露大手SberがUSDTとETHのローン担保受付へ。デジタルルーブル需要は懐疑的

ロシア最大手銀行のSber(ズベルバンク)が、暗号資産担保ローンの受け付け対象を拡大する方針を示した。ビットコイン(BTC)に加えて、ステーブルコインのUSDTとイーサリアム(ETH)を担保に追加する計画だ。

ロシアではプーチン大統領が8月4日に署名した新法が9月1日に発効し、暗号資産の規制市場が本格始動する。Sberの今回の方針は、その新市場への参入準備と位置づけられる。

一方Sberは、同じタイミングで本格展開を迎えるデジタルルーブル(ロシアの中央銀行デジタル通貨)について、需要の乏しさをはっきり指摘した。暗号資産には前向き、国営デジタル通貨には慎重という温度差が表れている。

ロシア最大手銀行Sber、暗号資産担保ローンを拡大へ

ロシア最大手銀行Sber、暗号資産担保ローンを拡大へ

Sberが示した具体的な計画

Sberのポポフ副会頭はタス通信の報道で、既存の暗号資産担保ローン商品を段階的に拡大していく方針を述べた。具体的には、現在ビットコインを担保に受け付けている融資商品に、イーサリアムとUSDTを追加する計画だ。

USDTは米ドルに価値を連動させたステーブルコインで、価格変動が小さく担保評価が安定しやすい。イーサリアムは時価総額でビットコインに次ぐ規模を持つ主要銘柄だ。

つまり、Sberは市場の主要銘柄をひととおりカバーしようとしている。融資を利用する顧客にとっては、保有資産の種類に応じて柔軟に資金調達できる選択肢が増えることになる。

担保追加の前提条件

担保追加の時期は、ロシア中銀がこの2銘柄の公的取引を許可した後になるという。中銀の承認が前提条件となっている点が重要だ。

Sberほどの大手銀行が規制当局の承認を待つのは当然の姿勢だ。暗号資産の法的地位が固まらない段階で独自に商品を広げれば、後に規制違反とされるリスクがあるからだ。

新法施行で整備されるロシアの暗号資産市場

新法施行で整備されるロシアの暗号資産市場

新法が中銀に与える権限

ロシアの暗号資産規制は大きな転換点を迎えている。プーチン大統領が8月4日に署名した新法の主要規定が、9月1日に発効する。

この法律によって、ロシア中央銀行に「どの暗号資産を規制市場で取引できるか」を決める権限が与えられた。これまでグレーゾーンだった暗号資産の売買が、公式な枠組みの中で動き始めることになる。

Sberのローン担保拡大方針は、この法整備を先取りした動きといえる。銀行としても、規制当局が認めた資産だけを扱うことで、法令順守上のリスクを抑えられるからだ。

中銀が示した選定基準

ロシア中銀は新法に基づき、8月11日にビットコイン、イーサリアム、USDTの3銘柄を規制取引所での取引対象として提案した。

中銀が挙げた選定基準は、時価総額の大きさ、取引高、海外市場での5年以上の価格履歴などだ。実績のある資産に限定することで、投資家保護と市場の安定を図る狙いがあるとみられる。

5年以上の価格履歴という条件は、新興の暗号資産を事実上排除する。ロシア当局が投機的な銘柄ではなく、実績のあるメジャーな資産から市場を整備しようとしている姿勢が読み取れる。

ロシア中銀が選んだ3銘柄と担保としての意味

ロシア中銀が選んだ3銘柄と担保としての意味

3銘柄それぞれの特徴

中銀が提案した3銘柄は、それぞれ暗号資産市場で異なる役割を持つ。

ビットコインは「デジタルゴールド」とも呼ばれる最大の時価総額を持つ資産だ。イーサリアムはスマートコントラクトを動かす基盤で、DeFi(分散型金融)やNFTなどのエコシステムを支える。

DeFiとは、銀行などの仲介者を介さずにブロックチェーン上で自動的に取引や融資を行う仕組みのことだ。NFTはブロックチェーン上で唯一無二の存在を証明できるデジタル資産を指す。

USDTは米ドルに価値を連動させたステーブルコインで、暗号資産市場の取引ペアとして最も広く使われている。価格変動が小さいため、担保としての評価が安定しやすい。

担保分散がもたらす利点

担保資産を複数用意することには、融資側にも借り手側にも利点がある。

借り手は値上がりしやすい資産を持っているときに売却せず資金調達できる。融資側は担保の分散によって価格下落リスクを軽減できる。

ロシアではこれまで暗号資産の法的地位が曖昧だったため、銀行が積極的に暗号資産担保ローンを提供することは難しかった。新法はその障壁を取り除く役割を果たす。

デジタルルーブル需要にSberは懐疑的

デジタルルーブル需要にSberは懐疑的

CFOが語った本音

同じ9月1日、ロシアでは中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタルルーブルの本格展開も予定されている。CBDCとは、中央銀行が直接発行するデジタル形式の法定通貨のことだ。

Sberのスクボルツォフ最高財務責任者(CFO)はタス通信の報道で、デジタルルーブルへの需要について厳しい見方を示した。「中央銀行以外に、この商品への明確な関心は見当たらない」と述べている。

スクボルツォフCFOによれば、個人顧客も法人顧客も金融機関も、デジタルルーブルを積極的に求めてはいないという。銀行の本音として、CBDCが既存の決済手段を置き換えるほどの魅力を持っていないとの評価だ。

温度差が示すもの

暗号資産の担保ローンには前向きな一方で、CBDCには慎重という姿勢は一見矛盾するようにも映る。ただし背景を考えると理にかなっている。

Sberが暗号資産担保ローンで狙うのは、融資手数料や顧客囲い込みといった銀行としての収益機会だ。一方デジタルルーブルは、銀行を介さない決済も可能になるため、既存銀行の仲介ビジネスを侵食する可能性がある。

この温度差は、ロシアの金融当局と大手銀行のあいだにある思惑の違いを映し出している。暗号資産市場の活用では利害が一致するが、CBDCについては銀行側に既存ビジネス防衛の思惑があるということだ。

この記事のポイント

  • Sberが暗号資産担保ローンの対象にUSDTとイーサリアムを追加する計画
  • ロシアの新法が9月1日に発効し、中銀が取引対象にBTC・ETH・USDTを提案
  • 担保追加は中銀の公的取引許可が前提
  • SberのCFOはデジタルルーブルの需要に懐疑的な見解を示した
  • 暗号資産には前向き、CBDCには慎重という銀行の本音が浮かぶ
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