米上院議員、トランプ大統領の暗号事業制限強化へ 倫理条項修正案を固める

米国上院で審議が続く暗号資産市場明確化法(Clarity Act)の倫理規定をめぐり、超党派の上院議員2人が修正案を固めた。トランプ大統領の暗号資産事業との利害相反を厳しく制限する内容で、ホワイトハウスに送られる見通しだ。法案の成否は、この倫理条項の合意にかかっている。

共和党のトム・ティリス議員と民主党のルーベン・ガジェゴ議員が数週間にわたり調整を続けてきた。情報筋によれば、2人の議員は新たな共通点を見出したという。ただ、詳細はまだ明らかになっていない。

Clarity Actは、暗号資産市場に包括的なルールを導入する超党派法案だ。成立すれば、米国の暗号資産産業に大きな影響を与える。しかし、時間的な制約と政治的な駆け引きが、法案の未来を不透明にしている。

超党派議員が修正案を固める

超党派議員が修正案を固める

ティリス議員とガジェゴ議員の役割

倫理規定の修正を託されたのは、共和党のティリス議員と民主党のガジェゴ議員だ。両者は、ホワイトハウスが承認する案では民主党の支持を得られないことが明らかになった後、妥協点を模索してきた。関係者によると、2人の議員は修正作業を完了し、あとはホワイトハウスと多数の民主党議員の賛同を得る段階に進んだ。

Clarity Actの倫理条項は、政府高官が暗号資産プロジェクトと直接的な利害関係を持つことを禁じる。具体的には、トランプ大統領自身の暗号資産ビジネスが念頭にある。大統領は最近、この規制を限定的に受け入れる意向を示した。しかし、民主党からは「実質的な制約にならない」との批判が出ている。

ホワイトハウス承認と民主党内の支持獲得

修正案が法案の前進に必要な60票を確保するには、ホワイトハウスの承認に加え、多くの民主党議員の賛成が不可欠だ。ティリス議員とガジェゴ議員の提案は、両陣営の溝を埋めるものと期待されているが、具体的な内容は公表されていない。暗号業界のロビイストたちは、この倫理条項の決着が法案全体の推進力になると見ている。

倫理規定が目指すもの

倫理規定が目指すもの

トランプ大統領の暗号事業と利害相反

トランプ大統領は就任前から暗号資産分野で積極的なビジネスを展開してきた。彼が保有するプロジェクトやパートナーシップは、政策決定に影響を与える可能性が指摘されている。Clarity Actの倫理条項は、大統領を含む高官がこうした事業から手を引くか、厳格な情報開示を義務付けることで、公正な政策立案を担保しようとしている。

現行案の抜け穴と民主党の批判

ホワイトハウスが当初受け入れた倫理規定は、業界関係者からも驚きをもって迎えられた。大統領自身に直接影響する前例のない制約として称賛されたが、民主党議員らは「実質的に遵守すべき内容がほとんどない」と批判した。特に、トランプ大統領が任命した司法省当局者には執行の意欲がないため、抜け穴が生まれると懸念されている。

刻一刻と迫るタイムリミット

刻一刻と迫るタイムリミット

上院の日程と8月休会

上院は8月初旬から夏期休会に入る。つまり、法案を通過させるための実質的な審議時間は1週間も残っていない。上院の複雑な議事手続きを考えると、内容の合意があっても、投票まで持ち込むことは容易ではない。議員たちは休会後、11月の中間選挙に集中するため、立法活動は大幅に縮小される。

クローチャー手続きのハードル

法案を投票にかけるには「クローチャー」と呼ばれる手続きが必要だ。これは、議事妨害を打ち切って審議を終了するための動議で、可決には60票の賛成が求められる。クローチャーの成立には、複数回の投票と少なくとも30時間の審議時間を要する。現在、上院は対ロシア制裁法案など他の重要案件も抱えており、Clarity Actに割ける時間は限られている。

トゥーン上院院内総務は「おそらくClarity Actの投票は行われるだろう」と述べつつも、民主党次第だとくぎを刺した。一方、リュミス上院議員はXへの投稿で「ほぼ11か月にわたり要求のほとんどを飲んできたのに、民主党の同僚たちは何がさらに必要なのか分からない」と不満をあらわにした。

残された争点

残された争点

DeFiの資金移動業者規制

倫理規定が注目を集める一方で、分散型金融(DeFi)の規制に関する条項も議論を呼んでいる。DeFiの開発者たちは、自分たちが「資金移動業者」として規制されることに強く反対している。一部の法執行機関は当初の反対意見を引いたが、民主党のマスト上院議員は依然としてマネーロンダリング防止策の強化を求めている。

ステーブルコインの利回り問題

もう一つの難題は、ステーブルコイン発行者による利回り提供だ。米国銀行協会は、預金に類似する報酬を禁止する妥協案が不十分だと主張し、7月29日付の書簡で「利息支払いと実質的に同じ報酬、インセンティブ、その他の取り決めを通じて禁止を回避できないようにすべきだ」と要請した。ホワイトハウスの暗号資産担当顧問は、すでにこの懸念には対応済みだと反論し、Xで「筋を通してほしい」と述べている。

Clarity Actの行方

Clarity Actの行方

9月以降のシナリオ

法案が8月の休会前に通過しなければ、次のチャンスは9月の短い会期に持ち越される。しかし、中間選挙が迫る中、政治的な思惑が複雑に絡む。仮に民主党が下院で過半数を奪取すれば、共和党主導でまとめられた法案は大幅な見直しを迫られる可能性が高い。年内成立が難しくなれば、次期議会で一からやり直しとなる。

暗号業界の期待とフラストレーション

暗号資産業界の多くは、9月の成立に淡い期待をつないでいる。コインベースのCEOはXに「明確なルールはすぐそこだ。我々はあと1ヤードの地点にいる」と投稿した。しかし、ホワイトハウスの顧問は「8月7日が実質的な期限」と述べ、業界内でも楽観論と悲観論が交錯している。

法案が成立すれば、米国の暗号資産市場に初の包括的な法的枠組みがもたらされる。発行体、取引所、投資家にとっての指針が明確になり、制度上の不確実性が大きく低下すると期待されている。だが、その道のりは依然として険しい。

この記事のポイント

  • 米上院の超党派議員がClarity Actの倫理条項修正案を固め、ホワイトハウスに送る準備を進めている
  • 倫理規定はトランプ大統領の暗号事業との利害相反を制限するが、現行案には抜け穴があると批判されている
  • 法案成立には上院の複雑な手続きと時間的制約が立ちはだかり、8月休会前の通過は極めて難しい見通し
  • DeFi規制やステーブルコイン利回り問題も残る争点として、業界団体とホワイトハウスの応酬が続く
  • 業界は9月の成立に期待を寄せるが、中間選挙の結果次第で法案の運命は大きく変わる可能性がある
共有:

コメントする

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)