米議員ら、CBDCの「永久禁止」を要求。2031年までの一時的措置に反対し監視社会化を警告

米国の一部の連邦議員が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を永久に禁止するよう議会指導部に対して強く求めている。

マイケル・クラウド下院議員を含む29名の議員は3月6日、マイク・ジョンソン下院議長とジョン・スーン上院院内総務に宛てた書簡を送付した。現在提案されている2031年までの「一時的な発行禁止」では、国民のプライバシーを保護するには不十分であるとの認識を示している。

この動きは、米連邦準備制度理事会(FRB)による通貨のデジタル化が、個人の金融自由を脅かす「監視国家」への道に繋がるとの危機感に基づいている。

米議員29名がCBDCの永久禁止を要求。監視社会への懸念

米議員29名がCBDCの永久禁止を要求。監視社会への懸念

マイケル・クラウド議員を中心とする共和党議員グループは、米政府によるCBDC発行の道を完全に断つべきだと主張している。彼らは書簡の中で、CBDCを「本質的に反アメリカ的」と表現し、手遅れになる前に終止符を打つ必要があると強調した。

現在、市場ではビットコイン(BTC)が67,000ドル台で推移するなど、既存の暗号資産への関心が高い。しかし、政府が管理するデジタル通貨は、これらとは対極の性質を持つ。

マイケル・クラウド議員らによる書簡の要旨

書簡を主導したクラウド議員は、CBDCが導入された場合、米国民が「憲法に違反する金融監視」にさらされるリスクを指摘した。CBDCとは、中央銀行が直接発行するデジタル形式の法定通貨のことだ。

これは、私たちが普段利用している銀行預金や現金とは異なり、中央銀行がすべての取引データを直接把握できる仕組みを指す。議員らは、非選出組織であるFRBに対し、国民の財務状況を完全に掌握する権限を与えるべきではないと主張している。

「一時的禁止」案(2031年まで)の限界

今回の書簡は、最近提出された連邦準備法(Federal Reserve Act)の修正案に対する反発として作成された。この修正案は、21世紀住宅への道法(HR 6644)の一部として盛り込まれたもので、FRBによるCBDC発行を2031年まで禁止する内容となっている。

しかし、反対派の議員らは、この「期限付きの禁止」は問題を先送りにしているだけに過ぎないと批判している。彼らは、禁止措置は「永久的(Permanent)」でなければならず、研究や調査も含めて一切の活動を停止させるべきだとの立場を崩していない。

進行中の関連法案とこれまでの経緯

進行中の関連法案とこれまでの経緯

米国議会では、CBDCを巡る複数の法案が並行して議論されている。それぞれの法案は、禁止の範囲や期間において異なるアプローチを取っており、党派間の対立も鮮明になっている。

21世紀住宅への道法(HR 6644)と修正案

上院銀行・住宅・都市委員会が3月2日に発表した「21世紀住宅への道法」には、CBDCに関する重要な条項が含まれている。この修正案は、FRBがデジタル通貨を発行する権限を2031年まで制限するものだ。

しかし、クラウド議員らはこの修正案を「骨抜きにされた内容」と切り捨てている。特に、FRBによるCBDCの研究活動を明確に禁止していない点が問題視されている。研究が継続されることは、将来的な導入への布石になるとの懸念があるためだ。

反CBDC監視国家法(HR 1919)の現在地

議員らが理想とする法案は、トム・エマー議員が2025年6月に提出した「反CBDC監視国家法(Anti-CBDC Surveillance State Act)」である。この法案は、FRBが個人に対して直接CBDCを発行することを禁じ、また金融政策の手段としてCBDCを利用することも制限する内容だ。

HR 1919は2025年7月に下院を通過したが、上院での承認はまだ得られていない。議員らは、今回の書簡を通じて、HR 1919に含まれていた強力な禁止条項を現在の修正案にも反映させるよう求めている。

