トランプ氏、予測市場のCFTC管轄を擁護 州との規制闘争が最高裁へ

米国で急成長する予測市場を誰が監督するのか。この問いを巡る法廷闘争が、連邦最高裁に持ち込まれる可能性が高まっている。

ドナルド・トランプ米大統領は5月26日、自身のSNS「Truth Social」への投稿で、商品先物取引委員会(CFTC)が予測市場に対する「排他的な権限」を保持することが「極めて重要だ」と明言した。

この発言は、複数の州が予測市場を事実上のギャンブルとみなして規制を強める中で出された。連邦政府と州政府の管轄争いは、暗号資産業界にも大きな影響を及ぼす構図だ。本記事では対立の構造から今後の展望まで、詳しい友人が教えてくれるような距離感で解説する。

トランプ氏の電撃投稿、CFTCの「単独管轄」を支持

トランプ氏の電撃投稿、CFTCの「単独管轄」を支持

トランプ大統領はこの日の投稿で、暗号資産に友好的な姿勢で知られるCFTCのマイケル・セリグ委員長の主張に直接的に同調した。セリグ氏は現在、CFTCで唯一の委員であり、事実上のトップとして予測市場の規制をリードしている。

トランプ氏は「私のリーダーシップの下で、我々は各州にとってのゴールドスタンダードとなる『道のルール』を設定している」と述べ、民主党系の政治家たちを名指しで強く批判した。「クリス・クリスティ、レティシア・ジェームズ、ティム・ウォルズ、JB・プリツカーのようなクズどもにルールを作らせるわけにはいかない」という強い言葉で、州による介入を断固拒否する姿勢を示したのだ。

「ルール作りは連邦の専権事項」という論理

トランプ政権の立場は明確だ。予測市場は新しい形の金融市場であり、その監督は連邦規制当局の役割であるというものだ。予測市場とは、選挙結果やスポーツの勝敗といった将来の出来事の結果に対して、市場参加者が「yes」か「no」かを売買するプラットフォームを指す。

たとえば「次の大統領選で誰が勝つか」という命題に対し、「候補Aの勝利」という結果を1株0.6ドルで買ったとする。結果が的中すれば1株あたり1ドルの配当を受け取れるが、外れれば価値はゼロになる。この価格変動を利用して売買益を狙う仕組みで、概念的には先物取引の一種と説明できる。

トランプ氏はさらに「他国はこの新しい形の金融市場を狙っている。我々はトップの座を維持したい」と国際競争力の観点からも規制緩和の必要性を訴えた。暗号資産についても同様の文脈で「我々は現在、世界の暗号資産首都だ。他国が必死に我々の地位を奪おうとしているが、そうはさせない」と言及している。

CFTCと各州、真っ向から対立する規制の根拠

CFTCと各州、真っ向から対立する規制の根拠

現在、米国の法廷では連邦規制当局と州政府が真っ向から対立している。争点はシンプルだ。予測市場の契約は「新しい金融商品」なのか、それとも「見せ方を変えただけの賭博」なのか。

CFTC側の主張、指定契約市場としての管轄権

CFTCは、規制された指定契約市場(DCM)が提供するすべての予測市場契約は自らの管轄下にあると主張する。州がこれに干渉する権利はないという立場だ。DCMとは、CFTCに登録され厳格なルールの下で運営される取引所のことで、一種の「お墨付き」を得た市場といえる。

CFTCはこれまでに、トランプ氏が名指しした政治家に関連する州も含め、複数の州を相手取って訴訟を起こしてきた。連邦法に基づく監督権限が州法によって侵害されているというのがその理由で、州の規制を差し止めるための法廷助言書(アミカスブリーフ)も提出している。

州側の主張、本質はギャンブル規制

一方、州政府の主張はより直感的だ。ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官は、一部の予測市場が州の賭博法に違反しているとして訴訟を提起。イリノイ州のJB・プリツカー知事も同様の理由で事業者に停止命令を送り、ミネソタ州のティム・ウォルズ知事は先週、予測市場の運営に刑事罰を科す法案に署名したばかりだ。

プリツカー知事はBlueskyへの投稿で「イリノイ州はオンライン予測市場でのインサイダー取引を防止し禁止する措置を取った」と述べ、こう反論した。「我が国史上最も腐敗した大統領は、自分の家族や政権が利益を得続けられるように、州が予測市場を規制できないようにしたいのだ」

元ニュージャージー州知事のクリス・クリスティ氏も、以前から予測市場をギャンブル商品と同列に扱い、州による規制の権限を擁護してきた。このように両者の主張は完全に平行線をたどっている。

予測市場を巡る最新の法的攻防と規制動向

予測市場を巡る最新の法的攻防と規制動向

この連邦と州の権限争いは、すでに連邦高裁レベルに達している。CoinDeskの記事によれば、最終的には米連邦最高裁で争われる可能性が高いという。判決が出れば、米国における予測市場ビジネスの命運を決定的に左右することになる。

