NasdaqがKraken親会社Paywardに1億ドル出資、企業価値210億ドルでトークン化株式を加速

Nasdaq(ナスダック)が暗号資産取引所Krakenの親会社Paywardに1億ドルを投資した。米国の主要証券取引所が暗号資産企業の株式に資金を投じる動きとしては、過去最大級の案件となる。

この出資によりPaywardの企業価値は210億ドルと評価された。KrakenはNasdaqが発行するトークン化株式を自社プラットフォームで配布する契約も結んでいる。トークン化株式とは、株式をブロックチェーン上でデジタル資産として扱えるようにしたものだ。

米国の伝統的な取引所が株式のトークン化に本格参入する流れが加速している。今回の取引は、24時間365日取引できる株式市場の実現に向けた重要な布石といえる。

Nasdaqによる1億ドル出資の詳細

Nasdaqによる1億ドル出資の詳細

Nasdaqのベンチャー投資部門であるNasdaq Venturesが、Krakenの親会社Paywardに1億ドルを出資した。この出資は2026年9月10日に正式発表された。Paywardの企業価値は210億ドルと評価されている。

この出資は単なる資金提供ではない。NasdaqとPaywardは、トークン化された株式市場のインフラを共同で開発する戦略的提携関係にある。NasdaqはKrakenを、トークン化された市場インフラの開発を支援する投資先と位置づけている。

Paywardは2026年5月の時点で、200億ドルの企業価値を見込んで新規資金調達を模索していると報じられていた。今回の出資により、その調達がNasdaqという大口投資家を得て実現した形だ。

出資の条件と企業価値210億ドル

Paywardの共同CEOであるArjun Sethi(アルジュン・セティ)は「次の段階では、Nasdaqエクイティトークンを、閉じることのないレールに載せ、株主権利を保ったまま提供することを計画している」と述べた。

「閉じることのないレール」とは、従来の株式市場が平日の日中しか取引できないのに対し、ブロックチェーン上では24時間365日取引が可能であることを指す。つまり、株式をトークン化することで、市場の営業時間という制約を取り払う狙いがある。

今回の出資は、Nasdaqが2026年3月に発表したエクイティトークン設計の計画を具体化するものだ。NasdaqはすでにKrakenと協力して、規制された市場とオンチェーン市場の間でトークン化株式を橋渡しするインフラを構築していた。

資金調達の背景とIPOへの道

Paywardが新規資金調達を模索していた背景には、将来のIPO(新規株式公開)を見据えた動きがある。企業価値210億ドルという評価は、暗号資産取引所としてのKrakenの事業規模と成長性を反映したものだ。

Krakenは米国で最も歴史のある暗号資産取引所の一つであり、規制対応に積極的なことで知られる。今回のNasdaqからの出資は、伝統的金融市場との橋渡し役としてのKrakenの立場を強化するものだ。IPOを目指す上でも、Nasdaqとの関係は大きな資産となる。

投票権付きトークン化株式とは何か

投票権付きトークン化株式とは何か

今回の契約の核となるのが、Krakenが自社プラットフォームでNasdaqのトークン化株式を配布するという点だ。ユーザーはNasdaqに上場する企業の株式を、トークン化された形で購入し保有できるようになる。

重要なのは、これらのトークン化株式がNasdaq取引所で取引される通常の株式と同じ投票権を持つことだ。トークン化によって権利が薄まるわけではない。株主としての権利はそのまま維持される。

これは従来のトークン化株式とは一線を画す設計だ。これまでのトークン化株式の多くは、原資産に対する請求権は持っていても、議決権などの株主権利までは付与していないケースが多かった。Nasdaqが目指すのは、法規制に完全準拠した、本物の株式と同等の権利を持つトークンだ。

Nasdaqエクイティトークンの仕組み

Nasdaqが2026年3月に発表したエクイティトークン設計は、公開企業が自社株式をトークン化する際の標準を提供するものだ。企業はトークン化された株式を発行し、投資家はブロックチェーン上で取引できる。

