米暗号市場構造法案の公開延期 安定コイン利回り規制で業界と協議続く

米国の包括的な暗号資産規制法案「市場構造法案」の公開が延期された。法案策定の中心となる上院議員らが、特に安定コインの利回り(イールド)に関する規制条項について、暗号業界や銀行業界の代表者と最終調整を続けているためだ。

複数の関係者によれば、業界代表者は4月3日と4日に議会スタッフと会合を持ち、安定コイン利回りに関する修正された妥協案の条文を精査している。法案の全文公開は今週中には難しい見通しだ。

この法案は、暗号資産が証券か商品かを区分し、取引所の規制枠組みを定めるなど、米国における暗号市場の基本的なルールを確立するものとして期待されている。その成立に向けた最大のハードルの一つが、安定コインへの利回り付与をどう扱うかという点だ。

安定コイン利回り規制が最大の焦点

安定コイン利回り規制が最大の焦点

市場構造法案の遅延の主な原因は、安定コインへの利回り付与に関する規制条項にある。アンジェラ・オルソブロックス民主党上院議員(メリーランド州)とトム・ティリス共和党上院議員(ノースカロライナ州)が主導する妥協案の条文が、先週、業界関係者に初めて示された。

CoinDeskが入手した情報によると、先週示された案では、「安定コインの残高のみに基づく利回り」の支払いは禁止される内容だった。しかし、「活動に基づく利回り」の支払いは認められる可能性を残していた。この区別が実際にどのように運用されるかが、業界の懸念材料となっている。

暗号業界側はこの条文にいくつかの問題点を指摘した。ただし、関係者の一人は、業界が求める変更の多くは、利回りの扱いに関する根本的な内容ではなく、詳細を明確化するための技術的な微調整が中心だと述べている。条文の具体的な修正内容や、一般公開の時期については、現時点では明らかになっていない。

法案成立までの次のステップ

法案成立までの次のステップ

法案が公開された後の手続きも見えてきている。シンシア・ラミス共和党上院議員(ワイオミング州)は先月、法案の「マークアップ」公聴会が4月中に行われるとの見通しを示した。

マークアップとは、議員が法案条文を詳細に検討し、修正案を提案し、委員会として法案を採択するかどうかを投票する重要なプロセスだ。上院銀行委員会の規則では、公聴会の少なくとも48時間前までに法案を公開しなければならない。つまり、マークアップの日程が決まれば、その2日前には最終的な条文が公表されることになる。

現在の調整が順調に進めば、4月中にマークアップが実施され、その後、本会議での審議へと進む道筋が開ける。しかし、利回り問題以外にも解決すべき課題が残っているため、スケジュールは流動的だ。

残る未解決課題:DeFi定義と政治的問題

残る未解決課題:DeFi定義と政治的問題

安定コインの利回り問題が最も目立つ争点だが、市場構造法案には他にも重要な未解決事項が存在する。

DeFiの定義と規制アプローチ

一つは、分散型金融(DeFi)をどのように定義し、規制するかという問題だ。DeFiとは、中央管理者を置かず、ブロックチェーン上のスマートコントラクトによって運営される金融サービス全般を指す。従来の金融規制は中央集権的な事業者を前提としており、非中央集権的なプロトコルにどう適用するかは、立法上の大きな課題となっている。

法案がDeFiプロトコルの運営者や開発者にどのような責任を求めるか、あるいは全く異なる規制枠組みを設けるかは、業界の将来を大きく左右する。規制が厳しすぎれば米国内でのイノベーションが阻害され、緩すぎれば投資家保護が不十分だとの批判を招く可能性がある。

トランプ大統領関連案件への言及

もう一つの政治的に微妙な問題は、ドナルド・トランプ大統領の家族が関与する暗号資産プロジェクトを法案がどう扱うかだ。トランプ大統領自身が暗号資産に好意的な発言を繰り返しており、家族も関連事業に関わっていると報じられている。

法案が大統領家族の関与に特別な言及をするか、あるいは利益相反を防ぐ一般的な条項を盛り込むかは、超党派の支持を得る上で重要な要素となり得る。この点についても、与野党間で調整が続いているとみられる。

司法省の暗号捜査方針転換の影響

司法省の暗号捜査方針転換の影響

議会で規制の枠組みが議論される一方、執行機関である司法省の動向も市場に影響を与えている。トランプ大統領は先ごろ、パム・ボンディ司法長官を更迭し、後任としてトッド・ブランシュ副司法長官を暫定トップに指名した。

ブランシュ氏は副司法長官時代に、司法省内の「国家暗号通貨執行チーム」を解体し、検察官に対し、暗号業界における規制違反案件の追及を避けるよう指示を出していたことが知られている。この方針転換は、規制当局による執拗な追及を恐れていた業界からは一定の評価を得ていた。

立法(議会)と執行(司法省)の両面で、暗号資産に対する米国の姿勢が過度に厳格ではない方向にシフトしている可能性が示唆される。市場構造法案が成立すれば、司法省の捜査も、その法律に基づいて行われることになるため、両者の動向は連動している。

業界と市場への影響

業界と市場への影響

市場構造法案の行方は、米国を拠点とする暗号企業や投資家にとって極めて重要だ。明確な規制が整えば、事業の見通しが立ちやすくなり、長期的な投資が促進される可能性がある。

特に安定コインの発行者や、利回りを提供するDeFiプロトコルは、法案の条文に直接的な影響を受ける。規制の内容次第では、ビジネスモデルの大幅な変更を余儀なくされる事業者も出てくるだろう。

一方で、包括的な法案が成立することは、暗号資産市場の制度的成熟に向けた大きな一歩となる。証券と商品の区分が明確になることで、上場投資信託の承認など、伝統的金融市場との接点が増える契機にもなり得る。

この記事のポイント

  • 米暗号市場構造法案の公開が延期された。安定コイン利回り規制の条文について、業界と議会スタッフが最終調整を続けている。
  • 法案は「残高のみに基づく利回り」を禁止する一方、「活動に基づく利回り」は認める方向で調整が進んでいる。業界は条文の明確化を求めている。
  • 上院銀行委員会でのマークアップ公聴会は4月中に行われる可能性があるが、法案公開から少なくとも48時間前までの公開がルールとなっている。
  • 未解決課題として、DeFiの定義・規制方法と、トランプ大統領家族の暗号関連案件への言及の有無が残っている。
  • 司法省は暗号規制違反案件の積極的な追及を控える方針を示しており、立法と執行の両面で環境が変化している。
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