SBF控訴棄却、NY控訴裁が詐欺有罪判決を支持…返済計画の弁明を一蹴

FTXの創業者であるサム・バンクマン・フリード氏(以下SBF)による控訴が、第二巡回区控訴裁判所によって棄却された。2023年に下された詐欺および共謀罪での有罪判決を覆す試みは、これで事実上頓挫した形だ。

控訴審でSBF側は「裁判が不当だった」と主張したが、裁判官3名で構成されるパネルはその主張に説得力を感じなかった。判決文でも「政府側の証拠は控えめに言っても強固だった」と断じている。

本記事では、控訴棄却の詳細と、裁判所がSBFの主張をどのように退けたのかを解説する。暗号資産取引所の破綻をめぐる法廷闘争は、新たな段階に入った。

控訴棄却の詳細、NY控訴裁がサンマン・フリード氏の主張を全面的に退ける

控訴棄却の詳細、NY控訴裁がサンマン・フリード氏の主張を全面的に退ける

第二巡回区控訴裁判所のパネルは、SBFの控訴理由を一つひとつ検証した上で、一審の判断を支持する決定を下した。裁判を担当したルイス・カプラン判事の訴訟指揮には誤りがなく、証拠の扱いも適切だったと結論づけている。

「一審は不当」の主張は通じず

SBFの弁護団は、一審では本来提出できるはずの法的論点を十分に提示できなかったと主張していた。具体的には、FTXの投資が将来的に成功し、顧客への返済が可能だったという見通しを裁判で論じる機会を奪われたというものだ。

しかし控訴裁は、この主張の前提自体を否定した。問題は「顧客から預かった資金を無断でアラメダ・リサーチに移した行為」であり、その後の投資成果は詐欺の成立とは無関係だという法解釈を示した。つまり、たとえ投資で利益が出て後日返済できたとしても、資金を不正に流用した時点で詐欺は成立するという理屈だ。

証拠の強固さが決め手に

判決文で特に注目されるのは、政府側の証拠を「控えめに言っても強固(robust)」と表現した部分だ。この一言に、控訴裁がSBF側の主張を退けた本質が凝縮されている。裁判記録を精査した結果、有罪評決を揺るがすような瑕疵は一切見当たらなかったということになる。

争点となった「返済」と「証拠金取引」、控訴裁の明確な判断

争点となった「返済」と「証拠金取引」、控訴裁の明確な判断

控訴審で最大の論点となったのは、SBFの「詐欺の意図はなかった」という主張の妥当性だ。裁判所はこの点について、極めて明快な解釈を示している。

「いずれ返済するつもりだった」は通用しない

SBF側は「不正流用した資金は投資に回っており、ゆくゆくは成長して顧客に返済できるはずだった」と論じた。詐欺罪が成立するには「騙す意図」が必要であり、返済の意思があった以上、その意図はなかったというロジックだ。

しかし第二巡回区控訴裁は、この論法を真っ向から否定した。連邦通信詐欺法は「一時的な資金の不正使用」も詐欺に含むと明記されており、仮に将来の返済を見込んでいたとしても、その抗弁は法的に成り立たないと指摘した。ここで言う通信詐欺法とは、電話やインターネットなどの通信手段を使って財産をだまし取る行為を罰する連邦法である。

証拠金取引の主張も「的外れ」

もう一つの弁護は、FTXが証拠金先物取引のプラットフォームだったという点に着目したものだ。証拠金取引とは、預けた担保以上の金額を動かせる仕組みを指す。SBF側は「FTXの顧客は証拠金取引に参加しており、資金が一時的に使えなくなるリスクを当然承知していたはずだ」と主張した。

控訴裁はこれも一蹴した。証拠金取引を選んだ顧客もいれば、選んでいない顧客もいる。問題は、誰一人として「アラメダに資金を移されること」には同意していなかったという点だ。判決文の「誰も虚偽の前提でアラメダに資金を移されることを選んではいない」という一節は、SBF側の論理の欠陥を痛烈に指摘している。

裁判の公正性を巡る異議申し立ても認められず

裁判の公正性を巡る異議申し立ても認められず

SBFの弁護団は控訴審で、ルイス・カプラン判事の訴訟指揮が不公平だったとも主張した。具体的には、弁護側からの異議申し立てや証拠提出の却下などが、公正な裁判を受ける権利を侵害したというものである。

しかし裁判長を務めた3名のパネルは、地方裁判所には訴訟運営について「広範な裁量」が認められていると強調。その上で、今回の裁判におけるカプラン判事の判断はその裁量の範囲内であり、むしろ妥当だったと評価した。同パネルは昨年11月の口頭弁論でもSBFの代理人弁護士を厳しく追及しており、一貫してSBF側に厳しい姿勢を崩していない。

控訴棄却後の動きと今後の展開

控訴棄却後の動きと今後の展開

控訴が退けられたからといって、SBFの法廷闘争が完全に終わったわけではない。むしろ別のルートでの救済を求めている段階だ。

トランプ大統領への恩赦要請

米メディアの報道によると、SBFは今週に入り正式にドナルド・トランプ大統領に恩赦を要請した。ただトランプ氏は過去に、他の複数の暗号資産関連の人物には恩赦を与えた一方で、SBFについては恩赦を検討していないと表明している。このため、現時点で恩赦の可能性は極めて低いと見られている。

連邦地裁での再審請求も

SBFの弁護団は控訴とは別に、連邦地方裁判所に対して再審の請求も行っている。再審が認められるハードルは高いものの、新証拠の発見など限定的なケースでは可能性が残されている。ただ、すでに控訴裁が一審を全面的に支持する判断を下したことで、この請求が認められる見込みはさらに厳しくなったと言わざるを得ない。

この記事のポイント

  • SBFの控訴が第二巡回区控訴裁で棄却され、詐欺罪の有罪判決が確定に近づいた
  • 「投資で返済するつもりだった」という弁護は、通信詐欺法の解釈により退けられた
  • 証拠金取引のリスクを顧客が承知していたとの主張も「的外れ」と判断された
  • 一審のルイス・カプラン判事の訴訟指揮に誤りはないと認定された
  • SBFは恩赦要請や再審請求を進めているが、成功する可能性は極めて低い
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