海外も締め付けを強化、スペインなどの動き

米国内での議論が活発化する一方で、海外では予測市場に対する逆風が強まっている。スペインは大手プラットフォームのPolymarketとKalshiに対して懲戒手続きを開始し、国内のインターネットプロバイダーにアクセス遮断を命じた。

規制当局は「未成年者や自己除外ギャンブラーに対する保護策が欠如している」として、両社のサービスを無許可の賭博商品と断定。スペインの賭博法で義務付けられているライセンスなしでの運営が問題視された形だ。インドネシアやインドでも過去1週間以内に同様の禁止措置が取られている。

米議会も調査に乗り出す

規制の網は国内でも狭まりつつある。米下院の委員会は先週、予測市場に関する調査を正式に開始したことを確認した。また、ニューヨーク・タイムズ紙は週末の報道で、前CFTC委員長代行のキャロライン・ファム氏の下で、トランプ氏の家族ビジネスと関係のある暗号資産企業などのDCM申請を承認する際、懸念を表明した職員たちが疎外されていたと報じている。

この報道に対し、CFTCもファム氏の現在の勤務先であるMoonpayも、CoinDeskのコメント要請にすぐには応じていない。業界と政権の距離感に疑念が生まれれば、規制の正当性を揺るがす材料にもなりかねない。

トランプ家と予測市場、無視できない利害関係

トランプ家と予測市場、無視できない利害関係

トランプ大統領の熱心な姿勢の背景には、無視できない個人的な利害の存在が指摘されている。大統領の長男であるドナルド・トランプ・ジュニア氏は、予測市場の二大巨頭であるPolymarketとKalshiの両方で顧問を務めているのだ。

さらに、トランプ氏を公然と支持してきたキャメロン&タイラー・ウィンクルボス兄弟が創業した暗号資産取引所Geminiも、予測市場プラットフォームを立ち上げ、先週末にはパーレイ型契約の自己認証を申請したばかりだ。パーレイ型契約とは、複数の予測を組み合わせて配当率を高める仕組みで、よりギャンブル性の高い商品設計として知られる。

このような人的・資本的なつながりが、政権の規制方針に影響を与えているのではないかという懸念は、プリツカー知事の「家族が利益を得続けるため」という痛烈な批判に端的に表れている。規制の枠組み作りが、公正なルール形成ではなく特定事業者の利益誘導と取られるリスクは、今後も議論の焦点となるだろう。

暗号資産市場と予測市場、重なり合う未来図

暗号資産市場と予測市場、重なり合う未来図

今回のトランプ氏の表明は、暗号資産業界にとっても重要な意味を持つ。同氏がTruth Socialへの投稿で「暗号資産首都」の地位維持を予測市場の議論と並列で語ったのは偶然ではない。両者は規制の不確実性という共通の課題を抱えており、CFTCをどこまで強化できるかが成長の鍵を握っているからだ。

CFTC優位がもたらす事業環境の変化

仮にCFTCの排他的管轄権が連邦最高裁で認められれば、予測市場事業者は州ごとに異なる規制に対応する煩雑さから解放される。これは暗号資産企業が求めている規制の明確化にも通じる話だ。逆に州の権限が強化されれば、ニューヨークやイリノイのように厳格な州では事実上の事業禁止に追い込まれ、市場の分断が進む可能性が高い。

暗号資産と予測市場は技術的にも接近しつつある。Polymarketはポリゴン(MATIC)ネットワーク上で稼働しており、スマートコントラクトによって取引の透明性を確保している。こうしたブロックチェーンベースの予測市場は、従来の中央集権型プラットフォームに比べて検閲耐性が高く、仮に州がアクセス遮断を命じても技術的に迂回が容易だという特徴も併せ持つ。

「規制の空白地帯」が生むリスク

連邦と州の綱引きが長引けば長引くほど、規制の空白地帯が生まれ、利用者保護が後回しになるリスクがある。未成年者の参加防止やマネーロンダリング対策といった基本的な安全策の整備が遅れれば、業界全体の信頼を損ないかねない。スペインがアクセス遮断に踏み切った理由も、まさにこの点にあった。

トランプ政権が打ち出す「ルールのゴールドスタンダード」の中身が問われるのはこれからだ。政治的なレトリックだけでなく、具体的な規制の枠組みが示されなければ、国際競争力の維持という目標も達成は難しい。現に、規制を嫌ったイノベーション企業がシンガポールやUAEなど、より明確なルールを提供する法域に流出する動きはすでに始まっている。

この記事のポイント

  • トランプ大統領がCFTCによる予測市場の排他的管轄権を支持する声明をSNSで発表した
  • ニューヨークやイリノイなど複数の州が予測市場を賭博とみなし、規制や訴訟で対抗している
  • 管轄争いは連邦高裁にまで達し、最終的に最高裁で争われる可能性が高い
  • トランプ家がPolymarketやKalshiと関係を持つことから、利益相反を指摘する声がある
  • 暗号資産業界もCFTCの権限強化を注視しており、規制の帰趨が市場構造に直結する構図だ
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