韓国金融委員会(FSC)が、ステーブルコインと暗号資産取引所を包括するデジタル資産基本法の草案を準備している。長らく停滞していた同国の暗号資産法制が、政府与党案として大きく前進する可能性が出てきた形だ。
同時に国会では、2027年1月1日施行予定の暗号資産所得税を撤廃する野党案が審議入りした。与党は課税実施の立場を崩しておらず、法制化と税制を巡るせめぎ合いが活発化している。
韓国は暗号資産取引が世界有数の規模を持つ市場であり、法整備の行方は国内外の事業者や投資家の関心を集めている。今回はこの二つの大きな動きを整理する。
FSC、包括的なデジタル資産基本法の草案へ

これまで韓国の暗号資産規制は、第1段階としてマネーロンダリング対策を中心とした「特定金融情報法」の改正で対応してきた。しかし、投資家保護やステーブルコイン発行など、より広範なルールを定める第2段階の立法は、政治家間の意見対立により数カ月にわたって停滞していた。
政府与党が一本化法案を提出する狙い
Cointelegraphの記事によると、FSCは29日の国会政策説明を前に、与党「共に民主党」と共同で単一の統合法案を提出する意向を示した。
この法案は、これまでバラバラに提出されていた分野を一つにまとめる。具体的には、以下のような広範な論点をカバーする見込みだ。
- ステーブルコインの発行と流通ルール
- デジタル資産事業者の業務範囲と規則
- 暗号資産取引所への新規参入要件
- 情報開示や内部管理体制の基準
- システム障害などに備えた強靭性の基準
韓国経済紙イーデイリー報道によれば、現在国会にはデジタル資産やステーブルコインに関連する法案がすでに10本も提出されている。しかし、主要な論点での合意が得られず、審議は進んでいなかった。
FSCと与党が一本化した政府案を示すことで、審議の中心軸を作り、議論を加速させる狙いがあるとみられる。これは、日本の資金決済法改正のように、行政側が明確な枠組みを提示することで立法プロセスが進展した例を参考にしている可能性もある。
焦点は銀行所有と取引所の所有制限
FSCはこの統合法案をいつ、どのような形式で正式提出するかはまだ明らかにしていない。法案の成否を左右する大きな争点が二つ残っているからだ。
一つ目は、ウォン建てステーブルコインの発行主体を銀行が過半を所有する事業体に限定するかどうかという点だ。これは発行体の信用力を高める一方、フィンテック企業などの新規参入を阻む可能性がある。二つ目は、主要な暗号資産取引所に対して大株主の保有制限を課すかどうかだ。
これらの論点は、韓国市場における競争環境を大きく左右する。銀行優遇策は安定性を重視する立場から支持されるが、イノベーションを阻害するとの反発も強い。法整備が実現しても、その中身次第で市場構造が大きく変わる可能性がある。
野党、暗号資産所得税の廃止を推進

法制化の議論と並行して、2027年からの暗号資産課税を巡る攻防も最終局面を迎えている。課税開始まで残り5カ月となる中、野党は税そのものを撤廃する法案を国会に提出した。
22%課税ルールの内容と不公平感
現在の法律では、2027年1月1日から暗号資産の譲渡や貸与で得た所得のうち、年間250万ウォン(約1,700ドル)を超える部分に対して、20%の所得税と2%の地方所得税、合計22%が課されることになっている。
この課税ルールに対しては、かねてから不公平感が指摘されてきた。韓国では一般の株式投資について、大多数の個人投資家は非課税だ。にもかかわらず、暗号資産だけに重い税がかかることへの批判が強い。野党「国民の力」のソン・オンソク議員はこうした声を受け、3月19日に所得税法改正案を提出。暗号資産の譲渡・貸与所得への課税規定そのものを削除する内容だ。
この改正案は29日の国会企画財政委員会で正式に審議に付される予定で、Cointelegraphの記事によれば今後、税制小委員会に付託されて詳細な検討に入る見通しだ。
与党は課税実施の立場、国民請願も
一方、政府と与党「共に民主党」は、たび重なる延期を経てもなお、課税を実施する立場を堅持している。5月7日には企画財政部が、2027年1月からの課税を予定通り進める方針を正式に表明した。
与党が課税に固執する背景には、税収確保に加え、投機的な暗号資産取引を抑制したいとの思惑がある。しかし、施行が近づくにつれ、投資家からの反発は強まっている。
実際、暗号資産税の廃止を求める国民請願は、すでに5万人以上の署名を集めて国会の請願小委員会に付託される見込みだ。だが、税制小委員会も請願小委員会も、まだ正式に構成されておらず、具体的な審査日程は決まっていない。
制度設計の行方と韓国市場への影響

今回の二つの動きは、どちらも韓国の暗号資産市場の今後を左右する重要なものだ。法制化と税制の結末は、単に国内の問題にとどまらない。
ステーブルコイン法制が整備されれば、韓国はアジアで最も明確な暗号資産規制を持つ国の一つとなる。特に、銀行によるステーブルコイン発行が認められるかどうかは、企業のブロックチェーン活用に直結するテーマだ。一方、22%課税がこのまま実施されれば、取引の海外流出を加速させる恐れがある。すでに韓国の個人投資家は、海外の取引所を利用する動きを見せており、税制が追い風となる可能性は否定できない。
FSCの統合法案の詳細が明らかになるのはこれからだ。同時に、国会での税制論争もまだ予断を許さない。日本やシンガポールなど、アジア各国がルール整備を急ぐ中、韓国がどのような着地点を見つけるのか、引き続き注目が必要だ。
この記事のポイント
- 韓国FSCは与党と共に、ステーブルコインや取引所規制を含むデジタル資産基本法の一本化法案を準備している。
- 焦点はウォン建てステーブルコインの発行主体を銀行に限定するかと、取引所の所有制限だ。
- 野党は2027年施行の22%暗号資産税の廃止法案を提出し、不公平な税制の是正を求めている。
- 与党と政府は課税実施の立場を続けており、施行5カ月前の最終局面で議論が活発化している。

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
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