CBDCが「反アメリカ的」とされる理由。プライバシーと自由の侵害

CBDCが「反アメリカ的」とされる理由。プライバシーと自由の侵害

なぜこれほどまでにCBDCに対する拒絶反応が強いのか。その背景には、米国の建国理念である「個人の自由」と「政府による監視への抵抗」がある。

金融監視とプライバシーの消失

CBDCの最大のリスクは、すべての決済データが中央集権的なサーバーに記録されることにある。これにより、政府は誰が、いつ、どこで、何にお金を使ったかをリアルタイムで把握することが可能になる。

これは、身分証を提示せずに現金で買い物をするような「匿名性」が完全に失われることを意味する。議員らは、これを中国が導入している「デジタル人民元」のような社会信用システムに繋がる危険な一歩だと見なしている。

非選出組織であるFRBへの権限集中

もう一つの懸念は、FRBという「国民によって選ばれていない組織」に、前例のないほどの権限が集中することだ。CBDCがプログラム可能な通貨(プログラマブル・マネー)となった場合、政府は特定の商品の購入を制限したり、預金にマイナス金利を強制したりすることが技術的に可能になる。

プログラマブル・マネーとは、あらかじめ特定の条件をプログラムされたデジタル通貨のことだ。例えば「有効期限が切れると消滅するお金」や「特定の地域でしか使えないお金」といった制御が可能になる。これは個人の財産権に対する重大な侵害になり得ると指摘されている。

独自の分析:CBDC禁止論が暗号資産市場に与える影響

独自の分析:CBDC禁止論が暗号資産市場に与える影響

米議会におけるCBDCへの強い反発は、暗号資産市場にとって短期的・長期的にポジティブな影響を与える可能性が高い。政府系デジタル通貨の不在は、民間セクターのイノベーションを加速させるからだ。

民間ステーブルコインへの追い風

米国が公式なCBDCを発行しないと決定した場合、その空白を埋めるのはUSDC(USD Coin)やUSDT(Tether)といった米ドル連動型のステーブルコインになる。ステーブルコインとは、価格が米ドルなどの法定通貨と1対1で連動するように設計された暗号資産だ。

すでにサークル(Circle)社などの発行体は、米国の規制に準拠した形での運営を強化している。政府が競合となるCBDCを発行しないことは、これらの民間企業にとって市場シェアを拡大する絶好の機会となる。また、これによりドル覇権がデジタル空間でも維持されるという、共和党議員らの主張とも合致する。

ビットコインの「価値の保存」としての優位性

CBDCを巡る議論が深まるほど、ビットコイン(BTC)の「検閲耐性」と「非中央集権性」の価値が再認識される。政府が個人の支出を監視・制限しようとする動きは、皮肉にも政府のコントロールが及ばない資産への需要を喚起する。

検閲耐性とは、第三者が取引を停止したり差し押さえたりすることが困難な性質を指す。CBDCが「監視の道具」として認識されるようになれば、自由を求める投資家にとって、発行上限が決まっており誰にも管理されないビットコインは、より魅力的な避難先となるだろう。

この記事のポイント

  • 米議員29名が、CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行を永久に禁止するよう議会指導部に書簡を送った。
  • 2031年までの一時的禁止案では、FRBによる監視社会化を防ぐには不十分であると主張している。
  • CBDCは「本質的に反アメリカ的」であり、個人のプライバシーと金融の自由を侵害するリスクが懸念されている。
  • この動きは、USDCなどの民間ステーブルコインや、非中央集権的なビットコインにとって追い風となる可能性がある。
  • 今後の焦点は、上院で「反CBDC監視国家法(HR 1919)」の強力な条項が復活するかどうかに集まっている。

出典

  • Cointelegraph「US lawmakers warn temporary CBDC ban isn’t enough, demand ‘permanent’ block」(2026年3月8日)
  • United States Congress「H.R.1919 – Anti-CBDC Surveillance State Act」(2025年6月)
  • United States Congress「H.R.6644 – 21st Century ROAD to Housing Act」(2026年3月)
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