MARAが110億円相当のBTCを売却、債務を9%割引で買い戻し

米国上場のビットコインマイナー大手、MARA Holdingsが巨額のビットコインを売却し、その資金で自社の債務を割引価格で買い戻した。この動きは、同社が純粋なマイニング事業から脱却し、デジタルエネルギーやAIインフラ事業への拡大を図る戦略の一環だ。

3月26日に提出された米証券取引委員会(SEC)への書類と同社のプレスリリースによれば、MARAは3月4日から25日にかけて、15,133BTCを約11億ドルで売却した。この資金を用いて、2030年および2031年に満期を迎えるゼロクーポン転換社債(無利子転換社債)を約9億1,300万ドルで買い戻す契約を締結した。

買い戻し額は元本の10億ドルに対し約9%の割引となる。これにより、同社は約8,800万ドルの債務削減効果を得る。取引が今月末に完了すれば、MARAの未償還転換社債残高は約30%減少し、約23億ドルになる見込みだ。

MARAの債務買い戻し戦略の詳細

MARAの債務買い戻し戦略の詳細

MARAが売却した15,133BTCは、記事執筆時点のビットコイン価格である約69,300ドルで計算すると、約10億4,800万ドルに相当する。同社はこの現金をほぼ全額、転換社債の買い戻しに充てる計画だ。

転換社債とは何か

転換社債は、あらかじめ決められた価格で発行会社の株式に転換できる権利が付いた社債だ。投資家にとっては、債券としての利回りに加え、株価が上昇した際に株式に転換してキャピタルゲインを得る可能性がある。一方、発行会社にとっては、通常の社債よりも低い金利で資金を調達できるメリットがある。

MARAが買い戻す「ゼロクーポン」転換社債は、途中で利息が支払われない代わりに、額面より割り引かれた価格で発行される。満期時に額面金額が償還される仕組みだ。

債務削減による財務体質の改善

MARAのフレッド・ティエルCEOはプレスリリースで、この取引により会社の「財務的な柔軟性」が高まり、「戦略的な選択肢」が増えると述べている。具体的には、利息負担の軽減と、バランスシート上の負債圧縮が進む。

債務が減れば、将来の新規投資や事業拡大に必要な資金を調達しやすくなる。また、業績が悪化した際の支払いリスクも低下する。市場はこの動きを好感し、3月26日のプレマーケットでは株価が前日終値の8.25ドルから一時9.29ドルまで約12.6%上昇した。

ビットコイン売却後の保有量と業界の潮流

ビットコイン売却後の保有量と業界の潮流

今回の売却後、MARAの公開されているバランスシート上のビットコイン保有量は38,689BTCとなった。データ提供サイトBitcointreasuries.netの情報だ。これは依然として上場企業の中では最大級の保有量だが、同社がBTCを「戦略的資産」として保有し続ける一方で、流動性の高い資産として積極的に活用している姿勢が浮き彫りになる。

マイナー各社の事業転換

MARAの動きは、ビットコインマイニング業界全体の大きな流れの一部だ。多くのマイナーが、ビットコイン価格の変動に大きく依存する収益モデルから脱却し、より安定した収入源を求めて事業の多角化を進めている。

具体的には、人工知能(AI)や高性能計算(HPC)向けのデータセンター事業への参入が目立つ。マイニング施設は大量の電力を消費し、高度な冷却システムを備えている。この同じインフラを、AIの学習や複雑な科学計算に必要なコンピューティングパワーを提供する「クラウドサービス」に転用できる。

他社の類似事例

MARAに先立ち、他の大手マイナーも同様の動きを見せている。例えば、Bitdeerは2月までにすべてのビットコインを売却し、保有量をゼロにした。同社はクラウドコンピューティングやAIサービスに注力する方針を明確にしている。

また、Canaanもテキサス州のマイニング施設に投資し、ビットコインマイニングとAIワークロードの両方を同じエネルギー集約型施設で実行する計画を発表した。MARA自身も最近、AIに特化したデータセンターを運営するExaionの過半数株式を取得する契約を結んでいる。

市場と業績への影響分析

市場と業績への影響分析

MARAが大量のビットコインを売却したことは、短期的なビットコイン市場に一定の売り圧力となった可能性がある。約15,000BTCという売り数量は、主要取引所の一日の出来高と比較しても無視できない規模だ。

四半期決算との関連

今回の動きの背景には、2025年第四四半期の業績も関係している。MARAは同四半期に17億ドルの純損失を計上した。この損失の大部分は、保有するビットコインの時価評価による非現金費用だった。ビットコイン価格が下落すると、簿価との差額が損失として計上される会計処理のためだ。

こうした評価損による業績の乱高下を抑え、より安定した財務体質を築くことも、債務削減の目的の一つと考えられる。当時、同社はビットコインを密かに売却しているとの憶測を否定しつつも、バランスシートを積極的に管理する方針を示していた。

長期的な事業リスクの分散

ビットコインマイニング単体の事業は、「半減期」と呼ばれるマイナーへの報酬が定期的に半減するイベントや、ビットコイン価格の変動、競合の増加、電力コストの上昇など、多くのリスクにさらされている。

AI/HPCインフラ事業への進出は、これらのリスクを分散させる試みだ。デジタルエネルギー管理を含む事業ポートフォリオを構築することで、収益源を多様化し、企業価値の安定化を図っている。

この記事のポイント

  • MARA Holdingsは3月、15,133BTC(約11億ドル)を売却し、その資金で10億ドル分の転換社債を約9%割引の価格で買い戻す契約を締結した。
  • これにより約8,800万ドルの債務削減効果があり、未償還転換社債は約30%減少する見込みだ。
  • 売却後も同社は38,689BTCを保有し続けるが、ビットコインを流動性資産として積極活用する姿勢を明確にした。
  • この動きは、ビットコインマイナーが事業を多角化し、AIや高性能計算インフラへとシフトする業界の大きな潮流の一端である。
  • 債務圧縮と事業転換は、ビットコイン価格変動に依存するリスクを軽減し、財務体質の改善を目指す戦略だ。

出典

  • Cointelegraph “MARA sells $1.1B in Bitcoin to buy back debt at 9% discount” (2026年3月26日)
  • MARA Holdings, Inc. 8-K Form filed with the U.S. Securities and Exchange Commission (2026年3月26日)
  • MARA Holdings, Inc. Press Release “MARA Holdings Inc. Announces $1.0 Billion Repurchase of 0.00% Convertible Senior Notes Due 2030 and 2031 and Sale of 15,133 Bitcoin” (2026年3月26日)
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