つまり、株式市場の民主化と24時間化を同時に実現する構想だ。投資家は取引所の営業時間に縛られず、いつでも株式を売買できる。企業はより多くの投資家にリーチできる。

Krakenはこのエクイティトークンを配布する流通チャネルとして機能する。暗号資産取引所の利用者が、同じプラットフォームで株式も取引できるようになるわけだ。これは暗号資産と伝統的金融の融合を象徴する動きといえる。

米国取引所が進めるブロックチェーンインフラ競争

米国取引所が進めるブロックチェーンインフラ競争

今回の取引は、米国の取引所運営会社によるブロックチェーンインフラ投資の一環だ。NYSE(ニューヨーク証券取引所)も独自に、トークン化株式やETF(上場投資信託)を24時間365日取引できる場の構築を進めている。

米国の主要取引所がブロックチェーン技術に本格的に乗り出す背景には、市場のグローバル化と投資家のニーズ変化がある。暗号資産市場が24時間取引を当たり前にしてきたことで、株式市場にも同様の利便性を求める声が高まっていた。

Nasdaqの戦略は、自社で一からインフラを構築するのではなく、すでに暗号資産取引所としての実績と技術力を持つKrakenと組むことだ。これにより、開発期間を短縮し、規制当局との調整も効率的に進められる。

トークン化株式がRWA市場を牽引

トークン化株式は、RWA(現実資産 / Real World Assets)市場の中で最も資金流入が活発な分野の一つだ。RWAとは、株式・債券・不動産など、現実世界の資産をブロックチェーン上でトークン化したものを指す。

最近のデータでは、Binanceが提供するbStocksが2カ月で約1億1,850万ドルの資金を集め、オンチェーン株式取引の約90%を占めるまでに成長している。この数字は、トークン化株式に対する投資家の需要が急速に高まっていることを示している。

Nasdaqの参入は、この市場にさらなる信頼性と流動性をもたらす可能性がある。規制された取引所が発行するトークン化株式は、コンプライアンス面での懸念を払拭し、機関投資家の参入障壁を下げる効果が期待できる。

この取引が暗号資産市場に与える影響

この取引が暗号資産市場に与える影響

この出資が暗号資産市場に与える影響は多面的だ。まず、Krakenという大手取引所の企業価値が210億ドルと評価されたことは、暗号資産企業への機関投資家の信頼が高まっている証拠といえる。

さらに、Nasdaqのような伝統的金融の巨人が暗号資産企業と資本提携することは、暗号資産産業全体の正当性を高める効果を持つ。規制当局や懐疑的な投資家に対して、暗号資産技術が金融インフラの中核を担いうるというメッセージになる。

一方で、競争環境の変化も見逃せない。Krakenが株式取引にも進出することで、既存のオンライン証券会社との競争が激化する可能性がある。暗号資産取引所と証券会社の境界線が曖昧になっていく過程で、新たな規制対応も求められるだろう。

投資家にとっての実践的意味

個人投資家にとっては、Krakenのアカウント一つで暗号資産と株式の両方を取引できるようになる可能性がある。これは利便性の飛躍的な向上につながる。

ただし、トークン化株式が実際にどのような税制・法規制の下で扱われるかは、まだ明確になっていない部分がある。投資家は、新しい金融商品の特性とリスクを十分に理解した上で取引する必要がある。

この記事のポイント

  • NasdaqがKrakenの親会社Paywardに1億ドルを出資し、企業価値を210億ドルと評価した
  • KrakenはNasdaqのトークン化株式を自社プラットフォームで配布する契約を締結した
  • トークン化株式は通常の株式と同じ投票権を持ち、24時間365日取引が可能になる
  • 米国の主要取引所によるブロックチェーンインフラ投資が加速している
  • トークン化株式はRWA市場で最も成長が速い分野の一つとなっている
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