米財務省が、暗号資産関連企業に対するサイバーセキュリティ対策を強化する。従来は銀行や証券会社など伝統的な金融機関のみを対象としていたサイバー脅威情報の共有サービスを、デジタル資産セクターにも拡大する方針を明らかにした。
この動きは、暗号資産業界が金融システムにおける重要性を増す中で、国家レベルのサイバー攻撃から守ることを目的としている。北朝鮮など国家が関与するハッカー集団による被害が後を絶たない現状を踏まえた措置だ。
従来金融機関と同等の情報共有へ

米財務省は4月9日、暗号資産関連企業や組織を対象に、サイバー脅威情報の共有プログラムへの参加を呼びかける声明を発表した。このプログラムは、財務省内のサイバーセキュリティ・重要インフラ保護局が運営する。同局はこれまで、銀行や証券会社、保険会社など、規制下にある伝統的な金融機関に対してのみ、「タイムリーで実践的な」サイバーセキュリティ情報を提供してきた。
今回の拡大により、条件を満たす暗号資産関連企業も、同じ情報にアクセスできるようになる。具体的な参加資格の詳細は現時点で明確に定義されていないが、財務省は関心のある企業に対し、同局に連絡を取るよう促している。このサービスは無料で提供される。
デジタル資産市場大統領作業部会の提言を受けて
今回の措置は、昨年報告書を公表した「デジタル資産市場に関する大統領作業部会」の提言に応えるものだ。同作業部会は、サイバー攻撃の危険性に関する情報共有の強化を複数のアイデアとして示していた。
財務省金融機関担当次官補のルーク・ペティットは声明の中で、「伝統的金融機関が利用しているのと同じ高品質のサイバーセキュリティ情報へのアクセスを拡大することで、財務省はより安全で責任あるデジタル資産エコシステムの促進に貢献する」と述べている。
後を絶たない大規模ハッキング被害

暗号資産業界はその黎明期から、悪意のあるハッキングに悩まされてきた。大規模な資金やデータが流出する注目すべきサイバー攻撃は、毎月のように発生している。
北朝鮮関与の攻撃が常態化
直近の例では、先週、北朝鮮に関連するハッカー集団が分散型プラットフォーム「ドリフト」から2億8,000万ドル以上を盗み出す事件が発生した。また今週に入り、ソラナ財団が新たなセキュリティ対策の導入を検討していることが報じられた。これも最近のインシデントを受けた動きだ。
毎年数十億ドル規模の資産が盗まれているが、その多くは北朝鮮のような国家が支援するハッカー集団によるものだ。デジタルセキュリティは、暗号資産セクターを規制された金融システムに組み込むための立法を検討する米国議会議員たちの懸念点の一つでもある。
業界の反応と今後の課題

財務省の今回の発表は、暗号資産業界が「金融システムの重要な一翼」として認知されつつあることを示すシグナルと受け止められる。従来、規制の対象外あるいはグレーゾーンと見なされがちだった業界が、政府機関による直接的な保護サービスの対象に含まれる意義は大きい。
「参加資格」の明確化が焦点
今後の焦点は、具体的にどのような企業や組織が「参加資格」を得られるかだ。中央集権的な取引所だけでなく、分散型金融プロトコルや分散型自律組織など、従来の金融機関とは組織形態が異なるプレイヤーをどのように定義し、包含するかが課題となる。
情報の機密性と共有範囲のバランスも重要なポイントだ。政府が収集するサイバー脅威情報には高度に機密性の高いものも含まれる可能性がある。参加企業には一定のセキュリティ基準や情報管理の義務が課せられることも予想される。
自主的な参加モデルの成否
今回のプログラムは、現時点では企業の自主的な参加に委ねられている。しかし、業界全体のセキュリティ水準を底上げするためには、主要なプレイヤーが幅広く参加することが不可欠だ。特に、国際的な展開を持つ大規模取引所やプロトコルが早期に参加するかどうかが、プログラムの実効性を左右する。
一方で、政府との情報共有に懸念を示すプライバシー重視のコミュニティやプロジェクトもある。情報共有が監視や規制強化の前段階ではないかという見方も存在する。財務省は、単なる情報提供に留まらず、業界との信頼関係をどのように構築していくかが問われる。
この記事のポイント
- 米財務省が、暗号資産企業向けにサイバー脅威情報共有プログラムを開始。従来は伝統的金融機関のみが対象だった。
- これはデジタル資産市場大統領作業部会の提言を受けた措置で、業界の重要性の高まりを反映している。
- 北朝鮮関与など国家レベルのハッキングが多発する中、政府と業界が連携したセキュリティ対策の第一歩となる。
- 今後の焦点は参加資格の明確化と、業界主要プレイヤーの広範な参加の成否にある。

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