米国の暗号資産規制をめぐる重要な法案の行方を、大手暗号資産金融サービス企業Galaxy Digitalが分析した。上院銀行委員会に所属する7人の民主党議員の動向が、採決の行方を左右するという見方だ。
対象となるのは、暗号資産の法的枠組みを明確化するCLARITY法案。Galaxyは各議員の過去の投票行動や発言を精査し、賛成に傾く可能性がある議員を「ディールメーカー・条件付き」と分類している。今週にも予定される委員会での採決が、この法案の最初の大きな関門となる。
なぜこの分析が重要なのか。上院銀行委員会は24名で構成され、共和党13名、民主党11名。法案が委員会を通過するには最低12票が必要だ。共和党の支持を固めつつ、民主党からどれだけ賛成を引き出せるかが焦点となる。
今週にも委員会審議、焦点は採決ライン

CLARITY法案は今週木曜日に委員会でのマークアップ(修正審議)が予定されている。マークアップは法案の条文を議員が一字一句検討し、修正を加えるプロセスだ。ここを通過すれば、本会議での審議へと進む。
委員会は24名中、共和党が13議席、民主党が11議席を占める。単純計算で過半数の12票が必要だが、全員が党の方針通りに投票するとは限らない。ここにGalaxyが注目する理由がある。
仮に共和党が全員賛成しても13票。民主党内に賛成派がゼロなら可決できないわけではない。しかし、1人でも欠席や棄権が出ればたちまち過半数を割り込む。そこで、民主党内の「動く可能性のある票」が焦点となっている。
Galaxyが分類した民主党議員たち

Galaxy Digitalは、暗号資産に理解を示す議員と、慎重・反対姿勢をとる議員を区分けした。特に注目すべきは「ディールメーカー・条件付き」とラベル付けされた4名だ。彼らは過去にGENIUS法案という別の暗号資産関連法案に賛成しており、CLARITY法案でも支持に回る可能性がある。
賛成に傾く可能性がある4名
Galaxyが「ディールメーカー・条件付き」としたのは、マーク・ワーナー、キャサリン・コルテス・マスト、アンディ・キム、ラファエル・ウォーノックの4氏だ。共通して暗号資産の法的枠組み整備に前向きな姿勢を示し、GENIUS法案にも賛成票を投じている。
ただし、彼らは同時に「違法金融やマネーロンダリングへのより強力な防止策」を求めている点で条件付きだ。つまり、規制の枠組みそのものには賛成だが、犯罪対策の条項が不十分であれば反対に転じる可能性があるということになる。
GENIUS法案とは、ステーブルコインに関する規制枠組みを定める法案で、CLARITY法案より先に審議が進められていた。これに賛成した議員は、暗号資産に一定の理解を持つ証左といえる。
スイングボートのリサ・ブラント・ロチェスター議員
Galaxyが「ミックス(混合)」と評価したリサ・ブラント・ロチェスター議員も重要な存在だ。彼女は暗号資産の法的枠組み整備には賛意を示している。ところがGENIUS法案には反対票を投じており、一貫したスタンスが見えにくい。
このため、CLARITY法案の具体的な条文内容や修正の内容次第で賛否が変わる「スイングボート(浮動票)」とみられている。法案の文言をめぐる綱引きが、彼女の票を動かす可能性がある。

CLARITY法案をめぐる状況を理解するには、これまでの経緯を知っておく必要がある。2025年7月に提出されたこの法案は、当初順調に進むと期待されていた。ところが2026年1月、大手暗号資産取引所Coinbaseが法案への支持を撤回したことで状況が変わる。
Coinbaseが支持を撤回した理由
Coinbaseの米国政策担当副社長カラ・カルバート氏は、Consensus 2026カンファレンスで、法案が上院を通過するには少なくとも60票が必要であり、超党派の支持が不可欠だとの認識を示した。
同社が支持撤回に踏み切った背景には、法案の内容に対する懸念がある。具体的には、オープンソースソフトウェア開発者への法的保護が不十分な点、ステーブルコインの利回りを禁止する条項、分散型金融(DeFi)に関する規制のあり方の3つだ。
オープンソースソフトウェアとは、誰でもコードを閲覧・改変できる形で公開されているプログラムのこと。暗号資産の世界では多くのプロジェクトがこの形で開発されている。Coinbaseは、その開発者が意図せず法に触れるリスクを問題視したわけだ。
分散型金融(DeFi)規制の難しさ
DeFiとは、銀行のような中央管理者を介さず、ブロックチェーン上のプログラム(スマートコントラクト)だけで金融サービスを提供する仕組みだ。これにどう規制をかけるかは、世界中の規制当局が頭を悩ませているテーマでもある。
中央の運営主体がいないため、従来の「金融機関を監督する」という発想が通用しない。CLARITY法案がこの点をどう扱うかは、業界関係者が最も注視するポイントのひとつとなっている。
ステーブルコインの利回り禁止条項
ステーブルコインは、米ドルなどの法定通貨と価値が連動するよう設計された暗号資産だ。価格が安定しているため、決済や資産保全の手段として利用が広がっている。
CLARITY法案には、このステーブルコインに利回り(金利のような収益)を付けることを禁じる条項が含まれている。銀行業界は預金流出を防ぐ観点からこの条項を支持するが、暗号資産業界はサービスの魅力を損なうとして反発している。
議会外の評価スコアにも注目

Galaxyの分析とは別に、米国の暗号資産推進団体Stand With Cryptoも各議員の暗号資産への姿勢をスコアリングしている。この団体は、過去の発言や投票行動に基づいて議員を評価するプラットフォームを運営しており、有権者が候補者のスタンスを知るための参考情報を提供している。
Stand With Cryptoの評価によると、ワーナー、コルテス・マスト両氏は暗号資産に「強く支持」の評価。キム氏は「中立」、リード、ウォーレン、スミスの3氏は「強く反対」とされている。ウォーノック、ブラント・ロチェスター両氏はデータ不足のため未評価だ。
この外部評価とGalaxyの分析を重ね合わせると、浮動票の動きを予測するための解像度が上がる。法案の条文がどこまで修正されるかによって、スコアが変わる議員が出てくる可能性もある。
この記事のポイント
- CLARITY法案が今週、上院銀行委員会でマークアップ入りする
- Galaxy Digitalは7人の民主党議員が採決の鍵を握ると分析
- 特に「ディールメーカー」とされる4名が賛成に転じるかどうかが焦点
- 法案にはCoinbaseが支持撤回した問題点が残っており、修正の行方が重要
- 超党派支持が得られなければ、委員会通過後も本会議でのハードルは高い

暗号資産とブロックチェーンの可能性を追求するエミリー。
暗号資産投資、DeFi、NFT、WEB3、メタバースといった最先端分野を深く理解し、「エミリーズ・クリプト・インサイダー」を運営。
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