FTX創設者SBFの再審理請求、NY判事が全面的に却下

暗号資産取引所FTXの元CEOであるサム・バンクマン・フリード(SBF)の再審理を求める申し立てが、ニューヨークの連邦地裁で全面的に却下された。2026年4月29日、ルイス・カプラン判事が下したこの決定により、SBFの有罪判決は最終的なものとなった。

SBF側は、元FTX幹部3名の証言や証言拒否を問題視し、裁判のやり直しを主張していた。しかしカプラン判事は、これらの主張を「複数の独立したレベルで根拠がない」と一蹴している。今回の決定の背景と、裁判の経緯を時系列で整理する。

判事が再審理請求を退けた理由

判事が再審理請求を退けた理由

カプラン判事の棄却命令は、SBFの弁護団が提出した主張のほぼすべてを退ける内容だった。判事は特に、証人に関するSBF側の主張を「根拠がなく、陰謀論的ですらある」と強い言葉で断じている。

「新たに発見された証人」ではない

SBFの弁護団は、裁判で証言しなかった元FTX幹部2名、すなわちFTXバハマ法人の元CEOであるライアン・サラメと、FTXの元データサイエンス責任者ダニエル・チャプスキーが、FTXの財務状況に関する政府の主張に反論できたはずだと訴えた。

これに対しカプラン判事は、3名の証人候補はいずれも「新たに発見された」証人ではないと指摘した。SBFは裁判のかなり前から3名全員を知っており、彼らが証言台で何を話すと期待していたかも把握していたはずだ、というのが判事の見立てである。つまり、裁判当時に召喚する機会は十分にあったということだ。

SBF側は、これらの証人が証言しなかった、あるいは自分に不利な証言をしたのは「政府による脅迫の結果だ」とも主張していた。この点について判事は「記録によって完全に矛盾している」と切り捨てた。

サラメとシンの異なる立場

ライアン・サラメは、選挙資金法違反と無許可の送金事業運営の罪を別件で認め、2024年5月に懲役7年半の判決を受けている。SBF裁判での証言は行わなかった。

一方、FTXの元エンジニアリング責任者であるニシャド・シンは、検察との司法取引に応じて免責を受け、SBFの裁判で検察側の証人として証言した。SBF側は、シンの証言が「政府の脅迫を受けて変更された」と主張したが、これも判事に退けられている。

これまでの裁判の経緯とSBFの現在

これまでの裁判の経緯とSBFの現在

SBFは2023年11月、詐欺と資金洗浄に関連する7つの刑事罪で有罪評決を受けた。陪審団は、SBFがFTXの顧客資金数十憶ドルを関連取引会社アラメダ・リサーチに不正に移し、リスクの高い取引に投じたことで取引所破綻を招いたと認定した。

このスキームは、顧客が預けた資産を無断で流用し、アラメダの損失補填や投機的取引に充てていたというものだ。FTX破綻は2022年11月に表面化し、暗号資産業界全体に深刻な信用不安をもたらした。

再審理請求が却下されたことで、SBFに言い渡された禁錮25年の判決が確定する。彼は現在、カリフォルニア州ロンポックの連邦刑務所に収監されている。2025年3月には、ブルックリンの拘置所からポッドキャスト番組に出演し、自らの無実を主張するなど異例の行動も見せていた。

FTX事件が暗号資産業界に残した教訓

FTX事件が暗号資産業界に残した教訓

FTXの破綻とその後の刑事裁判は、暗号資産取引所のガバナンス(企業統治)と透明性の重要性を改めて浮き彫りにした。顧客資産の分別管理や、取引所と関連会社の利益相反を防ぐ仕組みが不十分だったことが、破綻の直接的な原因とされている。

ガバナンスとは、簡単に言えば「組織が不正をせず、健全に運営されるためのルールや仕組み」のことだ。FTXには取締役会による監督機能がほとんどなく、SBF個人に権限が集中していた。これにより、顧客資産の流用という重大な違法行為が長期間見過ごされる結果となった。

規制強化の流れは加速する

FTX事件を契機に、米国をはじめとする各国の規制当局は取引所に対する監視を大幅に強化した。顧客資産の証明(Proof of Reserves)の義務付けや、取引所とカストディ(資産保管)業務の分離といった施策が急速に進んでいる。

カストディとは、顧客の資産を安全に保管・管理するサービスのことだ。従来は取引所が取引機能と保管機能を兼ねることが多かったが、FTXのように両者が癒着すると、顧客の預け入れ資産が不正流用されるリスクがある。このため、両者を法的に分離すべきとの議論が強まっている。

投資家保護とイノベーションのバランス

規制強化の動きは、投資家保護の観点からは歓迎される一方で、過度な規制がイノベーションを阻害する懸念も指摘される。暗号資産の持つ分散型の理念と、中央集権的な規制との間にどう折り合いをつけるかは、業界全体の課題だ。

SBFの裁判が最終局面を迎えた今、業界に求められているのは、単なる過去の反省ではなく、信頼回復に向けた具体的な行動である。透明性の高い運営と、独立した監視機能の整備が不可欠だ。

この記事のポイント

  • SBFの再審理請求はNY連邦地裁で全面却下され、禁錮25年の有罪判決が確定
  • カプラン判事はSBF側の主張を「陰謀論的」と一蹴し、証人に関する主張も退けた
  • FTX破綻の原因は顧客資産の不正流用とガバナンス不全にあり、業界全体の教訓となった
  • 事件後、取引所の透明性と顧客資産保護を強化する規制の動きが加速している
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