Strategyが1,587BTCを約1億ドルで購入、保有84万6,842BTCに

米国のビジネスインテリジェンス企業Strategy(旧マイクロストラテジー)が、1,587BTCを約1億ドル(約155億円)で追加購入した。6月15日に提出された規制当局への文書で明らかになった。

1回の購入として目を引く金額ではないかもしれない。しかし2週間前に初のBTC売却を公表し、市場の一部から「方針転換か」と囁かれた直後とあって、買い増し再開のニュースが持つ意味は小さくない。ステーブルコインや競合企業のように小出しに利益確定する動きがある中で、Strategyは長期保有の旗を降ろしていないことを改めて示した格好だ。

1,587BTCの購入、平均取得単価は約63,000ドル

1,587BTCの購入、平均取得単価は約63,000ドル

今回の購入は1BTCあたり平均63,024ドルで行われた。ドル円相場を考慮せず単純計算すると、総額で約1億ドルを投じたことになる。この価格は、ビットコインが6月初旬につけた直近の安値圏からやや戻した水準に位置している。

購入後の発表時点で、ビットコインはCoinGeckoのデータによれば約66,200ドルで取引されていた。平均取得単価との差額で見ると、購入直後に含み益が生じている計算だ。とはいえ、これは短期的な価格変動に過ぎない。Strategyの投資哲学からすれば、取得単価の数パーセントの上下はもはや誤差の範囲だろう。

総保有数は846,842BTC、取得総額は640億ドル超

総保有数は846,842BTC、取得総額は640億ドル超

今回の購入を受け、Strategyのビットコイン保有総数は846,842BTCに達した。全取得にかかった累計コストは約640億7,000万ドルとされている。

単純に過去の取得総額を保有数で割った平均取得単価は約75,656ドルだ。2024年以降に買い増した分の価格が全体の平均を押し上げた形になっている。もっとも、初回購入時のような数千ドル台の水準とは異なるため、取得単価の上昇は避けられない流れともいえる。

保有BTCの時価評価は、発表時のビットコイン価格約66,200ドルを基に計算すると約5,610億ドル(約87兆円)となる。簿価ベースでは含み損を抱える格好だが、企業財務の文脈ではあくまで簿価が重視される点に注意が必要だ。

MSTR普通株式の売却で約2億900万ドルを調達

MSTR普通株式の売却で約2億900万ドルを調達

Strategyは今回のBTC購入資金について、自社のクラスA普通株式(MSTR)の売却で調達したと説明している。提出書類によれば、この期間中に173万株のMSTR株を売却し、約2億900万ドルの資金を手にしたという。

前回の1,550BTC購入時も同様にMSTR株式の売却による資金調達が行われており、同社にとって定型的な手法になりつつある。見方を変えれば、自社株を高値で市場に供給しながら、その資金をビットコインに振り向けるという資本配分戦略を愚直に継続していることになる。

一方で、STRC、STRF、STRK、STRDといった優先株プログラムについては、この1週間で特段の動きはなかった。これらの優先証券は、配当を好む投資家層を引きつけるために設計された商品だ。いまのところBTC買い増しの主たる資金源は普通株式のままだが、市場環境によって柔軟に融通を利かせる構えとみられる。

優先株STRC、4週連続で額面割れ

優先株STRC、4週連続で額面割れ

同社が発行する優先株のひとつSTRCは、額面100ドルに対して市場価格が94ドル台後半で推移しており、6月12日時点で4週連続の額面割れを記録した。優先株トラッキングサイト「STRC.live」によれば、これは発行以来最長の低迷期間だという。

金曜日の終値は94.80ドルで、前日比約1%の下落だった。額面割れが定着しつつある現状は、同社の資金調達手法の多様化にとって軽視できない論点だろう。STRCは、暗号資産に直接投資できない機関投資家にもBTCエクスポージャーを提供する商品だが、ここにきて社債的な性格を持つ商品の需要がやや冷え込んでいる可能性が浮かぶ。

ただし、優先株市場の低迷がただちにStrategyの財務基盤を揺るがすわけではない。あくまで選択肢のひとつがやや使いくくなっている、という程度の温度感だ。

2週間前の32BTC売却と、セイラーの弁明

2週間前の32BTC売却と、セイラーの弁明

今回の追加購入が注目を集めた背景には、6月1日にStrategyが公表した32BTCの売却がある。これは同社にとってここ数年で初めて報告されたビットコイン売却だった。

売却規模は保有全体からすればごくわずかだが、「バイ・アンド・ホールド(買って持ち続ける)」を標榜してきた企業がついに利益確定に動いたのか、という憶測が暗号資産コミュニティで広がった。実際、ソーシャルメディア上では「方針転換の前兆ではないか」と受け取る声もあった。

これに対し、Strategyのエグゼクティブチェアマンであるマイケル・セイラーはCoinDeskの取材に応じ、売却の意図を明確に説明している。セイラーによれば、ビットコインを保有する企業であっても、配当を支払う証券をサポートするために保有資産の一部を売却できる柔軟性は必要だという。

これは同社が拡大しつつある「デジタル・クレジット事業」と密接に関係する発言だ。具体的には、ビットコインを裏付け資産とするクレジット商品を展開するうえで、一定の流動性を確保する必要があるという文脈で語られたとされる。つまり、32BTCの売却は決して戦略的撤退ではなく、ビットコインを核に据えた金融事業の運営上必要なオペレーションだったとの立場だ。

セイラーは今回の購入に先立つ日曜日、X(旧Twitter)に短い投稿をしている。「Still adding dots」という一文で、これは投資家コミュニティの間では、同社がまもなくビットコイン買い増しを発表するサインとして知られている。

32BTCの小さな売却に市場がざわついたのは、Strategyが長年にわたって「売らない」姿勢を強調してきたためだ。だがセイラーの説明を素直に受け取るなら、それは硬直したドグマではなく、事業の成長に応じて進化する財務戦略の一環として理解すべきだろう。

買い増し再開が示す、企業ビットコイン保有の現在地

買い増し再開が示す、企業ビットコイン保有の現在地

全体を振り返ると、今回の1,587BTC購入は、Strategyがビットコインを自社の資産構成の中心に据える方針をいまも維持している証左といえる。一時的な売却があったとはいえ、それは「事業を回すための潤滑油」に過ぎず、買い増しのペース自体に変化は見られない。

むしろ特筆すべきは、自社株の機動的な売却と優先株プログラムという複数の調達パイプを持ちながら、BTC買い増しを着実に継続している点だ。資本市場へのアクセスが良好な企業だからこそ取れる戦略ではあるが、暗号資産市場の成熟に伴い、このモデルを参考にする企業が増えても不思議はない。

同時に、優先株の額面割れや含み損の状況は、外部環境の変化に脆弱な部分でもある。ただし、これらは短期的な株価や暗号資産相場のノイズとして処理される類のリスクであり、少なくとも現時点でStrategyの長期戦略を揺るがす材料にはなっていない。

この記事のポイント

  • Strategyが1,587BTCを約1億ドルで購入し、総保有数は846,842BTCに達した
  • 購入資金はMSTR普通株式の売却で調達。優先株プログラムに動きはなかった
  • 2週間前の32BTC売却は、デジタル・クレジット事業のための流動性確保と説明されている
  • 優先株STRCは額面100ドルを下回る水準で推移し、発行以来最長の低迷期にある
  • 買い増し再開により、同社の長期保有戦略が不変であることが改めて示された
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