SpaceXが2026年8月4日、上場企業として初めての四半期決算を発表した。売上高は市場予想を9億ドルも上回る78億ドルと好調だった。
しかし収益面で影を落としたのが、同社が保有するビットコインの評価損だ。四半期末までのビットコイン価格下落により、評価額が約5億4,000万ドル(約5,400億円)減少している。好調な本業と暗号資産市場の下落が、一つの決算書の中で交錯する形となった。
主力3事業が牽引、売上高は前年から大幅成長

SpaceXの2026年第2四半期(4〜6月)決算は、本業の力強さを示す内容だった。売上高は78億ドルに達し、ウォール街のアナリスト予想(69億ドル)を13%上回る着地となっている。
牽引役となったのは「打ち上げ事業」「Starlink(衛星インターネット)」「AI関連事業」の3本柱だ。特にStarlinkは世界規模で加入者を伸ばしており、通信インフラとしての地位を固めつつある。
EBITDAは前年比で約3倍に急拡大
収益性にも大きな改善が見られた。純損失は前年同期の10億ドルから5億4,100万ドルへと半減している。つまり、赤字幅を約46%も縮小させた計算だ。
調整後EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益。本業のキャッシュ創出力を示す指標)は35億ドルと、前年同期から3倍近い水準にまで拡大した。本業での稼ぐ力が急速に強まっている証拠であり、巨大な先行投資を続ける同社にとっては心強い数字と言える。
ビットコイン18,712BTCを保有、評価損は約5億4,000万ドル

一方で暗号資産の保有状況も明らかになった。SECへの提出書類によると、SpaceXは2026年6月30日時点で18,712BTCを保有している。
保有数そのものは2025年末から変わっていない。つまりビットコインの売却は行っておらず、長期保有の姿勢を継続していることになる。この点は、決算発表後の市場でも一定の評価を受けた。
33%の価格下落が簿価を直撃
問題となったのは価格だ。2026年1〜6月の間にビットコイン価格は約33%下落し、これに伴って保有資産の評価額も大きく目減りした。
具体的な数字を見ていこう。2025年末時点では16億4,000万ドルだったビットコイン保有額が、2026年6月末には11億ドルまで減少。差し引き約5億4,000万ドルの評価損が発生した計算になる。
これはあくまで会計上の評価損であり、ビットコインを売却して実現した損失ではない。しかし上場企業として四半期ごとに資産価値を開示する義務があるSpaceXにとっては、避けて通れない数字となった。
AIインフラに184億ドルの巨額投資

決算資料からは、SpaceXがAI関連インフラに極めて積極的な投資を続けていることも明らかになった。
第2四半期の設備投資額(キャピタル・エクスペディチャー)は184億ドル。これはアナリスト予想(130億ドル)を大きく上回る水準であり、同社がAIを将来の中核事業と位置づけていることを示している。
コスト増が株価の重しに
積極投資は長期的な成長に不可欠な一方、短期的には収益の圧迫要因にもなる。決算発表後の時間外取引でSPCX株は6%下落し、118ドルとなった。
通常取引では10%近く上昇して引けていただけに、市場の反応はやや冷ややかだったと言える。投資家から見れば「売上は良いがコストも膨らんでいる」というのが率直な印象だったようだ。
8月6日に迫る、約9.12億株のロックアップ解除

今回の決算発表が特に注目されたのには、もう一つ理由がある。2026年8月6日に、SpaceXの社員や初期投資家が保有する約9億1,200万株の売却制限(ロックアップ)が解除されるのだ。
ロックアップ解除とは、IPO(新規株式公開)時に設定された「一定期間は株を売ってはいけない」というルールが外れること。大量の株が市場に出回る可能性があり、需給の悪化から株価が下落しやすいタイミングとして知られている。
SpaceXはわずか2カ月前の2026年6月に、暗号資産・テクノロジー分野として過去最大となる860億ドルのIPOを実施したばかり。上場後の最初の試金石となる局面で、この決算がどう評価されるかが市場の焦点だった。
本業好調と評価損の狭間、SpaceXの戦略をどう読むか

今回の決算は、SpaceXという企業の「二面性」を浮き彫りにしたと言える。一つは打ち上げ・通信・AIという本業領域で着実に収益基盤を強化している顔。もう一つは、ビットコインというボラティリティの高い資産を大量に保有し、その値動きに財務が左右される顔だ。
ビットコイン保有をどう評価すべきか
同社がビットコインを売却しなかったことについては、二通りの解釈が成り立つ。長期目線での資産運用としてブレていない前向きな評価と、評価損をそのまま抱え続けるリスクを指摘する慎重な見方だ。
もっともSpaceXの財務基盤は強固で、調整後EBITDAが年換算で140億ドル規模に達することを考えれば、ビットコインの評価損は「痛手だが致命傷ではない」というのが妥当なところだろう。本業のキャッシュフローが健全であれば、ビットコインの含み損を抱えたまま事業拡大のための投資を継続することも十分に可能だ。
最大の関心事はロックアップ解除後の値動き
短期的に最も注目すべきは、やはり8月6日のロックアップ解除だ。決算内容自体はまずまずだったものの、920億ドル規模の株式が市場に流入する可能性を前に、投資家は慎重な姿勢を崩していない。
イーロン・マスク率いるスペースXは、テクノロジー業界でも異色の存在として知られる。他の企業であれば株価対策に追われる局面でも、マスク氏の場合は想定外の一手を打ってくることが多い。今回の決算とロックアップ解除を機に、同社がどのような資本政策を見せるのか。市場関係者の視線は、週明けの値動きに集まっている。
この記事のポイント
- SpaceXの上場後初決算は売上高78億ドル、市場予想を上回る好調な本業を示した
- ビットコインは18,712BTCを保有継続も、33%の価格下落により評価損は約5.4億ドル
- AIインフラ投資に184億ドルを投じ、長期的な成長戦略を加速している
- 8月6日の9億1200万株のロックアップ解除が短期的な株価の焦点に

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