スイスの金融市場監督機構FINMAが、個人投資家向けのビットコイン現物ETFを初めて承認した。運用会社BIT Asset ManagementのビットコインファンドETF(BBIT)は、11月にSIXスイス証券取引所へ上場する予定だ。
欧州で上場するビットコイン商品の多くはETPと呼ばれる債務証券で、発行体の信用リスクを伴う。今回のETFはスイスの集団投資スキームとして、投資家の資産を運用会社から分離して保護する仕組みを持つ。
公募はスイス国内に限定される。日本の投資家が直接購入できる商品ではないものの、規制の枠内でビットコインを保有できる選択肢が欧州で広がる点は重要な意味を持つ。
スイスがビットコイン現物ETFを初承認

BIT Asset ManagementのBBIT、11月にSIX上場へ
BIT Asset Managementは10月22日、同社のビットコインファンドETF(BBIT)が11月にSIXスイス証券取引所で取引を開始する見込みだと発表した。ETF(上場投資信託)は証券取引所で株式のように売買できる投資信託だ。通常の証券口座を通じて購入できるため、暗号資産取引所での口座開設や秘密鍵の管理は不要になる。
このファンドはビットコインを直接保有する。公募はスイス国内のみに限定されており、欧州連合(EU)のパスポート制度を使った域内販売は行われない。スイス居住者だけが、証券口座を通じてこのETFに投資できる設計だ。
ETPとETFの構造的な違い
BIT Asset Managementは、欧州で上場するビットコイン商品の大半がETP(上場投資商品)であり、発行体リスクを伴う債務証券だと説明している。ETPは法的には借金の証書に近い。投資家は発行体に対する債権を持つ形になり、発行体が経営破綻すれば元本が毀損する恐れがある。
一方、今回のビットコインファンドETFはスイスの集団投資スキームに該当する。投資家の資産は運用会社の資産と別に管理され、投資家のために隔離される。つまり、運用会社が破綻した場合でも、ビットコインの保有資産そのものは投資家に帰属する仕組みだ。
ETPでは発行体の信用力が投資成果を左右する。ETF型では資産の分離管理によって発行体リスクを遮断できる。この構造的な違いは、長期保有を考える投資家にとって実務上大きな差になる。
個人投資家に開かれた直接投資の道

スイス居住者限定の公募
このETFの公募はスイス国内に限定されている。EUのパスポート制度を利用した域内販売は行われないため、スイス居住者以外の投資家がこの商品を購入するには別の経路が必要になる。地域を限定した背景には、スイス法の枠組みに沿って慎重に展開する意図があるとみられる。
FINMAの承認も、あくまでスイス法上の商品として下りている。欧州全体で販売できるパスポートを伴わない点は、この商品の普及スピードをスイス国内に限定する要因になる。
資産分離保護の仕組み
集団投資スキームの最大の特徴は、投資家の資産が運用会社の資産と法的に分離される点にある。ビットコインは専用の保管機関に預けられ、投資家のためにリングフェンス(隔離)される。リングフェンスとは、特定の資産を他の資産から切り離して保護する仕組みを指す。
この仕組みは、過去に問題になった取引所の資産と顧客資産の混在リスクを避ける設計でもある。投資家保護の観点から、ETF型商品が備える分離管理の構造は重要だ。商品の仕組みを理解して選ぶことで、不測の事態に備えやすくなる。
FINMAが単独ビットコイン投資を認めた理由

