Western Unionが来月独自ステーブルコイン発行、Stable Cardも計画

米大手決済企業Western Unionが、独自のステーブルコインを来月にも正式発行する見通しだ。

同社はソラナ基盤の「USDPT」に加え、暗号資産ウォレットと既存店舗網を結ぶデジタル資産ネットワーク「DAN」、そして消費者向け決済カード「Stable Card」の展開も併せて計画している。

単なる新商品の発表ではない。世界200カ国以上で送金サービスを展開し、年間数百億ドルを決済する巨大インフラ企業が、暗号資産を「事業の基盤」に据えると宣言した意味は大きい。

USDPTは送金インフラの代替手段、消費者向けではない

USDPTは送金インフラの代替手段、消費者向けではない

Western Unionのデビン・マグラナハンCEOは4月24日の第1四半期決算説明会で、ソラナ基盤のステーブルコイン「USDPT」の詳細を明らかにした。米ドル裏付けのこのコインは、来月にも発行される予定だ。

The Blockの記事によると、マグラナハンCEOは「Western Unionがデジタル資産で活動するかどうかはもはや問題ではない。いかに速く規模を拡大できるかが焦点だ」と述べたとされている。

ここで重要なのは、USDPTが一般消費者に向けて発行されるわけではないという点だ。マグラナハンCEOは質疑応答の中で、USDPTは送金パートナーとの決済に使われる仕組みであり、現在同社が国際送金の決済に使っているSWIFT(国際銀行間通信協会のネットワーク。銀行間送金の指示をやりとりする国際規格だ)の代替として位置づけられていると説明した。

つまり、消費者が直接USDPTを手にするわけではなく、送金の裏側で動く事業者間の決済手段として機能する。この仕組みによって、従来の銀行営業日や休日の制約を受けずに、より速い決済処理が可能になる。まずは一部の国と主要な送金パートナーとの間でオンチェーン決済(ブロックチェーン上で検証・記録される決済)を開始する計画だ。

DAN構想が描く、ウォレットとリアル店舗の融合

DAN構想が描く、ウォレットとリアル店舗の融合

Western UnionはUSDPTと並行して、デジタル資産ネットワーク「DAN」の立ち上げも発表した。これはUSDPTを含む複数のデジタル資産を活用し、暗号資産ウォレットとWestern Unionの既存小売店舗網を直接結ぶ仕組みだ。

マグラナハンCEOによれば、DANの最初のパートナーは今週中にも稼働を開始するという。世界中にあるWestern Unionの窓口網(エージェントネットワークと呼ばれる提携店舗網で、50万カ所以上に及ぶ)を活用し、暗号資産ウォレットの残高を現地通貨に変える体験を、顧客にとってシンプルに、そして店舗の窓口係にとってはこれまでと変わらない業務フローで提供できるようにする狙いだ。

従来、暗号資産を法定通貨に換えるには、取引所から銀行口座への出金を挟む必要があった。DANの仕組みは、この中間ステップをWestern Unionのリアル店舗で置き換える構想といえる。金融インフラが十分に発達していない地域の利用者にとっては、なじみのあるWestern Union窓口で暗号資産を現金化できることの実用性は高い。

Stable Cardで消費者に直接リーチ、インフレ市場を狙う

Stable Cardで消費者に直接リーチ、インフレ市場を狙う

USDPTとDANという事業者向けの基盤に加え、Western Unionは2026年後半に消費者向けの「USD Stable Card」を数十カ国で発行する計画も明らかにした。

このカードは、保有するステーブルコインで価値を保ちながら、VisaやMastercardの加盟店で世界中どこでも支払いができる仕組みを想定している。マグラナハンCEOが「特に魅力的なのはインフレに敏感な市場だ」と語ったように、自国通貨の価値下落に悩む新興国市場を主なターゲットとしている。

ステーブルコインは、米ドルなど法定通貨に価値を連動させた暗号資産だ。価格が安定するよう設計されており、値動きの激しさゆえに日常の支払いに使いづらいビットコインとは異なり、決済手段としての適性が高い。

「顧客はドル建ての価値を持ちつつ、すぐに実際の支払いに使えることを求めており、Stable Cardはまさにその需要に応えるものだ」とマグラナハンCEOは説明している。The Blockの記事によれば、この発言は決算説明会の場で行われたという。

Western Unionが暗号資産に本腰を入れる理由

Western Unionが暗号資産に本腰を入れる理由

こうした一連の発表の背景には、Western Unionの業績動向がある。2026年第1四半期の調整後収益は9億8,300万ドルと、前年同期比でわずか1%減にとどまったが、前四半期からは4%ポイントの改善となった。減収傾向に歯止めがかかりつつある中で、次の成長エンジンとして暗号資産事業を本格稼働させる判断だ。

一方、同社の株価(NYSE上場、ティッカーWU)は決算発表翌日の金曜日に4.6%下落し、8.9ドルで引けた。市場は短期的な収益よりも、新事業への投資コストに注目した可能性がある。

それでも経営陣の姿勢は明確だ。マグラナハンCEOの「もはや参入するかどうかの問題ではない」という言葉は、暗号資産を一時的な実験ではなく、送金事業の中核インフラとして位置づける意思表明と受け取れる。

送金業界に広がるブロックチェーン活用の波

送金業界に広がるブロックチェーン活用の波

Western Unionの動きは、送金・決済業界全体でブロックチェーン技術の実用化が進んでいる流れの一例だ。決済大手Mastercardも2026年初めから、ソラナ基盤のエンタープライズ開発ツールを通じてWestern Unionと協業しており、ステーブルコインのインフラ整備で先行してきた。

これまで暗号資産業界は、既存金融からの独立を掲げるプロジェクトが多かった。しかしUSDPTのような取り組みはむしろ逆の方向性、つまり既存の大手金融企業がブロックチェーンを自社の業務インフラに取り込む動きだ。暗号資産技術が「外部からの挑戦者」ではなく「内部の効率化ツール」として普及する可能性を示している。

ソラナの高速処理能力と低手数料構造が、こうした大規模な事業者間決済に適していると評価された点も見逃せない。Western Unionが月間数千万件規模の送金を処理することを考えれば、イーサリアムのような高額なガス代(取引手数料)が課題となるチェーンより、ソラナの方が実用面で優位に立つと判断されたのだろう。

この記事のポイント

  • Western Unionが来月、ソラナ基盤のステーブルコイン「USDPT」を発行する
  • USDPTは消費者向けではなく、SWIFT代替として送金業者間の決済に使われる
  • ウォレットと実店舗を結ぶ「DAN」、消費者向け「Stable Card」も計画中
  • 大手送金企業がブロックチェーンを事業の中核インフラに据える動きとして注目される
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