日本の大手証券会社であるSBI証券と楽天証券が、暗号資産を組み込んだ投資信託の提供を計画していることが明らかになった。金融庁による関連規制の整備が完了し次第、商品の投入に踏み切る構えだ。
日経新聞が実施した調査では、野村證券や大和証券、みずほ証券を含む追加の11社も、規制環境が整えば参入を検討する意向を示した。国内の証券会社による暗号資産関連商品の競争は、制度のゴーサインを契機に一気に加速する可能性がある。
SBIと楽天が動いた、背景にある調査結果の詳細

日経新聞が2026年5月に報じた内容によると、SBI証券と楽天証券は、金融庁が暗号資産投資信託に関する規制の枠組みを最終化するのを待って、商品の提供を開始する方針を固めた。すでにグループ内の関連会社を通じて開発が進められている段階だという。
今回の計画で注目すべきは、投資家が既存の証券口座をそのまま使って暗号資産に間接的に投資できる点だ。これまでは、国内の投資家が暗号資産に資金を投じるには、別途暗号資産取引所に口座を開設し、ウォレットの管理や送金を自分で行う必要があった。そのハードルが証券口座一つの完結へと変わる動きであり、利便性は大きく跳ね上がる。
18社中13社が前向きな姿勢
日経新聞が国内の主要証券会社18社を対象に行ったアンケート調査では、前述のSBI証券と楽天証券に加え、野村證券、大和証券、みずほ証券など合計13社が、規制の明確化後に暗号資産ファンドの提供を検討すると回答している。証券業界全体でこの分野への関心が極めて高いことが浮き彫りになった。
提供が検討されている商品には、暗号資産の現物に直接投資するタイプのETF(上場投資信託)も含まれている。ETFであれば取引時間中にリアルタイムで売買できるため、機動的な運用を好む投資家にとってはより魅力的な選択肢となるだろう。
暗号資産の「金融商品」化がもたらすもの

背景にあるのが、日本における暗号資産の法的な位置づけの大きな転換だ。2026年4月、日本政府は資金決済法の枠組みで「決済手段」として扱われてきた暗号資産を、金融商品取引法の下で「金融商品」として再定義する改正法案を閣議決定した。
これまで暗号資産は、主に代金の支払いや送金に使う「お金のようなもの」として規制されてきた。それが株式や債券と同じ「投資対象」としての地位を得ることで、証券会社が取り扱える金融商品の一つとして正式に認められる道が開けることになる。SBI証券や楽天証券の計画は、この制度変更を具体的なビジネスに落とし込む最初の大きな事例といえる。
施行は早くて2027年度、今後のスケジュール
改正法案は国会での審議を経て成立する必要がある。審議の状況にもよるが、成立すれば早ければ2027年度の施行が見込まれている。証券各社が具体的な商品を市場に投入できるようになるのは、この施行後ということになる。
金融庁は現在、投資信託として暗号資産を組み入れる際の詳細なルール作りを進めている段階だ。基準価額の算出方法や、現物資産の保管体制、投資家保護の仕組みなど、詰めるべき論点は多い。証券会社側もこうした制度設計の動向を注視しつつ、商品開発の準備を進めている状況にある。
米国での先行事例と市場規模

この動きを理解するうえで重要な比較対象が、一足先に暗号資産現物ETFが承認された米国市場だ。米国では2024年1月、ビットコインの現物に直接投資するETFがSECによって承認され、その後イーサリアムの現物ETFも登場した。
これらのETFは機関投資家から個人まで幅広い資金を集め、SoSoValueの集計によればビットコイン現物ETF全体の純資産総額はすでに1,000億ドルを超えている。ビットコイン自体の価格もこの間、需要拡大を受けて上昇基調をたどり、5月時点で78,000ドル台で推移している。
1,000億ドルという規模は、伝統的な金融商品と比較しても大きな数字だ。ETFによって暗号資産への投資が「普通の証券取引」として認識されるようになったことが、資金流入を後押しした面は否定できない。日本でも同様の構造が整えば、これまで暗号資産に触れてこなかった層の参入が期待される。
日本の投資家にとっての意味と注意点

証券口座で暗号資産投資信託を購入できるようになれば、投資家にとってのメリットは大きい。税制面では、現在の暗号資産取引で課される雑所得による総合課税ではなく、上場株式等と同様の申告分離課税が適用される可能性がある。税率が最大55%から20%程度に抑えられるとなれば、リスク資産としての魅力は一段と増す。
もちろん、制度の細部が詰まるまでは不透明な部分も残る。どの暗号資産が投資信託の組み入れ対象になるのか、レバレッジをかけた商品が認められるのかといった点は、今後の金融庁の判断にかかっている。現時点で過度に楽観視するのは禁物だ。
証券会社にとっての商機と課題
証券会社側から見れば、これは有望な収益源の拡大につながる。特にネット証券を中心に手数料の引き下げ競争が続く国内市場では、差別化できる商品ラインナップの確保が課題になっている。暗号資産投資信託は、そうした競争環境に新しい軸を持ち込む可能性がある。
一方で、価格変動の大きい暗号資産を投資信託として提供する以上、顧客へのリスク説明や適切な商品設計は欠かせない。過去には海外の暗号資産関連商品で、想定外の価格急落により投資家が大きな損失を被ったケースもある。証券各社のリスク管理体制が問われる局面でもある。
この記事のポイント
- SBI証券と楽天証券が、金融庁の規制整備後に暗号資産投資信託を提供する計画を進めている
- 日経調査では18社中13社が参入に前向きで、業界全体の関心は極めて高い
- 日本では暗号資産を金融商品として再定義する法改正が進行中であり、施行は2027年度の見通し
- 米国ではビットコイン現物ETFの純資産が1,000億ドルを超えており、日本でも同様の拡大が期待される
- 税制や商品設計の詳細は未定であり、今後の制度設計と各社のリスク対応が焦点となる

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
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