世界最大のビットコイン保有企業であるStrategy(旧MicroStrategy)が、週次のビットコイン購入計画を一時停止した。
同社の会長マイケル・セイラー氏は日曜日、Xへの投稿で今週の購入を見送ることを明らかにし、翌週には買い付けを再開する方針を示した。これは今年に入ってわずか2度目の中断であり、タイミングは5月5日(火曜日)に迫った第1四半期決算発表の直前だ。
今回の発表は単なる小休止ではない。市場が注目するのは、Strategyのソフトウェア事業としての実体ではなく、同社をビットコイン投資の「資金調達マシン」へと変貌させた金融エンジンの信頼性だ。今週の決算は、その仕組みがいまだ投資家の信任を得ているかを試す場となる。
なぜ今、購入を止めたのか

CoinDeskの報道によると、セイラー氏はXへの投稿で「今週は購入なし。来週から再開する」と簡潔に述べた。Strategyがビットコインの定期購入を見送るのは、今年3月23日からの1週間に続き2回目だ。
表面的には、四半期決算を目前に控えた企業としては珍しくない動きとも言える。だがStrategyにとって、この沈黙は大きな意味を持つ。同社が四半期ごとに計上するビットコインの減損損失は、会計上の数字とはいえ厳しい目で見られるためだ。
コア事業だったビジネスインテリジェンス・ソフトウェアの売上高は、アナリスト予想では約1億2,500万ドルと前年同期比で約12.6%の増収が見込まれている。しかし、Yahoo Financeがまとめた6人のアナリストの平均予想では、1株当たり約27.33ドルの損失が予想されている。Zacks Researchのデータでは損失予想は3.41ドルと、その幅は大きい。
つまり、本業のソフトウェアは堅調でも、ビットコインの価格変動がもたらす評価損が最終損益を大きく押し下げる構図は変わっていないのである。
米国時間5月4日時点のBTC価格と保有実態
Strategyが現在保有するビットコインは818,334BTC。これはビットコインの総供給量2,100万枚の約3.9%に相当する天文学的な規模だ。直近の購入では平均取得単価77,900ドル台で3,273BTCを追加しており、記事執筆のアジア時間5月4日朝には、ビットコインは80,100ドル台で取引されていた。過去1カ月で約20%の上昇である。
ビットコイン価格が堅調な局面では、含み益が膨らみ、Strategyのバランスシートは強固に見える。しかし、セイラー氏が率いるこの「ビットコイン財務戦略」は、価格が下がる局面でその脆さを露呈するリスクを常に抱えている。今回の購入停止は、決算発表直前に市場の反応を慎重に見極めたい意向の表れとも受け取れる。
「ソフトウェア企業」から「資金調達マシン」へ

今やアナリストたちは、Strategyをソフトウェア企業としては評価していない。同社は「たまたまビットコインを持つソフトウェア企業」から、「たまたまソフトウェアも売っているビットコイン金融会社」へと、その評価の軸足を完全に移した。CoinDeskの記者もこの点を明確に指摘している。
火曜日の決算発表で真に問われるのは、ソフトウェアのライセンス販売の成績ではない。セイラー氏が構築した、ビットコインを買い続けるための無限の資金調達装置、すなわち「キャピタル・レイジング・マシン」の耐久性だ。
その中核を担うのが、個人投資家にも広く販売されている独自の金融商品、STRCである。
STRCの仕組みと潜むリスク
STRCとは、Strategyが発行する永久優先株の一種だ。額面は100ドル付近に設定され、毎月変動配当を支払う。直近の年率換算利回りは約11.5%と、極めて高水準だ。簡単に言えば、「Strategyという会社を信じてお金を預ければ、年利10%超のリターンが得られる」という商品性である。
この高利回りの原資は、Strategyの強固なバランスシートと、ビットコインの値上がりへの期待によって裏付けられている。同社はSTRCを通じて調達した資金でさらにビットコインを購入し、ビットコイン価格が上がれば会社の株式価値も上がり、さらに多くの資金を調達できる、という循環を回してきた。
しかし、このエンジンはビットコイン市場への強気な信頼を前提としている。もし市場心理が悪化しビットコインが大きく下落すれば、高利回りのSTRCは安定した収入源ではなく、単なる信用リスクに見え始める。特に、Strategyが保有するビットコインの含み損が拡大すると、配当の持続性に疑問符が付く。これが、今回の決算を前に市場の一部が感じている懸念である。
ビットコイン価格と決算発表を読み解く視点

このタイミングでの購入停止は、単に決算期間中の「様子見」と断じることはできない。市場は、Strategyが自らの資金調達メカニズムの健全性をどのように説明するかに注目している。
セイラー氏は「来週には購入を再開する」と宣言しているものの、火曜日に発表される決算内容と、それに対する市場の反応次第では、同社の資金調達環境が変わる可能性もある。仮に決算が予想外に悪く、株価が下落すれば、株式や優先株による資金調達コストは上昇する。そうなれば、これまでと同じペースでビットコインを購入し続けることが難しくなるかもしれない。
一方で、ソフトウェア事業自体は堅調に推移している。売上高が前年同期比で増加に転じている点は、ビットコイン一辺倒に見えるStrategyの事業基盤が完全に空洞化しているわけではないことを示している。だが、市場の関心はもはやそこにはなく、ビットコイン調達マシンの「燃料」がまだ十分に残っているか、ただ一点に集約されている。
この記事のポイント
- Strategyは決算発表を前に、週次のビットコイン購入を今年2度目の中止とした。
- 保有量は818,334BTCで総供給の約3.9%。もはや「ビットコイン金融会社」としての評価が定着している。
- 注目は高利回りのSTRC商品。強気相場では強固な資金循環を生むが、相場悪化時は信用リスクへと転じる脆弱性がある。
- 決算発表ではソフトウェア事業よりも、資金調達マシンの持続性を市場がどう評価するかが焦点となる。

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