取引履歴と取引量が決め手
FINMAは2021年から、複数の暗号資産を組み合わせたファンドを認めてきた。しかし、ビットコインだけに投資するファンドを承認したのは今回が初めてだ。判断材料になったのは、ビットコインの取引履歴の長さと、他の暗号資産と比べて高い取引量だとFINMAは説明している。
つまり、ビットコイン市場が十分に成熟し、流動性が確保されていると規制当局が判断したことになる。他の暗号資産よりも長い取引履歴と高い出来高が、単独投資ファンドの承認を後押しした形だ。
一方でFINMAは、他の運用会社からもビットコインETFの申請が提出されていることを明らかにしている。今後、同種の商品が相次いで承認される可能性がある。スイス国内でビットコインETF市場が本格的に立ち上がる兆しといえる。
ボラティリティへの警鐘
今回のファンドは、スイスの「その他のオルタナティブ投資ファンド」という区分に属し、特にリスクが高いカテゴリーとして位置づけられている。FINMAは、承認したETFを通じて投資する場合でもビットコインの価格変動が非常に大きい点は変わらないと強調している。
つまり、規制当局として商品を認めた一方で、投資家にはリスクを十分に理解するよう注意を促している。金融商品としての入口を開きつつ、投機的な側面への警戒を怠らないバランス感覚を取った形だ。
欧州の投資商品と世界の潮流

欧州ではETPが主流
欧州全域を見渡すと、ビットコインに連動する上場商品の主流はETPだ。ETPは債務証書であり、投資家は発行体に対する債権を持つ。発行体が経営破綻すれば、投資元本が毀損する可能性がある。この発行体リスクは、欧州の暗号資産投資商品が長年抱えてきた構造的な課題だった。
スイスで承認されたETFは、投資家の資産が運用会社から独立して保管されるため、この発行体リスクを回避できる。欧州の投資家にとって、構造面でより安全な選択肢が加わったことになる。ETPからETFへの資金シフトが進む可能性も考えられる。
米国との比較とスイスの位置づけ
米国では2024年1月に現物ビットコインETFが承認され、その後、巨額の資金が流入した。スイスは欧州の金融ハブとして、米国に続く形で個人投資家向けの現物ETFを導入する。暗号資産の投資商品が世界的に整備されていく流れの中にある動きだ。
スイスはEUに加盟していないため、EUの暗号資産規制であるMiCAの適用対象外だ。しかし、独自の規制枠組みで暗号資産商品を認める姿勢は、欧州全体の制度設計にも影響を与える可能性がある。金融立国としての競争力を維持する狙いもあるとみられる。
市場への影響と今後の展望

ビットコインETFを巡る資金流入は世界的に強まっている。Cointelegraphの関連記事では、直近3日間でビットコインETFに5億2,800万ドルがさらに流入し、合計額が10億ドルを超えたと伝えている。個人投資家だけでなく機関投資家の資金も、規制された投資商品を通じて暗号資産市場へ向かっている。
スイスで新たな現物ETFが上場すれば、欧州の投資家がより安全な構造でビットコインを保有できるようになる。ETPで生じていた発行体リスクを避けたい投資家にとって、新しい受け皿となるのは間違いない。
ただし、FINMAが強調するように、ビットコインの価格変動リスクはETFの構造では消えない。投資家は商品の仕組みだけでなく、原資産であるビットコイン自体のリスクを理解する必要がある。ETFへの投資が、そのまま元本保証を意味するわけではない点を忘れてはならない。
今後の焦点は、他の運用会社が申請したETFが承認されるかどうか、そしてスイスで最初のETFがどの程度の資金を集めるかになる。欧州のビットコイン投資商品市場は、ETP一辺倒の時代から、より投資家保護に配慮した商品が選ばれる段階へ入ったとみてよい。
この記事のポイント
- スイスのFINMAが個人投資家向けビットコイン現物ETFを初めて承認した
- BIT Asset ManagementのBBITは11月にSIXスイス証券取引所へ上場予定だ
- 欧州で主流のETPとは異なり、資産を分離保護するETF型の構造を持つ
- 公募はスイス国内限定で、他の運用会社の申請も続いている
- ビットコインのボラティリティリスクはETFでも変わらない

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
分かりやすい解説で、ブロックチェーン革命の潮流を一般に広めることを目指す。初心者から上級者まで、最新情報を求めるすべての人に役立つ情報発信を心がけている。
