末端メンバーだけでなく、直接手を下していない首謀者も含めて刑事責任を問える。

犯行の手口、偽サポートから自宅侵入まで

犯行の手口、偽サポートから自宅侵入まで

検察側の主張によると、ラム被告らは主に2つの手口で被害者を狙っていた。1つはソーシャルエンジニアリングと呼ばれる心理的な操作で、もう1つは実際に被害者の自宅へ侵入する物理的な手口だ。

ソーシャルエンジニアリングとは、技術的な脆弱性を突くのではなく、人間の心理的な隙を利用して重要な情報を引き出す攻撃手法を指す。暗号資産の世界では、この手口による被害が後を絶たない。

GoogleとGeminiのサポートを装った詐欺

検察側の主張によると、攻撃者はまずGoogleのサポートスタッフを装って被害者のアカウントを乗っ取った。その後、今度は暗号資産取引所Geminiのサポートを装い、被害者に二段階認証の再設定を促した。

さらに画面共有ソフトの使用を求め、それによって秘密鍵が攻撃者の手に渡った。秘密鍵とは、暗号資産のウォレットを操作するために必要な暗証番号の親玉のようなものだ。これを知られると、ウォレット内の資産を自由に動かされてしまう。

ブロックチェーン調査者のZachXBT氏は2024年に、被害者が暗号資産融資企業Genesisの債権者であることを特定していた。攻撃者は被害者の資産状況を事前に把握した上で、計画的に狙いを定めていた可能性が高い。

資金洗浄の手法

ラム被告とジェアンディエル・セラーノ被告は2024年9月18日に逮捕された。検察側は、2人が盗んだ資金を暗号資産ミキサーや取引所、経由ウォレット、VPNなどを通じて洗浄していたと指摘する。

暗号資産ミキサーとは、複数の利用者の資金を混ぜ合わせることで取引の追跡を困難にするサービスだ。経由ウォレットを複数経由させるのも、資金の出所を分かりにくくするための常套手段となる。

事件の拡大、追加起訴で12人に

事件の拡大、追加起訴で12人に

2025年5月15日、検察側は12人の被告を追加起訴し、事件をRICO法に基づく組織的犯罪として拡大した。被害総額は2億6300万ドル以上に膨らみ、2024年7月には別の被害者から1,400万ドル相当の暗号資産が盗まれていたことも明らかになった。

さらに、ハードウェアウォレットを狙った自宅侵入事件も含まれていた。ハードウェアウォレットとは、秘密鍵をインターネットから切り離した専用端末に保存するタイプのウォレットで、オンラインでのハッキングには強い。しかし物理的な侵入には対抗できない。

拘置所からの指揮疑惑

検察側はさらに、ラム被告が勾留中にもかかわらず拘置所から共犯者への指示を続けていたと主張する。恋人のもとへ高級品を届けさせる手配も行っていたという。

この主張が事実なら、ラム被告の組織への関与は逮捕後も続いていたことになる。裁判では、この拘置所からの指揮疑惑が量刑を左右する材料になる可能性がある。

盗難資金の行方とユーザーへの教訓

盗難資金の行方とユーザーへの教訓

高級車28台とナイトクラブでの浪費

検察側の主張によると、組織のメンバーは盗んだ資金でプライベートジェットや賃貸物件、高級時計、少なくとも28台の高級車を購入していた。ナイトクラブでの支払いは一晩で50万ドルに達したこともあるという。

こうした豪快な浪費は、暗号資産の窃取事件の典型的な特徴でもある。匿名性が高く国境を越えた移動が容易な暗号資産は、犯罪組織の資金源として狙われやすいからだ。

暗号資産ユーザーが取るべき対策

今回の事件が示すのは、技術的に高度なサイバー攻撃よりも、人間の信頼を悪用した攻撃の方が現実的な脅威となっていることだ。ユーザーが取るべき対策は決して新しいものではないが、改めて確認しておく価値がある。

第一に、サポートスタッフを名乗る電話やメッセージを信用しないことだ。第二に、秘密鍵やリカバリーフレーズを絶対に他人へ共有しないこと。第三に、画面共有ソフトの使用を求められたら即座に警戒すること。第四に、二段階認証の設定変更を促された場合は、公式サイトから直接確認することだ。

この記事のポイント

  • マローン・ラム被告がRICO法違反の共謀罪で有罪答弁、被害総額は2億4500万ドル超
  • GoogleとGeminiのサポートを装ったソーシャルエンジニアリングで秘密鍵を入手
  • 2025年5月には12人が追加起訴され、事件はRICO法に基づく組織犯罪へ拡大
  • 盗難資金は高級車28台やプライベートジェットなどに浪費、クラブ代は一晩50万ドルも
  • ユーザーは画面共有要求や秘密鍵共有の誘いに警戒を
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