米政府がドル連動型ステーブルコインの海外展開を促進する新たなイニシアチブを検討していることが明らかになった。ドルの基軸通貨としての地位を守るための戦略的な動きだ。
民間企業との合弁事業の設立を支援し、複数の政府機関が関与する可能性がある。中国やEUがデジタル通貨の開発を進める中で、米国も対抗策を打ち出そうとしている。
ステーブルコインの海外展開が実現すれば、米国債の需要拡大にもつながる。ドル覇権の維持とデジタル通貨競争への対応という2つの課題に同時に取り組む構えだ。
米政府が検討する海外展開イニシアチブとは

ブルームバーグが9月23日に報じた内容によると、トランプ政権はドル連動型ステーブルコインの海外展開を促進する計画を検討している。関係者の話として、米政府が民間企業とのジョイントベンチャー(合弁事業)を設立することで、ステーブルコインプロジェクトを支援する可能性が浮上した。
この計画には複数の連邦機関が関与する見通しだ。具体的には財務省、国務省、米国際開発金融公社(DFC)などが挙がっている。DFCは途上国への民間投資を支援する政府機関である。
民間企業との合弁という選択肢
米政府が民間企業との合弁事業を検討している点は、従来の規制アプローチとは異なる。政府がビジネスに直接関与する形になるからだ。
ステーブルコインの発行企業と連携し、海外での利用拡大を後押しするのが狙いとみられる。規制を整備するだけでなく、普及を積極的に支援する姿勢がうかがえる。
複数の政府機関が関与
財務省は米国債の管理を担い、国務省は外交政策を担当する。DFCは開発途上国への投資支援を専門とする機関だ。これらの組織が連携することで、経済政策と外交政策を組み合わせた総合的な戦略が可能になる。
ステーブルコインの海外展開は、単なる金融政策の一環ではなく、国際戦略として位置づけられている。米政府がこれほど多角的に暗号資産分野に関与するのは異例のことだ。
ステーブルコインがドル覇権を支える仕組み

ステーブルコインは、米ドルなどの法定通貨に価値を連動させた暗号資産だ。ドル連動型ステーブルコインは、発行企業が準備資産として米国債や現金を保有することが多い。
つまり、ステーブルコインの利用が増えれば、その分だけ米国債の需要が高まる。米政府にとっては、ドルの国際的な利用拡大と国債需要の増加という2つのメリットがある。
米国債需要の拡大効果
米政府高官はこれまで繰り返し、ドル連動型ステーブルコインの成長がドルの世界的な役割を維持し、米国債の需要を高めると発言してきた。
2025年2月には、当時ホワイトハウスの暗号資産・AI担当だったデビッド・サックス氏が「ステーブルコインは国際的にドルの支配力を拡大できる」と述べ、米国債の追加需要が数兆ドル規模に達する可能性に言及した。
2025年7月には、スコット・ベッセント財務長官がGENIUS Act(決済用ステーブルコインの連邦規制枠組みを定めた法律)によってドルの基軸通貨としての地位が強化されるとの見解を示している。
各国のデジタル通貨戦略との競争

米政府がステーブルコインの海外展開を検討する背景には、他国がデジタル通貨の開発を進めている現状がある。国際決済のデジタル化は、米国にとって看過できない競争領域となりつつある。
中国はデジタル人民元を推進しており、国境を越えた中央銀行デジタル通貨(CBDC)取引プラットフォーム「Project mBridge」でも使用されている。欧州中央銀行(ECB)も2027年後半に開始予定のデジタルユーロのパイロットプログラムを準備している。
中国とEUの動き
デジタル人民元は、中国政府が主導するCBDCだ。現金のデジタル版として設計されており、国際決済での利用拡大を狙っている。CBDCとは中央銀行が発行するデジタル通貨のことで、民間の暗号資産とは異なる。
Project mBridgeは、複数の中央銀行が共同で開発するクロスボーダー決済プラットフォームだ。デジタル人民元もそこで使用される。中国が自国通貨の国際利用を拡大しようとしている動きの一環といえる。
一方、ECBはデジタルユーロの導入準備を進めている。2027年後半から12か月間のパイロットプログラムを開始する予定だ。ユーロ圏のデジタル決済インフラを強化し、欧州の通貨主権を守る狙いがある。
GENIUS Actの進捗と今後の展望

GENIUS Actは、米国で決済用ステーブルコインの連邦規制枠組みを確立した法律だ。トランプ政権はこの法律の実施も着実に進めている。
2025年8月17日には財務省が規則制定案の通知を発表し、ステーブルコインの発行・提供・販売に関する規定についてパブリックコメントを募集した。ベッセント長官は、これらの規則がドルの基軸通貨としての地位を確固たるものにする助けになると述べている。
海外展開イニシアチブとGENIUS Actの関係は重要だ。国内で規制枠組みを整備しつつ、海外での利用拡大を同時に進めることで、ドル連動型ステーブルコインの国際的な存在感を高める戦略である。
現時点では構想段階であり、具体的な合弁事業の内容や対象地域は明らかになっていない。ただ、米政府がステーブルコインを重要な戦略資産と位置づけていることは間違いない。
この記事のポイント
- 米政府がドル連動型ステーブルコインの海外展開を検討
- 民間企業との合弁事業や複数の政府機関の関与が視野に
- ステーブルコイン普及で米国債の需要拡大を狙う
- 中国のデジタル人民元やEUのデジタルユーロに対抗
- GENIUS Actの実施と並行して国際展開を進める構え

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
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